人はなぜ刺激を求めるのか
映画館に行っても、Amazonプライムビデオで映画を鑑賞しても、近頃爽やかな余韻が残る映画には滅多に出会えない。
どす黒い感情が渦巻くような、ときに胸が悪くなるような。
刺激が強すぎる。
たまたまとも思えない。
少々の刺激では満足できないのか。
もっともっとと、強い刺激を求めたがる現代人。
映画には非日常を求めたい。
しかし、ホラー系やハードなバイオレンスは苦手分野で、敬遠したくなる。
わたしの場合、ホラー映画といえば、せいぜいスタンリー・キューブリックの『シャイニング』が関の山だ。
あるホラー映画マニアの人にいわせれば、ああいう理屈っぽいのは好きではない。
『13日の金曜日』のように意味もなく人が殺されるのが好きなのだとか。
ふーん、そんなものですかね
わたしとは違う星の人だな。
正視できないような場面では、実際に目を覆ってしまうこともある。
作り物とわかっていても…
最近Amazonプライムビデオで観た映画をご紹介します。
『死刑にいたる病』
映画館で予告編を見て、ずっと気になっていた。
怪優阿部サダヲの演技を鑑賞するための作品だった。
少年少女を言葉巧みに誘い出し、拷問の末なぶり殺す、サイコな連続殺人鬼榛原。
そんな死刑囚に一人の青年が翻弄される物語だ。
白石和彌監督の映画は以前『凶悪』を観た。
原作も読んでいたが、これも何とも後味が悪かった。
『孤狼の血』は夫から感想を聞いて観る気にもなれなかった。
この監督、人を嫌な気分にさせる天才なのかもしれない。
強引な展開も少々気になった。
えー!
それはないんじゃない?
意外性ばかりを追求するとこんな突飛なストーリーになるんだろうな。
それでも物語に引き込まれてしまうのは、ミステリー的展開と阿部サダヲの圧倒的な演技力の賜だ。
ネタバレになるので、感想はこのぐらいにしておく。
最後の最後まで目が離せないエンターテイメント作品だった。
その数日前に同じく自宅で観たのが杉咲花主演の『市子』。
こちらも重苦しく、暗い内容だった。
無戸籍という社会問題が背景にあった。
どこまでいっても幸福になれない主人公の市子。
月並みな表現だが、杉咲花さん、ここまでやるかという体当たり演技だった。
無戸籍の市子がなぜ学校に通えたのか。
家族の秘密…
市子を取り巻く男たち。
リアルに感じる部分もあるけれど、ミステリー仕立ての展開。
やりきれないような、何とも暗い気分になる。
しかし、映画は所詮フィクション。
日常から乖離しているからこそ面白い。
この作品は、非日常の中にも
社会問題が投げかけられていて、人の心も描かれていた。
無戸籍といえば、是枝裕和監督の『誰も知らない』を思い出す。