見事な変身譚『良い狩りを』
見事なものを読んだ。
ケン・リュウ傑作短編集②「もののあわれ」より
『よい狩りを』
すごい、怪異譚だと思ったら変身譚だった。
しかも、。
ちょっとネタバレになってしまうけど、変身するのは人でなく怪異、妖怪の方。
変化・変身へと至るプロセスの鮮やかなことったらない。
物事ってなんでもじんわりじんわり常に変化続けて、どこか閾値に達した瞬間に目に見える変化となるものだけど、そういう自然の理を物語で過不足なく表現できている。
短編小説ってそもそも無駄がないものだと思うのですが、全センテンスが機能的に噛み合っていて一文字も揺るがせにできない。
いやそんな偉そうな評価をする能力は僕にないのだけど、そう思ってしまうくらい、読み終わって、読み返すと「おいみんなー!全部必要なセンテンスだったぞー!」って触れて回りたくなる見事な文章。
この作品のこの伏線がすごいとかそういう話題って多いと思うけど、僕が求める伏線回収ってこういうのだな。
このコンパクトな物語の中に、ただ伏せていただけの情報じゃなくて、意味深なだけの描写でも、驚かせるための裏設定でもなく、物語の変化に伴って変調する言葉の意味や、物語の中で跳躍を見せる過去の会話が、すごく機能的に働いている。
とある時代からとある時代への変化を土台に、ロマンスあり、カタルシスあり、視覚的な喜びあり、論理的な積み重ねの美しさありでいやこれは、すごい短編小説だった。
ケン・リュウ『紙の動物園』を読んだときも上手くて悔しい思いをしたけれど、『良い狩りを』、これもすごく創作意欲を刺激する素晴らしい短編小説だった!
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