事例でわかる新・小売革命—中国発ニューリテールとは?
会社の上司に進められて購入。
中国・世界の最先端のITがここまで進んでいるのかという驚きと共に、テクノロジーを入れるのは本質を理解して、その本質の価値を高める目的でないとあまり意味を成さないんだなと、ちょっと考えさせられた一冊でした。
以下、
章ごとにメモっておきたい内容を、勝手な解釈とともに記載します。
Chap.1 ビジネス新時代を勝ち抜くニューリテールの本質
「オフライン企業は必ずオンラインの領域に足を踏み入れ、オンライン企業も必ずオフラインに参入する。オンラインとオフラインが合わせて現代物流と融合することで、真のニューリテールを創出するのだ」
小売:
最終的に支払いをする「人」(消費者)と「物」(商品)を繋ぐ「場所」
家賃:人流量コスト(集約コスト)
ショッピングセンターがテナントから家賃収入を得るのは、テナントのために集客するからで、人流量こそが核心的な価値を持つ
売上高=
人流量(トラフィック)×成約率(コンバージョン率)×客単価×リピート率
・D=Design(デザイン)
:商品をデザイン、設計するプロセス。
・M=Manufacture(メーカー)
:工場とも呼ばれる。
・S=SupplyChain(サプライチェーン)
:総代理、エリア代理、卸業者、
小売店といったメカニズム。
・B=Business(商業施設)
:ショッピングセンター、
スーパーマーケット、チェーンストアなど。
・b=business(商店)
:夫婦経営店、露店、
ウェイシャンなどの個人販売。
・C=Consumer(消費者)
:エンドの顧客。
過去のニューリーテール
▼19世紀:シアーズ
鉄道という新テクノロジーを利用し、通信販売という「場所」のモデルを構築。
▼20世紀:ウォルマート
車という新テクノロジーを利用し、大型スーパーマーケットという「場所」のモデルを構築した。
Chap.2 オンラインとオフラインを融合させるニューリテール
多くのブランドが始めた「商品を販売しない」実店舗
オンラインで情報流を得て、オンラインで金流を完了する。これまでの「商品の粗利で情報流のコストをカバーする」取引構造から、オンランでカバーする方向性へ。
ニューリーテール とは
オンラインの効率性を活用し、オフラインの体験性に効率という翼を授けること。
▼アリババのタオバオのイベント
イベント当日、商品のバーコードをスキャンするとタオバオでの販売価格が分かる。最安値保証で、基本は半額。
ユーザーは近所のスーパーで商品を下見し、良いと思ったものをタオバオで購入。タオバオはオフラインのスーパーを1日限定のタオパオのオフライン体験店舗に仕立て上げた。
▼ジンドン、パイパイダイ、セサミクレジットの融資サービス
取得したビッグデータに基づき、ユーザーの信頼スコアに応じて融資を行う。データに基づいてオンラインの信用性を高めた。
▼アリババ参加のリンシャオトンの天猫商店
中国の伝統的なビジネスモデルで「小売部」と呼ばれる集合住宅エリアにある夫婦で経営しているような小さな雑貨店。そのビジネスモデルをアリババが膨大なデータに基づきエンパワー。
この地区はペットフードやペット商品、この地区はベビー用品に粉ミルクなどを販売。オンラインのデータでオフラインをエンパワーし、効率をあげ、オフラインの新たな人流量を獲得。そのデータがまたオンラインに戻り、融合する。
Chap.3 売り場効率の限界を突破するニューリーテール
売上高=
人流量(トラフィック)×成約率(コンバージョン率)×客単価×リピート率
売場効率= 売上高/売場面積
▼シャオミのニューリーテール
・ファストファッションの場所選びをベンチマーク
・単品ロジック「ヒット商品戦略」
各カテゴリごと数品以下にして、
デザインや品質を向上
・蓄積したビッグデータによるMD(商品選び)
口コミやコメントなど、
エリアごとの地域性も加味
・追加率向上
商品同士の互換性を高め、追加率向上に。
監視カメラ→ルーター
スマートホン→テレビ
(離れた家族がリアルタイムで写真を閲覧)
・体験感
オンラインでは伝わらない品質の体験を。
