【AtoZ】 kish clothing 石橋 圭介さん 〜ムーブメントを巻き起こす行動量〜
周囲からの思わぬ反応
大浦) まず、今回の"AtoZ"というインタビュー企画では、現在に至るまでの変遷についてお伺いしていきたいと考えています。 現在はご自身でアパレルブランドkishclothingを運営されている石橋さんが最初にkishclothingというアパレルを立ち上げようと思ったきっかけはどんなことからだったんですか?
石橋) 一番大きかったことは、僕が大学の学園祭の実行委員に所属していて、2年生の時には局長を務めていました。 3年生が引退するときに、あんまり今までの活動を振り返る時間がないことに気づいて...それがすごい寂しいなって思ったんですよね。 それで、みんなで学園祭を振り返ることができるような写真集を作ろうってなった時に、その写真集の編集長を務めました。
その写真集をみんなに配ったときに、「この写真を撮ったときこういうことあったよね」とか、思い出を振り返れる時間があって。 近くの人と喋ってくれたりするときすごいクリエイティブとかって、身近に感じられるなっていうふうに思って...それで「形にすること」に対する興味を持ちました。 その中で、クリエイティブと親和性が高いものを考えたときにアパレルを思いつきました。もう一つは、就活中にブランドを立ち上げるサービスを行っている人と出会って、その人立ちと話した時に自分の中でアパレルをやる上でのイメージがついたことが大きかったですね。
大浦) kishclothingの立ち上げは2023年の9月ですよね。 まだ半年しか経っていないのに数々のクリエイターや団体とコラボされていることに本当に驚いたのですが、立ち上げのときはかなり準備とかもされたのですか?
石橋) 実は、最初からこうしようとか戦略を立てての準備みたいなものはあんまりしていなくて。 結構来た反応に返していくような"対処"に近いというか...僕は、自分が行動を起こすことが、その次に繋がるってすごい思っていて。だからkishclothingも、「アパレルができそうだ」って思った瞬間にその日に立ち上げたんですよ(笑)。 それで個人のInstagramでストーリーに80人くらいの親しい友だち設定で投稿したら、20人から「気になる」とか「話を聞きたい」とかそういう反応が来てすごく驚きました。
大浦) 20人も!?それはびっくりしますね。
クリエイターが活躍できる場所を創りたい
石橋) そうなんです。 その時に、やっぱりアパレルっていうものに携わりたいっていう人はすごく沢山いるんだってことを実感しました。 だから、その時から「近しい人を巻き込めたらいいな」とか「友達と面白いことやれたらいいな」とか漠然と思っていたんですよね。
大浦) そういったところから様々なクリエイターの方やサークルとのコラボに繋がっていったんですね。
石橋) そうですね。 そういった中で、クリエイターの人たちがもっと活躍できる"場所"としての機能もブランドとして持ちたいと思うようになりました。大学生でも、写真を撮っている人とか何か作っている人って沢山いると思うんです。 だけど、機会がなくなるとやめちゃう人って結構いると思っていて...自分も、学園祭の実行委員をしていた時に、学園祭が終わったら創作活動のようなことをやらなくなってしまう人を沢山見てきたんですよね。
大浦) ご自身の経験もあったんですね。
石橋) そういう機会がなくなってやめたり諦めてしまうことってすごく寂しいなって思って。 アパレルとして「形」にすることは、クリエイターの人たちのモチベーションにもなると思いました。 その人の代表作といえるものが創ることができる場所であったり、「きっかけ」になればいいなって思っています。
大浦) 実際にアパレルの商品はどのような流れで制作から販売されるのですか?
