現代人もすなるnoteといふものを、わたしもしてみむとてするなり。 ……という、とても雑な一文からnoteはじめようと思います。よろしくお願いします。 ①自己紹介名前:儚ゆりゆみ (はかな・ゆりゆみ) →名前の由来は、夢野久作の短編小説集『少女地獄』の内の一作『何んでもない』内の登場人物から取っています。 青空文庫で無料で全文読める本作なので、ネタバレをはっきり書いてしまうのですが……作中の重要なキャラクター「姫草ユリ子」(ただし彼女の本名は「堀ユミ子」といいます)か
午前零時になったら魔法がとける とけるけれども とけてしまってもいい そう思った その理由は 「ただお洒落がしたかった」 それだけだったんです 白粉、口紅、髪飾り リボンにドレスに、下ろし立ての靴 姉さんたちの真似をして お洒落がしたかった 「ただお洒落がしたかった」 それだけだったんです 姉さんたちに あんなことをさせる そんなつもりは 爪の先から かかとの端まで まるきり なかったんです。
むしろ わたくしのことは 「林檎姫」と お呼びくださいませ 林檎に魅せられ 林檎を咀嚼し 危うく林檎に殺されかけた そんな わたくし わたくしを むしろ 「林檎姫」と お呼びくださいませ
故郷に一生帰れなくなるんだったら 海を出なきゃよかった それに 尾びれを捨てなきゃいけないのなら 海を出なきゃよかった 歌が歌えなくなるぐらいなら 海を出なきゃよかった 重たいナイフを握らなきゃだめなら 海を出なきゃよかった そうすれば 寝ているあなたの枕元で こんなに泣かずに済んだのだし わたしじゃない誰かを見つめる 見つめてしまう そんなあなたを そういうあなたを まったく知らないで済んだ それなのに わたしは海を出てしまったし それなのに わたしは
わたしには お母さんがふたりいる わたしを産んだお母さんと わたしを育てるお母さん それぞれに それぞれの言い分が あるらしい *** わたしを産んだお母さんは遠くで語る 「あんたを産みたかったから あれを食べなきゃならなかったんだよ」 「魔法使いの、あの畑の、あれを食べなければ お前を産む 産んでやる力なんて 出なかったんだよ」 わたしを産んだお母さんは 妊婦さんの頃 隣に住む魔法使いの畑に お父さんを無理やり送り込んだという 畑にあった あの野菜を どうし
↓ *前話はこちらから 3 携帯のメアド交換をしてからは、ゆるやかに、はっきりとわたしと立花先輩の関係は変化していった。 「図書委員さん」から「もも子」呼びに変わり、一日にもらうメールの数も増えてきた。図書室のカウンター越しで目が合うと、どちらともなく笑みがこぼれる。 立花先輩は、本を借りに来ることが多くなった。わたしがいるからかな、なんて自惚れてみるのも楽しくて。借りた本を延滞することもたびたびあって、それを指摘した時の申し訳なさそうな表情もなんだか可愛く見えた。
──世の中にいる人ほとんどが、「滑稽だ」と笑うような恋をしている。 1 その噂は、行きつけのカフェで聞いた。 「立花先輩、来月こっちに戻ってくるんだって」 たちばなせんぱい。 その名前は、まるで静電気だった。 ……ばちぱちっ、と皮膚が弾ける。脳味噌が大きく揺れた。 「あ、立花先輩、来月戻ってくるんだ」 バカみたいなおうむ返しをして、わたしは急いでストローをくわえた。 冷たいアイスティーが喉の上を大量に走り抜けていく。お腹の中に冷えた感触が広がり、ぞっとし
「外なんだけどもお互いに一枚ずつ服脱いでいって、そんで気持ちの良い事するって……そういうの僕好きなんですけど、お姉さんはどうスか?」 平日昼間の近所の公園。隣にいきなり座ってきたおじさんに急に言われたわたしの心境やいかに。 熟れすぎた柿みたいな色味の太陽の下、わたしはすっぴんのまま、学生時代からずっと着ている(むしろ親からはそろそろ捨てろとまで言われている)パーカーと長ズボン姿で、携帯をいじりながらボケーッとベンチに座っていた。 わたしは12月から新しい職場に入る