セグウエイなどの試乗、テレビゲーム、PCなど
・全チャネルの一本化
店員はアプリのインストールを案内。
オンラインとオフラインを一本化し、
それぞれの利点を融合。
▼フーマーフレッシュ
トップダウン設計
【1】
もしオフラインの生鮮店舗が最終的に従来型スーパーになってしまった場合、たとえ従来型スーパーより利益が出ていたとしても中止すること。本当にやりたいなら、オンラインの収入は必ずオフラインの収入を上回ること。
【2】
オンラインの注文数は必ず1日5000件を超えること。5000件を超えないと規模効果の効くビジネスにならない。
【3】
コールドチェーン物流を低コストで管理できるという前提で、実店舗から半径3㎞以内のエリアへ30分以内の配送を実現すること。
【4】
最終的にオフラインからオンラインへ人流量を誘導し、アプリはほかのトラフィックを必要とせずに独立できること。
「オフライン実店舗に武装された生鮮EC」
と定義し、
売場効率=
(オフライン収入+オンライン収入)/売場面積
と従来の考え方に囚われずに整理
究極のオフラインUXでオンラインへ誘導
・魚介類を活きたままディスプレイ表示
・イートインエリアで買った鮮魚を
そのまま調理してもらい味わえる。
→スーパーの中にレストランをオープンするような大胆な戦略で、ブランド・商品に対してユーザーの信頼と好意を獲得。
オフラインでもアプリ決済のみ
・クレジットカード、ウィチャットペイ、
アリペイ、現金などアプリ以外全部NG
・オープン当初はレジ横に
アプリのインストール方法の説明ボードを設置
→オフラインへ徐々に誘導していく。
3km以内30分以内の配送スピード
・コールドチェーン物流はコストがかかる。
30分以内で常温配送しコストを大幅に圧縮。
・スマートIoT、オートメーション化で
商品が配送車に積まれるまで10分。
フーマーフレッシュの爆発的な人気のおかげで、
一部の不動産仲介業者は「盒区房」の概念を作り、
フーマーフレッシュ店舗から半径3㎞の範囲内に
ある物件には
「この物件は『学区房』(学校の学区内にある物件)であるだけじゃなく、『盒区房』でもあるから若干家賃が高いです」と言う。
Chap.4 中間の不要なプロセスをカットして効率を上げるニューリテール
・D=Design(デザイン)
:商品をデザイン、設計するプロセス。
・M=Manufacture(メーカー)
:工場とも呼ばれる。
・S=SupplyChain(サプライチェーン)
:総代理、エリア代理、卸業者、
小売店といったメカニズム。
・B=Business(商業施設)
:ショッピングセンター、
スーパーマーケット、チェーンストアなど。
・b=business(商店)
:夫婦経営店、露店、
ウェイシャンなどの個人販売。
・C=Consumer(消費者)
:エンドの顧客。
▼コストコの戦略
完全会員制のスーパーマーケット。
仕入価格
カテゴリーごとの選択肢(商品数)を絞って、すべてをハイクオリティな商品で、パッケージが大きく、内容量も多いものに。
これにより発注・追跡・陳列のコストを削減し、在庫回転期間を短縮。これにより運転資金効率も上昇し、経営コストを圧縮した。
【在庫開店期間】
・コストコ :29.5日
・ウォルマート:42日
・ターゲット :58日
商品数を絞っているので単品の発注数は十分な量になり、メーカーに対しても強気な価格交渉が可能になり、仕入価格を安く抑えられる。
粗利益
コストコの利益は会員費。
商品の粗利益は運営コストをカバーできればいいので、商品自体から多くの利益を生み出す必要がない。
粗利益14%を全ての商品で超えてはならないという社内ルールがあり、この思想・仕組みが会員に低価格のベネフィットもたらし、会員継続率は結果的に90%達している。
コストコは中間小売業者のプロセスを省いた。
メーカー(M)から直接仕入れ、非常に効率的に自身の売り場(B)に商品を陳列。
サプライチェーン(S)を省くことで、 M2Bという短絡経済を実現した。
▼メイソウ
アイブロー、充電コード、おもちゃなどの
日用雑貨を販売する会社。