石橋) 最初の立ち上げの時は、自分の撮影した写真をちょっとだけ編集して、アパレル商品にしていました。 他の人とコラボで制作する時は、自分たちのブランドコンセプトに共感してもらうことを重視しています。 ブランドの目指している方向性だったり、将来像みたいなものを話してそういった部分に共感していただいたクリエイターの方や団体さんとコラボしていますね。 制作過程では、ミーティングなどでアパレル商品のデザインの方向性を決めてクリエイターの方に制作していただく。 僕たちは、作っていただいた作品に少しフィードバックを行うという形ですね。
大浦) 実際に作っていく過程の中でどこが一番難しいですか。
石橋) 一番は、「自分たちが伝えたいメッセージを正しくに伝えること」ですね。 コラボ商品は、クリエイターの方などに任せている部分も大きいので。 なので、僕たちは、ブランドとしての「売る側の視点」を持ち続けることが一番難しいことかなと思います。
大浦) コラボすると、やっぱりどうしてもそのコラボ先側の意見というかそういう部分がありつつ、自分で作るわけじゃないじゃないですか。そういったときって売る側の視点というか、そういうのってどういう形で相手の人に伝えているんですか。
石橋) 細かいコミュニケーションしかないですね。「こういう方がいいと思うんですよね」とか、「こっちのデザインの方がお客さんに対して伝わると思いますよ」とか...そこまでデザインに口出すとかはないんですけど、でも、大衆向けのデザインと、コア向けのデザインとかあったりとかして、「ちょっと違うバージョンを見せてほしい」とか、「こういうイメージで作ってほしい」とかは、デザインの提案として言うようにしていますね。自分自身も専門的にデザインに触れているのは半年とかなので、全然わからないんですけど、"選ぶセンス"みたいなのは、常に磨くことを心がけていますね。
センスは知識から成る
大浦) ブランドの方向性を考えたり、センスを磨かれていたり...と、具体的に日常の中で心がけていることなどがあれば教えていただきたいです。
石橋) 考えることについては、経験的にできるようになった部分が大きいですね。 大学1年生の頃は100人規模のサークルを立ち上げてみたりとか、2年生に局長を務めたときの学園祭はコロナ禍から初ということもあって...「どうやったらお客さん来るか」とか、「お客さんが来たときの対応をどうするか」とか、そういうような0から考える経験が多かったこともありますね。
センスに関しては、インプットを死ぬほどしています(笑)。 実は普通にネットオタクなんですよ(笑)。 だから、スマホ依存だし、一日7時間ぐらいスマホを使っていると思うんです。 でも、意味のないスマホ依存にはなりたくなくて...「意味のある情報を見よう」って思って、twitterで絵を検索したり、マーケティングとかブランディングが好きなので、「どの企業がどんな新しい企画をやった」とかそういうまとめみたいなものも見たり...いろんなインプットをしてますね。
アウトプットも、家に帰ったら、結構ずっと何かしていますね。 デザインとか資料を作ったりとか、動画作ったり... 元々、デザインとか何かを作ることが好きなので、趣味としてでもありますね。 でも、そのインプットと、アウトプットの比率は1:5くらいになるようにアウトプットは心がけています。
ブランドを始めて広がった世界
大浦) 実際にブランドを立ち上げていく中で大変だったことって「売ること」以外にどんなことがあるんですか?
石橋) うーん。 大変だったことはあんまりなくて、むしろ"気づき"の部分が大きかったですね。 例えば、ブランドをやっていて、「それすごい面白いね」って言ってくれる大人がいるとは思わなかったですし、商談みたいな形で、会社の人とかとお話ができる日が来るとも思ってなかったです。 計画の上での見込みが甘かったなっていう部分も、もちろんあるんですけど、それよりも嬉しいハプニングみたいなものにうまく対処していくことが楽しいですね。
大浦) 今まで他に挫折みたいなものってあったりするんですか?
石橋) なんだろう。でも、結構ちっちゃい失敗はたくさんあります(笑)。「今週全然商品が売れなかった」とかそういうものも含めて、結構ありますね。でも、全部失敗だと思ったことは1個もなくて。 そういうちっちゃい失敗は、常に人並みにあると思って、でもその失敗を失敗で終わらせないように考えているので、「大きい挫折はなんですか」って聞かれたときにあんまり言えないっていう...
経験を意味のあるものにするために
大浦) そういう考え方もあるんですね。 ちなみに、この"失敗を失敗で終わらせず、自分の中で意味のあるものに変える"っていうのは、何か心がけていることとかってあったりされるんですか?
石橋) そうですね。 必ず折り合いをつけるようにしてるっていう感じだと思いますね。"本当に何も繋がらないこと"ってないんじゃないですかね。 例えば、"大学受験に失敗した"とかでも大学に入ったら何かの勉強をしなきゃいけないとか...そういう感じになると思うんですよね。そういうところで、「自分はこの時のこれがあったから大丈夫だった」みたいに、自分に言い聞かせています。
大浦) 実際にアパレルブランドを立ち上げられてご自身の成長したことや向上した能力などはありますか?
石橋) 能力はあんまついてないって思いますね。でも、ガッツみたいなものはあるかなと。USJを再建した森岡毅さんも何かの媒体で、「経験することによって、ガッツみたいな、成功に対するセンスみたいなものが磨かれていく」みたいな話をしたことがあって、それはすごい磨かれてる感じがするなって思います。ものを作るとか、商談するとか、メールを送るとかっていうところでも、「こうやったらうまくいくんじゃないかな」っていうふうに、発想するまでのスピードとか、それの精度とかっていうのはすごい上がってるなって。
行動量が全ての鍵
大浦) やっぱりそれだけ数をこなされてきたからこそ、できるようになっていく感覚が自分としても得られるみたいな感じですか?
石橋) はい。 本当に、量。 量だけですね(笑)。哲学が好きなので、結構"自分の行為が世界を変えていく"っていう思想に近いというか...自分が行動することによって、自分に対する知見が溜まったりとか、周囲の自分に対するイメージが変わったりとかっていうことを起こすと思っています。
大浦) 行動していても結果が出なくて辛くなったりとかはないんですか?
