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隣の老人問題

実家の隣に住む80代の叔父と、同居する独身アラフィフの従妹。
まさに8050問題の見本のような親子だ。

従妹は世間から見ると、引きこもりということになる。

中高大はほぼ皆勤賞だったというが、就職はせず資格試験も早々に諦めて、時々アルバイトなどをしながら、ずっと実家暮らしをしてきた。

わたしは子どもの頃は別の場所に住んでいて、高校からは介護が必要な祖母と同居するため、母の実家で暮らしていた。
年齢が違うこともあり、この従妹とは、あまり話したことはなかった。

今はアルバイトも辞めてしまって、世間とは没交渉。

人間嫌いで大人しい性格だとばかり思っていたが、数年前に話してみたら、情緒豊かというより寧ろ激情派、引きこもりのイメージから程遠いキャラクターだと知った。
せっかく帰省したのでちょっと話してみようかなと声を掛けたら、暫く待たされて「今ゲーム中なんで…」といってすぐに引っ込んだ。

は?
ポカンとして、家に戻ると、程なくして従妹がやって来た。
「さっきはごめんなさい。
あのとき1位だったんですよ」

なるほど、いろんな趣味があるのね…

認知症進行中の父親への不平不満、罵詈雑言、最終的には人格否定まで、愚痴のオンパレード。

そして、兄が40代で突然亡くなってしまった日のこと。
ガンとの長い闘いの末、70代で亡くなった母親のこと。
話す方も聞く方も涙になる。

兄も姉も離婚したので、結婚はしたくなかったし、子どもも嫌い。
両親も不仲で、その姿を日常的に目の当たりにしていて、結婚はいいものだと思えなかったという。

それにしても、まさか末っ子の従妹が、親の面倒を見るようになるとは。
他県に住む姉は「お父さんはボケているんだからハイハイと聞き流せばいいのよ」というだけ。
その言葉にキレるという。

そこは大いに共感。
親を看ない人に何もいう資格はない。

叔父は痩せてはいるが、180センチ近い大男だ。
寝たきりになったら介護は無理だという。


そうなる前に、早めに施設に入って貰ったほうがいいと思うよ。
そのほうがお互いのためよ。

施設ってすぐ入れるものなんですかね?

施設にもいろいろあってね…と、わかる範囲でアドバイスした。

介護中についカッとして…ということもあるしね、と冗談めかしていうと、自分でもそれが恐ろしいという。

亡くなった母親は息子に先立たれてから、野良猫の世話をするようになった。
その猫たちが増えて、今や10匹。
外に出すと近所から苦情が来るから家の中で飼っている。
食事代も病院代も馬鹿にならない。
猫は毛艶もよく、丸々と太っている。
父親と猫なら、迷わず猫を選ぶという。
大好きな母が飼っていた猫だから手放すことはできないのだろう。

今は猫たちの世話が生きがいのようだが…。
ずっと先の、従妹が一人ぼっちになってしまった時のことをぼんやり考えてしまう。