黄金区にある小規模店舗
・ショッピングセンター内や歩行者天国など
人通りの多い好立地。
・1000店舗以上の小規模店舗(b)を携え、
メーカーと直接仕入れを行うため、
中間の総代理などの各層の代理店がない。
商品サプライチェーンは短縮されM2bに。
規模効果による短絡経済
大規模な仕入を一括払いで行う代わりに、
半額での仕入れをメーカーに交渉。
メイソウは、8~10%の粗利益を上乗せし、ブランド運営費としてまかなう。
あらゆるチャネルを完全にカットしようと全国7箇所に倉庫を建設し、
各工場が生産を終えたら、直接そのエリアにある倉庫へと搬入する。
ミドルの従業員は、それぞれの倉庫で商品をピッキングして、各店舗に配送。
店舗は32~38%の粗利益を、上乗せし、家賃・人件費などの物流日をカバーする。
0.5*1.1*1.38=0.759
当初の仕入額を販売額が下回っている。
このほかにも、
体積が大きい商品、スーツケースなどは、工場シェアをメーカーにお願いし、工場から各店舗に製品を発送してもらう。
このように思いつく限りの手法で中間プロセスを省略して、効率をあげた。
▼中古品取引コミュニティアプリ「シュンユー」
以前の中古品取引はC2b2B2b2C。
中古品を回収する人(b)が、回収した中古品をまとめて、廃品回収業者か中古品小売業者(B)に引き渡す。中古品小売業者はそれらを露天商(b)へ販売する。中古品を買いたい人(C)はここでようやく買うことができる。
シュンユーとは:
中古品取引コミュニティアプリ
ユーザー数2億、アクティブユーザー数1600万超え、コミュニティ数45万。
ユーザーの学校、オフィスエリア、集合住宅エリアを単位として、人口密度に基づき地理的境界を作り、各エリアに根付く中古品取引コミュニティ、ユータンを築いた。
このユータンの浸透力は非常に高く、
酒泉衛星発射センターのユータンでは、以前は勤務地が機密保持のため、伝統的なeコマースを通じての商品発送は難しかったが、センター内での中古品取引へのニーズが旺盛になり、ユータンはまさにニーズに合致した。
信用仲介としての機能
・ユーザーは必ず実名認証(顔認証)
・売買取引の際には必ずアリペイ
・「信用速売」サービスではセサミクレジットの
信用スコアが600以上であれば、
配送前に買取料金の前払いを受けられる。
「シュンユーは、タオバオ、Tモールにつぐアリババ第三の1兆元級のプラットフォームになるだろう。」
▼商品サプライチェーンを逆行するモデルC2M
ブルウィップ効果:
小売企業は1000セット販売するが不足すると困るから2000セット代理店に発注。
代理店は同じく余裕を持って、総代理店に3000セットを発注。
総代理店はメーカーに余裕を持って4000セット発注する。
商品サプライチェーン全体に在庫が積もり積もっていってしまう効果。
→そこでC2M、C2Bが誕生。
▼ハイアールの「無灯火工場」
家電メーカーのハイアールはTモールと提携し、C2Bのオーダーメイド冷蔵庫を2013年にリリースした。
ユーザーはハイアールのフラッグシップストアで
・内容量
・温度調整方法
・本体素材
・外見デザイン
などを選べる。
ハイアールの柔軟な生産チェーンにより、500タイプ以上のオーダーメイドの冷蔵庫を同時に製造。
無灯火工場
工場で働くのはほぼすべてロボット。ロボットが注文に従い、同一の組立ライン上で異なる冷蔵庫を製造する、柔軟性のある生産ラインを実現。
商品の種類ごとに生産ラインを作らなくて済むので、コストを大幅に圧縮した。
またロボットに照明は必要ないので、照明をつける必要がない。
C2Bモデルのデータ
集中仕入でコスト 10%削減
事前のマーケティング 10%削減
倉庫使用スペース 7%削減
物流の集中 5%削減
資金の回転スピード加速 4%削減
在庫リスク低減 7%削減
など、
最終的には最大43%のコストダウンを実現。
C2Bモデルを採用すれば、
オーダーメードの商品を、従来より低価格で購入できるようになるということだ。
在庫問題を解決したのはオーダーメードではなく、
C→Bという商品サプライチェーンのリバース。
