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「堀田善衛とドストエフスキー」(髙橋誠一郎)&集英社新書「堀田善衛を読む」の話

堀田善衛もドストエフスキーも1冊も読んでいません。善衛を“よしえ”と読むことさえつい最近まで知らなかったくらいで…。
「堀田善衛とドストエフスキー」を読むきっかけは、集英社新書「堀田善衛を読む」を読んだから。その執筆陣の一人が宮崎駿氏で帯の言葉にもなっていました。「お前の映画は何に影響されたのかと言われたら堀田善衛と答えるしかありません。」
私と同じように、宮崎駿を通して、堀田善衛の名を知った人多いと思います。今の時代、多くの人に堀田善衛を知ってもらいたい、という出版業界の情熱を感じます。
昭和初期の日本の空気感を広く知ってもらうのに、ぴったりの作家と思われる。戦争にひた走る日本で青春時代を過ごした若者の、悩む心情がよくわかる作品だから。作品は読んでいないけど、抜粋部分などからそうなんだろうなあ、ってことがよく伝わってきます。
集英社新書で一番印象に残ったエピソードは、犬のほのぼの話なんだけどね。
堀田善衛は、大正7(1918)年富山の廻船問屋に生まれ、国際性豊かな中で成長した人。作品の中に出てくる飼い犬のエピソードは、自分の家の話の可能性が高いそうです。飼い犬が船に乗ったままソ連に行ってしまったけれど、数か月後、またソ連船に乗って戻ってきて尻尾ふりふり喜んでた…なんか、童話のお話のようです。
「堀田善衛とドストエフスキー」は、集英社新書よりぐっとお話は難しくなります。が、芥川龍之介はじめ、授業で習った名前がたくさん出てきて親しみやすい。堀田善衛本人だけでなく、当時の世相と文学界隈の様子がよくわかります。
昭和初期の日本に心がヒリヒリします。友人の逮捕、拷問で獄死、が日常茶飯事。
チャップリンの暗殺計画があったという話も驚きました。チャップリンの日系人の秘書が、危険を予感して来日をやめたそう。
「堀田善衛とドストエフスキー」難しい部分も多いのに、読むのを止められず、強く心が惹きつけられる。「もし自分がこの時代に生まれていたら」と、想像してしまう。
終章は「宮崎アニメに観る堀田善衛の世界」で、ヒットアニメ作品の解説で締めくくられています。宮崎アニメ好きは必読かと。
堀田善衛とは関係ないのですが、大文豪のあるお話は…けっこうショックでした。彼原作の映画で感動してただけに…。ファンの人には有名な話なんだろうけど、人としてどうなの…と思ってしまいました。日本兵の老婆への残虐行為の話も…辛い。
本はどちらも面白くておすすめです。読後にずっしりと重い思いが残る2冊です。

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