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2010年代のエルフたち(二〇一一年 二十四歳 トシとイチ)

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記事一覧

14.夜をつつむ風

 トシとイチは、アーケードの下から駅前のロータリーに出た。 ずっと屋根のあるところにいた…

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13.賢くなりたい

 トシとイチがこの日五十種ほどのメニューの中から選んだ一人前のパスタの価格は、東京におけ…

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4年前

12.パスタ。と、水。と、会話。

 トシはジェノベーゼを、イチはあさりとしそのパスタを頼んだ。 「いい感じじゃないですか。…

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4年前

11.放浪される

 結局、イチはアルバイトに行かなかった。 バイト仲間に連絡し、代役を確保した上で、職場に…

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4年前

10.いつか

 トシとイチはふり返り、坂道のほうへと歩き出した。 「無償でいい音楽を届けてくれる素敵な…

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9.レイドバック

 井の頭公園のボートの規定時間は一時間。 それだけあれば、奥の小さな橋から乗り場の横の大…

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8.ライフ・アフター・カタストロフィ

 トシとイチがサークルで出会った二〇〇七年、トシが十九歳、イチが十八歳だったとき、二人はすでにどちらも悲しかった。  トシは中学三年生、十五歳のときに、初めての彼女ができた。トシにとってその体験は、単なる桃源郷の体験だった。 トシの初恋はおそらく一歳か二歳のときで、当時近所に住んでいた同い年の女のコだった。 トシの記憶にもないほどの幼い日のことではあるが、両親に当時の話を聞いたことがある。 トシはいつもその女のコと話したがっていて、手をつないで歩く時には大はしゃぎで蕩けそう

6.穏やかなケモノたち

「ぼくらが何かを生み出すってこと、ありますかね」 イチが口を切った。 その言葉はトシに対す…

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4年前

5.アドーン

 実際、池の上は居心地がよかった。 休日にはたくさんのボートが散らばり、周囲に終始気を配…

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4年前
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4.明鏡止水、ふたり

 トシが大学二年目のとき、所属していたサークルに、イチが新入生として入部してきた。 それ…

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4年前
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3.七井橋通り

 公園へと下る道は、南口の目抜き通り。 古着屋やこじんまりしたレストランが並ぶ道は、平日…

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4年前

2.吉祥寺

 トシとイチがお互いに抱く親近感は、一つのものに対する感情を共有できるということに由来し…

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1.コーリング

 トシはキャンパスへ行くのが非常に下手な学生だった。 しかし、苦手ながらもどうにか遅々と…

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