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【第四部】 二〇一四年 二十七歳 トシあるいはイチ

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3-10.神の照らすクロスロードに悪魔はたたずみ、エルフは道をためらう

 俺の前には二つの道がある。 一つの道は、ミエコちゃんとの関わりを捨て、俺がずっと大切に…

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4年前
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3-9.執着

 仮にミエコちゃんが俺のふるまいでどれだけ傷ついていようと(どれだけ傷ついているかを俺が…

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4年前
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3-8.女たち

 いくつかの、俺の心に残る疑問がある。 それは誰か特定の女によって生まれた疑問というより…

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4年前
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3-7.裏切り

俺とミエコちゃんの間に、今あるような亀裂、とまではいかなくとも、「わだかまり」のようなも…

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4年前
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3-6.俺は性的な人間である

 俺は自分の性的な側面について、朗らかに言う事もできるし、病的に言う事もできる。  朗ら…

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4年前
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3-5.欲情

 ミエコちゃんを初めて抱いたのは年を越した一月だった。 年を越すまでにミエコちゃんと三度…

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4年前
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3-4.ウェスト・東京

 俺が冬の装いを好ましく感じる理由は、夏服が体の上に「乗せる」ことによって体を飾るのとは違い、体を「包む」ことによって一種の謙虚さが表れるからだ。 その日、ギャラリーの外に先に出てで待っていた俺のもとに出てきたミエコちゃんは、紺のウール地でできた変形のピーコートのような上着と、首にはベージュのマフラーを巻いていた。 西洋が数百年にわたって語ってきたコードにもとづいたその冬の装いは、彼女が理性的な文明人及び文化人である事をほのめかしていた。 「どこ行く?」と声をかけながらすぐに

3-3.きっかけ

 十月の飲み会で、中学を卒業して以来初めてミエコちゃんを見た時、彼女の女ぶりに俺は目をみ…

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4年前
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3-2.変化

 気持ちが、心が、俺について来ない。 いや、俺を置き去りにしていると言うべきなのか。 どん…

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4年前
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3-1.心

【第四部 第三章】運命  率直に言えば、俺はミエコちゃんにイラついている。 二人で楽しい時…

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2-10.インドシナに二人

 ナツミちゃんとの性交は、二度目が良かった。 相手が誰であれ、一度目の時というのはたいて…

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4年前

2-9.シグナル

 根本的に他人同士だけが住まうこの世界において、人と人の間柄において欠くことのできないも…

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4年前
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2-8.押し倒す(lay you down)

 ホテルの部屋でナツミちゃんを押し倒した時、俺は自分が何をしているのか完全に理解していた…

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4年前
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2-7.秘密

 恋人達の関係や時間がしばしば蜜や甘さに例えられるのは、そこに人間の最も麗しい特徴が濃密に現れるからだ。 その麗しさとは、思いやりのことだ。 互いが互いを宝物として扱う事。 特別な宝物を自分だけのものとして愛でると同時に、自分自身がまた特別な宝物でもある事。 相手の喜びが自分の喜びであり、また自分の喜びが相手の喜びでもあると知る事。 そこには挫折や失望のつけ込む余地はなく、全方位が成功と歓喜に裏付けられた勝利の無重力空間だ。 俺が彼女の乳首を見たくて欲望と興奮で破裂しそうにな