「NETFLIXの最強人事戦略~自由と責任の文化を築く~」の感想と概要
日本企業で働く自分には、かなりセンセーショナルな内容で、感銘を受けるとともに、「明日は我が身」と背筋が伸びるような感覚がページ毎にありました。
本書について
「従業員の忠誠心を高め、会社につなぎ止め、キャリアを伸ばし、やる気と満足度を上げるための制度を導入することが、人材管理の仕事だとする考えである。そのすべてがまちがっている。そんなのものは経営陣の仕事でも何でもない。」
「また予測を立てられる最長期間を3四半期と見て、3四半期にわたる継続予算を編成した」
「有給休暇制度の廃止を考えてみよう。従業員には、「妥当だと思うだけの休暇をとり、適宜上司と相談してほしい」とだけ伝えた」
「積極的に解雇する」
など、
いかに自分が凝り固まった既成概念に囚われているかを認識できたとともに、いかに自分がぬるま湯に使ったまま仕事をしているか、本書を読んでいると、本当にページ毎に自己嫌悪に陥ります。。。
徹底的にユーザーベネフィット(業績)を追求した新時代の人事戦略だと、人事ど素人の僕ですが、思いました。
(アメリカではすでにある程度浸透し始めているようですが)
本書は、実際にパティ・マッコードがNETFLIXで行った人事戦略の本ですが、物事の考え方や、感情に囚われないシビアな判断基準など、人事以外の業務でも使えそうですし、マネジメントレイヤーの方なら、明日から試せることも多い気がしました。
以下、
章ごとに個人的にメモっておきたい内容を記載します。
Chap.1 成功に貢献することが最大のモチベーション
=チームが最高の成果を挙げられるのは、メンバー全員が最終目標を理解し、その目標に到達するために、創造性を発揮して問題解決にとりくめるとき。
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経営陣の意思決定方式は明確で、その内容は全員に伝わっているか?
明確な目的意識、達成すべき成果の周知徹底
=チームのやる気を最大に高めるのは、優れたチームメンバーが、つまり、ともに切磋琢磨しながらすばらしい仕事ができるメンバーがそろっていること。
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素晴らしい福利厚生や、社内レクレーションなどではない
これが一番の従業員特典
=無駄な方針、手順、ルール、承認をできる限り排除。トップダウンの指揮統制方式はスピードと機動性の妨げに。
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現場に自由と裁量権を与え、責任を負わせる
=たえず実験を繰り返し、できる限り無駄をそぎ落とそう。方針や手順を廃止したあとで必要とわかったら、元に戻せばいい。
Chap.2 従業員一人ひとりが事業を理解する
=どんなレベルの従業員も、自分とチームの任務だけでなく、事業全体のしくみや会社が抱える課題、競争環境などを大局的に理解することを望み、必要としている。
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各事業部の詳細な業績や、今後の目標を開示・説明
=事業のしくみを正しく理解することが、何よりも大切な学習。それはどんな「従業員の能力開発」研修よりもためになるし、おもしろい。この知識が、高い業績と生涯にわたる学習の起爆剤に。
=経営陣と従業員のコミュニケーションは、本当の意味で双方向でなくてはならない。リーダーが質問や提案を歓迎し、気軽に意見を言い合える雰囲気作ると、従業員は驚くようなアイデアやひらめきを与えてくれる。
=部下が何もわかっていないように思たら、知るべき情報をしらされていないだけ
=従業員の事業の現況や問題点は、良かろうが悪かろうが伝えるべき
=コミュニケーションの仕事に終わりはない。円滑なコミュニケーションは競争優位を支える
Chap.3 人はうそやごまかしを嫌う
=従業員は事業や自らの業績について、ありのままの真実を告げられても対処できる。聞く必要があり、知りたいのは、ありのままの真実
=面と向かって気になる点を伝えることに勝る問題解決法はない
=徹底的に正直な姿勢は、理解と尊敬を深め、また、反対意見をあぶり出す。そうした意見は重要な発見につながる。
=部下の仕事に問題があるとき、それを直接指摘しなければ、マネージャーやほかのチームメンバーがカバーするハメになり、生産性が落ちる
=みずから模範を示し、間違いを率直に認める。
Chap.4 議論を活発にする
=憶測ではなく事実に基づいた議論を。
=優れた結論を得られるかは、データの質にかかっている。厳格な科学的基準を満たすデータだけを採用しよう。
=それで、これのどこが顧客のためになるんだ?
=データだけではなんの意味もない。データをどう使うか、どう分析するか。
Chap.5 未来の理想の会社を今からつくり始める
=将来必要となる人材をいま雇う
=今から6ヶ月後に高い業績を挙げるために、会社はどう変化していかなくてはならないかを定期的にじっくり考える
=会社は家族ではなく、プロスポーツチーム。メンバーを入れ替えるのは当たりまえ。
=ベンチャーは初期と成長期で、求められる人材が異なる。時には英断も必要。
Chap.6 どの仕事にも優秀な人材を配置する
=従業員定着率は、チーム作りの成功を測る指標としては不適切。すべての職務に優れた人材を配置できているかどうかが重要。優れた人材とはチームのニーズとマッチしている人材。優秀でも「優れた人材」にならないことも。
=時には多大な貢献をした人であっても解雇して、新しく求められるようになった業務に適したハイパフォーマーを採用しなくてはならない
=面接を心に強く残る経験に。候補者の隣人はハイパフォーマーかもしれない。
=リクルーターは、どんな専門的な事業であっても、その仕組みを周知していなくてはならない。
=採用面接はマネージャーが予定しているどんな会議よりも優先され、また、役員会の欠席・中座してよい唯一の理由だった。
Chap.7 会社にもたらす価値をもとに報酬を決める
=給与制度と人事考課のプロセスは切り離すべき。
(人事考課は廃止しても。)
=パフォーマンスの高い企業は(報酬に関して)意図的に不平等主義をとっている
=どんな職務に必要なスキルも才能も、定型的な職務内容とは一致しない。定型的な給与データをもとに、あらかじめオファーの水準を決めておくべきではない。給与調査の情報は、市場状況の後追いでしかない。過去ではなく、その人が未来にもたらす価値で、報酬をきめるべき。
=報酬に関する情報を従業員と共有することで、給与に関してよりよい判断を下し、偏見を減らし、さまざまな業務への貢献度について正直に話すことができる
Chap.8 円満解雇の方法
=従業員のエンゲージメントにとらわれるのは的外れ。やる気と業績に必ずしも相関性はない。また、いまの職務で高い業績をあげていても、将来の職務で高い業績をあげられる保証はない。
=この従業員が情熱と才能を持っている仕事は、うちの会社が優れた人材を投与すべき仕事なのか?