石橋) あんまりないですね。 僕は、同時に色々なことをやるタイプなので、アパレル以外にも長期インターンとか他にも色々やっていて。 でも、1個1個の物事に対して、しっかりやるっていうのを常に続けています。 そうしていると、グラデーションみたくなってきて。1つのことだけやって失敗続きってなったら、もうやめたいなってちょっと思うんですけど、そうじゃなくて、「こっちは、なかなかうまくいかないけど、こっちは復活の兆しが見えてるな」とかそういう風に自分の中でのバランスを上手く保っていますね。
大浦) インタビューも終盤に差し掛かっているのですが、kishclotingを続けられている上でのやりがいを教えていただきたいです。
石橋) 制作や運営を通して、やりがいを感じる部分がは2つありますね。 まず、やっていること自体を気づいてくれる人がいたりとかInstagramとかでコメントやいいねをもらったりとか...そういう小さい反応をもらえることがものすごく嬉しいです。 自分たちが目指しているカルチャーを大きくしたいって目標とか、ブランドで面白いと自負しているところが伝わるときはすごい嬉しいですね。 クリエイターの方含め、巻き込んでやっていること自体にすごい意味があるんだよねと。そういう自分たちの団体の想いが理解されたときはすごい嬉しいなって。 僕が嬉しいことは、本当にそれに尽きる感じです。
大浦) やっぱり周りから反応だったり応援のコメントをもらえることは励みになりますよね。 石橋さんがアパレルやブランド制作にあたって影響を受けた作品だったり、出来事があればお聞きしたいです。
石橋) 雑誌が一番大きいですね。 大学1年生の頃から、本屋で雑誌を買うのが好きで... 雑誌って、もうすぐ話題になりそうなものを取り上げるじゃないですか。それが面白いなって思ってて、そういうメディアのような機能が自分たちにもあったらいいなって思ってました。 アパレルブランドとしてコラボ制作を決めたときにも、自分たちがメディアとして機能することで、コラボ相手の方を見つけてもらうきっかけになったらいいなとも思っています。 雑誌以外にも、音楽とか友達とか身近な存在からも影響を受けてますね。
大浦) 服や雑紙以外の場所でも知識を吸収されているんですね。
石橋) そうですね。アパレルだからアパレルから取ってるとかではなくて、自分が好きなものを全部から吸収しようって... 友達もそうですし、自分の身近なところから吸収することを意識しています。
大浦) kishclothingの今後の目指す場所はどんなところなんですか?
石橋) ブランドとしては、やっぱり「クリエイターが活躍できる場所」でありたいです。 昔は、アパレルブランドってブランドマネージャーがかっこいいと思うことを追求する場所だったんです。 だけど、僕はそういう形のブランドではなくて、クリエイターが活躍できる場所になってほしいなと思っていて。 お客さんもブランドの活動の中に参加してほしいとも思っていますし、クリエイターといっしょに作り上げるようなブランドでありたいです。 だから、kishclothingを通じて、クリエイターの今後の活躍にも良い影響を与えたりとか、お客様の消費活動においても、「このクリエイターを応援したいからこの商品を買った」とか...そういうことが起こるようなブランドを目指しています。
「手に取れるクリエイティブ」にするために
大浦) 直近でいうと具体的な目標はあったりされるんですか?
石橋) やっぱり、ブランドのコンセプトは「手に取れるクリエイティブ」なので、オンラインの販売だけではなくて、実店舗での販売を目指しています。他にも、展示会とか即売会みたいなイベントとかも考えています。
大浦) 確かにネットだとその実物が見えなかったりとかもありますよね。 "手に取れること"はすごい大きいですよね。
石橋) そうなんですよね。クリエイターの方ともお話させてもらっているのでイベントが一番クリエイティブが伝わりやすいっていうのは聞いてるんです。だから、僕たちだけじゃなくて、クリエイターの方も交えて、そういう場所と機会を作って、クリエイティブを伝える機会みたいなのは、すごい作りたいです。 直近というか、この1年で目指してるところは、やっぱり街中で見かけるブランドになりたいなって。お店でもいいし、誰か商品を着ている人がいるとかでもいいし、雑誌とかメディアに載ってるとかでもいいんですけど...そういう人の目に触れるところに露出していきたいっていうのがすごいありますね。自分で写真を撮っている時にも思ってたんですけど、クリエイターカルチャーって結構中に閉じがちなんですよ。写真撮る人って写真撮る人としか話さなかったり。学生フリーペーパーとかも含めて、多分横で繋がってるだけなんだと。横のつながりだけだと、広がっていかないと思う。だから、やっぱり人の目に触れるところに、自分のブランドがあってほしいし、注目されるきっかけになったらすごい嬉しいなっていう部分がブランドとしての野望ですね。
大浦) 最後に、大学生とか高校生に向けて、メッセージをお願いします。
石橋) 誰かにアドバイスできるほど偉くないんですけど(笑)。 実際行動してみて失敗したとしても、意外と誰も見てないんですよね。 他の人もね、きっと良いところが注目されることのほうが多いんじゃないかな。 だから、僕に対しての自戒でもありますけど、その失敗を怖がらないで挑戦し続けるっていうことは大事にした方がいいなって思います。
インタビュー : 大浦 快斗 (立正大学 文学部 2年)
文 / 編集 / 写真 : 中村 結 (早稲田大学 人間科学部 3年)
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