さすらいの惑星

映画、小説についての感想を書いています。 たぶん、ロスジェネ世代だと思うので、ハッピーな記事ではないかもしれませんが よろしくお願いします。

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映画、小説についての感想を書いています。 たぶん、ロスジェネ世代だと思うので、ハッピーな記事ではないかもしれませんが よろしくお願いします。

最近の記事

映画レビュー「夏へのトンネル、さよならの出口」 現実は取り返しがつかないけれど

SFのカテゴリーとしてこの映画を見るとツッコミどころはあると思う。 だけど過去に罪を犯した人間に(本人がそう思っている)未来を生きる意味があるのか、自分にとって大切な人がこの世からいなくなった後にどう生きればいいのか、こういう重いテーマを描くために過去から未来までの人間にはどうにも出来ない長い時間の概念が必要で、そのためにSF的な設定を使った、そう受け取るのが正解の気がする。 ウラシマトンネルを進むのか止めるのかというのは、主人公の塔野と花城が心中するかしないかという問題の

    • 映画レビュー「市子」 複雑な気分になる映画

      最近、女性が突然失踪する日本映画が多い。現実に日本は急激に貧しくなっていて、日本の女性が外国で売春をしているとか、国内で犯罪の被害者になる、そういう悲しいニュースが増えている。この映画の市子のような人権を無視された女性は想像以上に多くいると思うし、日本人がまだ気づいていない不条理な不幸に見舞われている女性も数多くいる気がする。 でもこの映画は、今の日本社会を批判する意図があったと思うが、見ていて辛い作品なのに感想としては、市子は心から彼女のことを想ってくれる人がたくさんいて

      • 映画レビュー「視線」 アメリカ人の外国人恐怖症

        夫がルーマニアに赴任することになったので、アメリカ人の妻も同行する。だけど、ある時ふと向かいのアパートに住んでいる住人が自分を見ている視線に気が付く。 観客は主人公の女性が体験した恐怖を知っているので、彼女の周囲にいる人たちが外国で暮らすストレスからくる被害妄想だと決めつけることに苛立つ。 この主人公の女性が周囲のコミュニティから孤立していく状況は、今の国際社会から孤立していくアメリカの比喩なのだろうか。アメリカには陰謀論のような米国は影の政府に支配されているという強迫観念

        • 映画レビュー「アンダー・ユア・ベッド」韓国版 水槽の中の魚のような

          主人公は学生時代から誰からも名前すら覚えてもらえなかった孤独な男とある。でも大学まで行っている人間がそこまで世の中から存在していないみたいに無視されるだろうか。実際は彼にとって片思いをしている女性に認識されていない自分は存在しないに等しいという彼の内面の世界のイメージの気がする。 だから主人公にとって彼女は水槽の中にいるグッピーのような別の世界にいる人間になった。観客は主人公のことを好きな女性を監視カメラで監視する変態だと思うかもしれない、でも主人公はグッピーがいる水槽の中

          映画レビュー「異端の純愛」 誠実な恋愛映画

          この映画は三話で構成されていて、一話と二話は男性の女性に対する妄想めいたでも正直な欲望が描かれている気がする。 一話の主人公の男性は欲望を感じている女性の背後に、いつしか不気味な男性の幻覚を見るようになる。 主人公はイケメンではないが、幻覚の男性は女性が嫌悪するような怪物的な外見をしている、なのに主人公が片思いをしている女性はその幻覚の男性に気を許しているように主人公には見えていて、次第に女性に嫌悪が入り混じったような歪んだ欲望を抱くようになる。 この勝手に女性に欲望を感じ

          映画レビュー「異端の純愛」 誠実な恋愛映画

          映画レビュー「ヴォルテックス」 死の霊的プログラム

          映画の冒頭に老夫婦が聞いているラジオ番組に出演している心理学者が、親しい人間の死を受け入れるための、人間による儀式的な行為についての考察を語っている。気を抜いていると聞き逃してしまうような伏線だけど、ここでこの映画は二人の老人の死を受け入れるための儀式のような映画だと宣言していると思う。 老人の死はある意味自然の必然の法則のようなものと考えている人もいるかもしれないけど、老人の死にも映画(物語)のような儀式性はある、冒頭のラジオ番組の心理学者は死は霊的なプログラムだとも語っ

          映画レビュー「ヴォルテックス」 死の霊的プログラム

          映画感想「ディスコネクト」ネット二重人格の世界

          ディスコネクト2012年のアメリカ映画、この映画を見ていると現実の家族や学校や職場のほうが仮想現実で、SNSなどのネットの世界を現実のような感覚で生きているのかもしれないとみんなが不安になると思う。アメリカ人だけでなく世界中の人々がネットの世界も日常の一部のように思って生きている、そして突然スマホやPCの画面から思ってもみない生身の人間が姿を現して、その現実に存在すると思われる人間の生々しい人間性に面食らう、この映画にはそういう衝撃がある。 ネットがない時代でも、詐欺師はい

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