芸術激流
芸術激流。
何度も声に出したくなる抜群のネーミングセンスに「もしかしてイベント名も芸術のひとつなのか?」といった12回裏ツーアウト満塁の神宮球場を支配する淡い期待に放棄が混じった雰囲気を胸に抱きながら、何の抵抗もなく口にしている周知の言葉は人に平時の安心感を与え予定調和を許すにも関わらず、羅列すると稀に発生するディストーションと摩擦が生んだ白い煙は周囲に異変をアナウンスすると同時に、結局のところ、有事に信じられるのは耳障りのよい言葉や目障りな参考書なんかではなく、己の習慣によって身につけた基本と応用だけなのだと煙の中の当人に現実を突きつけたこの企画は、むごすぎる事実から目を背けて自分の信じたい方向を肯定する情報だけに手を伸ばし続ける安直な姿勢に気づいている人と、認知的不協和の奴隷として生きる人との分水嶺に、鋭く、そして迷いなく浴びせたひと太刀だったんだなと、流された時間が教えてくれた。