大人になってからの涙の方が、実は切実なんじゃないかと最近思う。 自分が不甲斐ない時や、自己嫌悪に陥った時に泣く。 誰かを許せなかったり、恨む時にも泣く。話を聞いてもらえなかったり、無視されたり、態度が悪かったり、悪口言われてたりしたら、もちろん泣く。 仕事を探している時も泣く。決まったとて不安で泣く。 なんで泣いているのか理由が分かる分、泣きながら考えを巡らせる。そのせいで頭に熱が集まり、頭頂部がカッとあつくてたまらなくなる。 全体のことを思えば○○するのが
最近、夜眠れない。 体は疲れているし眠気はあるのに、目を閉じても一向に眠れない。 心臓が居心地悪そうにゴロゴロ動いているのが感じる。神経が逆立つ。体が強張る。重たく感じる。不安な気持ちが高まっていき、少し息が乱れる。 はあ、はあ、はあ……。 次第に息が早くなる。 はっ、はっ、は、は、はっ、はっ……。 指先が冷たい。苦しい。どれだけ空気を行き来させても落ち着かない。 頭では分かっている。深呼吸をしないといけない。だけどできない。その前に焦る気持ちが前に
最近一気読みしていた為、今現在の推し探偵です。 社会人なりたての頃『第四の扉』に出会い、満員電車の中でもみくちゃになりながらも夢中でページをめくって読んでた。そこから流れるように『死が招く』も読み、ポール・アルテ作品に完全にドボン。 ポール・アルテ作品は、本当に格好いい! 二転三転する事件に反して、犯罪のトリック自体はかなりシンプル。「これどうやって解決するんだ?」とギリギリまで読者を混乱させておいて、事件自体は単純なトリックで見事に解決。しかも、最後の一頁まで本
「君は二等辺三角形だったことがあるかい?」 そんなにネタにして擦るものじゃないとは思いつつ、やっぱり台詞の一つ一つが初見じゃ分かりにく過ぎて面白い。 画家兼詩人兼狂人専門の探偵という、担当分野がここまで多いキャラクターもそうそういないのではないか。まあ、狂人専門の探偵業に関しては本人が望んでやっているというよりは、結果的にそういう感じの活動になってしまっているだけなんだけど。 ↑ 実は先日も彼が登場する『詩人と狂人たち』の話はしている。 だけどやっぱりまたしたい
まん丸な顔に、大きな帽子とこうもり傘がトレードマーク。 見た目の特徴だけをあげれば神父服を着たプーさんみたいな人だな、と最初思った。 G・K・チェスタトンに出会ったのは、大学生最後の夏休みのこと。本当は卒論を書かないといけなかった時期だったけれど、書く前に現実逃避をしたいなと思い、本屋で何かないかと物色していた時に出会った。 以前書評を書いた『詩人と狂人たち』にまず出会い、そこからブラウン神父シリーズを一気買いし、少なくとも創元推理文庫から出されているチェスタトン作
*個人の感想なのでお手柔らかにお願いします。 12月から、新しい職場で仕事をスタートする。 その前に好きな本でも読んでゴロゴロしておくか、と思いここ最近はミステリー作品を漁りに漁っていた。 ちなみに今の推し作家はポール・アルテ、推し探偵は犯罪学者のアラン・ツイスト博士、推しトリックは密室トリック。密室殺人は心臓に悪くてとても良い。 本当はポール・アルテについて語りたいところだが、ちょっと長くなるので一旦置いておくとして。 ポール・アルテ作品を読み漁るかたわら、
YouTubeで音楽を聴こうと思う。 アーティストの名前を打ち込むつもりが、「しぬ」と打ち込んでいる。頭では、あ、と思っているのに、指はするする動き続け、「しぬしぬしぬしぬしぬしぬしぬ」と連続で打ち込み続けてしまう。 何かの病気かもしれない。 だけど、案外わたしは町に溶け込んで生きている。二足歩行ができる、話しかけられたら会話を交わせる、笑うこともあるし、その気になればおしゃれもする。 その延長線上で、わたしはわたしが生きていることに懐疑的かつ攻撃的になることがあ
『夜ごはんよろしくお願いします』 というメモが、お金と一緒に居間のテーブルに置いてあった。メモと現金の隣にオートミールの箱が座っている。朝ごはんはこれってことか。 お母さんの姿はもうなかった。わたしはこれから三十分で支度をすませて高校に行かなきゃいけない。まだパジャマ姿だ。 お金を財布に収め、オートミールの箱片手に台所へと足を運ぶ。着替える前に朝ごはんからかなと思ったから。 しかし、台所の人影を見て足を止めた。 ……姉だった。 冷蔵庫の前をぐるぐる歩き回って