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最後にハナから電話がかかってきた時、トシはロックフェラービルの屋上で強風に吹かれていた…
次にハナから電話がかかってきた時、トシはドミトリーのベッドに横たわっていた。 時刻はす…
ハナの部屋は一風変わった形状をしていた。 上から見た断面としての間取り図は二つの四角形…
その夜、トシは手持ちの服たちの中でもいくらかマシそうなのを選んだ。 とはいえ、たとえば…
ハナから電話がかかってきた時、トシはグリニッジ・ヴィレッジの地下鉄に降りる階段があるコ…
働かない、仕事をしないという点で、今のトシを責める人は多い。 いや、責める人はめったに…
人間はしばしば、自分自身の人生そのものに裏切られる。 常に裏切られ続けている、と言ってもいい。 人生が決して人間にとって満足のいくものにならないことの理由の一つとして、人間が人生の主体であるのか客体であるのか、そのけじめが、一度としてはっきりとつくことがない、ということが挙げられる。 トシが彼の人生において最も幸福だったのは、中学三年生の二月と三月、十五歳のときだった。 トシのこの幸福を、世の中で最も重用されている、いわゆる平凡であることの幸福とでもいうような、不満と満
ニューヨーク滞在の初めのころ、トシはミッドタウンに位置する日本人宿に泊まっていた。 ド…
ブルース・スプリングスティーンとジ・イー・ストリート・バンドが暗がりのステージに登場し…
二年前、ブルース・スプリングスティーンのライブを見に行こうとトシが決心したとき、その地…
トシにはそれができない。 体が動かない。 朝(トシにとっての「朝」というのは日の高さや時…
今日も何も変わらなかった。 デスクの前の椅子に座り、窓の外をながめながら、トシは思った…