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映画感想文「レッド・ロケット」 アメリカンドリームの反対側
〇アメリカンドリームの反対側
主人公の中年男性マイキーはロサンゼルスで失敗して故郷のテキサスに戻ってくる。マイキーは成人映画の俳優としてそこそこ成功したと自称しているが、どこまでが本当なのかはわからない。
マイキーは、たぶんアメリカンドリームはもうないというアメリカの矛盾を体現するキャラなのだと思う、正確には99%のアメリカ人にはアメリカンドリームはもうフィクションなのだということを描いている気がする。
マイキーは別居中の妻が母親と住んでいる家に強引に住み込むのだが、妻と義母はテレビを見るのが好きで、トランプが「アメリカを再び偉大な国に」と叫んでいる。
マイキーは自分勝手なダメ男なのに人を惹きつける魅力はある、それはアメリカ人が大好きな小説の「白鯨」の主人公が巨大な白鯨を追い続けるように、大抵の人が諦めているアメリカンドリームにまだ挑戦しているからだと思う。
17年まともな仕事をしていないので仕事の面接に行ってもすべて断られる、マイキーは当初は別居中の妻と義母にも露骨に嫌がられる、マイキーが見つけた仕事は家族で大麻を売っている一味の売り子みたいな仕事、それでもマイキーは成功することを夢見て足搔く、確かに性格も悪くてヒーローには程遠いが、マイキーにはアメリカのマッチョな男性の長所も感じられる。
だけど中盤でマイキーはドーナツ店で働く17歳の女子高生ストロベリーと出会い、マイキーは彼女を成人映画の世界に引き込んで自分も再起しようと考える、視聴者はマイキーを最悪な男だと思う、でもアメリカという国に対するアメリカ以外の国の人間のアメリカ観もこういう複雑な心境なのではないだろうか。
〇アメリカの自国優先主義の比喩、女子高生は自由の女神?
40歳に近い男性が17歳の女子高生に希望を見出す、ストロベリー役の女優は小悪魔的な魅力があって、マイキーと同じで卒業後は町から出て夢に挑戦するつもりの「白鯨」の船長のようなタイプ、ストロベリーは単純に清楚な女子高生ともいえないキャラだが、でも17歳の女子高生を地獄に道連れにしてでも成人映画の世界にカムバックしようと考えるマイキーにほとんどの視聴者は拒否感を持つと思う。
ストロベリーはマイキーのことが本当に好きみたいだし。だけど良い方に解釈するとこれが今のアメリカンドリームだと監督は思っているのかもしれない。トランプに人気があるのは、自分の欲望に忠実で、人から汚い人間だと思われても自分の夢を叶えるために手段を問わないところ、そこにアメリカンドリームの残骸のようなものを見るからなのかもしれない。
正しいとか悪いとか、そういうことでは片づけられないこのエネルギーが偉大なアメリカと言うことなのかもしれない。
だけど、なぜマイキーの救いの女神が17歳の女子高生なのだ、小説「ロリータ」の主人公は亡命ロシア人なのでロリコンというより、アメリカ人の少女がアメリカそのものに感じるという主人公の感覚はわからなくもない。
そして意外だけどアメリカ人の男性も、日本の中二病の男子と変わらないのかもしれない、少女にしか自分は理解されないとどこかでわかっているというか、少女の前では男性らしさに浸れるというか、早い話これが「アメリカを再び偉大な国に」というパワーの原動力だとこの映画は?