▼紅領西服のオーダーメードスーツ
「ほとんどのアパレルブランドにとって、1枚の服を販売する裏で3枚の在庫が生まれている」
・サイズ違い
・首回りのサイズ
・カラーバリエーション
など同一のデザインシャツでもたくさんの種類のシャツを生産・在庫化しないといけない。
店内で、
・採寸
サイズを算出するだけでなく、
猫背かどうかなどの体型の判断も行った
・嗜好
ボタン、襟の各フォ、生地など客と一緒に
話し合いながら選んでいく。
ボタン、柄、素材、刺繍など多くの種類を用意。
・店舗から工場(M)へデータを送信
工場では女性職人が7~8種類のミシン糸や大量のボタンを取り扱い、作るスーツの情報が表示されているディスプレイを見ながら作業する。
一見効率が悪いようだが、
そこにC2Mの優位性があり、中間プロセスを無くし、コストを圧縮した紅領西服は、
純利益率20%以上、今後は30%を達成できるかもしれないところまで来ている。
以前は在庫管理コストで販売価格の50%が設定されていた。
投資家からの注目を浴びているだけでなく、
市場においても絶頂を誇っている。
Chap.5 ニューリテールは今、この瞬間も進化している
▼変革の時代の3つの思考モデル
【1】進化思想
小売の本質は必ず前方にあり、決して後方にはない。
【2】本質思想
ジーリーグループ創業者 李書福
「自動車なんて4本のタイヤと2列のシートだけじゃないか!」
小売の本質とは「人」と「物」を繫ぐ「場所」であり、その「場所」の本質は、情報流、金流、物流の多種多様な組み合わせなのだ。
変革の時代では、業界の本質を理解することがより必要となる。
【3】システム思考
レストランの客足が減ったのなら、思い切ってデリバリーに切り替え、家賃の安い場所・キッチンのみの小さい店舗にすれば、
今までより安い価格で料理を提供できるようになり、経営は上手くいくかもしれない。
創業者の大半が、ユーザー思想と製品思想は持ち合わせているが、システム思想に欠け、
「ステークホルダー間の取引構造」を理解していない。
▼ニューリテールの未来
「メーカー代表か、ユーザー代表か」
企業を代表することと、ユーザーを代表すること。2つの価値観が同時に存在するが、成功している小売企業は、たとえそのビジネスモデルがそれぞれ異なるとしても、消費者側に立っていることが多い。
粗利ではなく会員費を稼ぐコストコ
コストコの立場からすると、収入を会員費に依存すると一旦決めたら、その立場は会員と同じになる。
より品質の良い商品をより低価格で販売する方法を尽力して考え、そうすることで会員は継続して年会費を支払ってくれる。
商品の粗利は店舗の運営のコストをカバーできれば十分で、商品自体からさらに多くの利益を生み出す必要はない。
リスティング広告で広告費を徴収アリババ
タオバオで、消費者の保護が行き過ぎて、悪い結果も生じた。
商品を受け取っていないフリをして代金をはらわないなど、消費者側の信用度の低さが露呈し始めた。
100%完璧な方法は存在しないが、どうしたらこのような行為を防止・撲滅できるだろうか?
この状況下でアリババは微塵も迷わずに消費者側に立つことを選択した。
タオバオは、買い手に権限を掌握させ、アリペイをはじめとした様々な手法で買い手を保護した。
大量の買い手と売り手をプラットフォーム上に蓄積し、売り手が多い時、買い手はおのずと検索機能で自分に合う売り手を探す。
しかし、同一商品の売り手がひどく多い場合、一般的なショップは検索結果を数十ページスクロールしても買い手には見つけてもらえない。
そこで、タオバオはクリック課金型リスティング広告の「直通車サービス」というものを提供。売り手はリスティング広告を利用して順位を上げ、購入した広告スペースに自身のショップの商品を掲載する。アリババはここから広告費を徴収。アリババの本質は広告会社なのだ。
▼情報流コストを払うことは新たな動向になるか
オフライン店舗の商品を販売する役割はどんどん小さくなり、
オフラインで見てオンラインで買う割合が増えていく。
Thank you so much🙌 溜まったお金で、また何か買ってレビューさせて頂きます😁