『青い壺』 有吉佐和子
一度は絶版になっていたこの本が、今リバイバル的に話題になっているようです。
折しも2024年は、有吉佐和子さん没後40周年とのこと。
新装版『青い壺』(文春文庫)
久々の有吉佐和子作品でした。
中学時代に読んだ『華岡青洲の妻』(テーマは嫁姑問題?)を皮切りに『紀ノ川』『三婆』…と次々と読み進め、高校時代には、週刊朝日で連載されていた『悪女について』を毎週ドキドキしながら読んだものです。
1972年にベストセラーになった『恍惚の人』は今でいう認知症がテーマで、映像化されて社会現象にもなり、単行本が我が家にもありましたが、当時小学生だったため、まったく興味がなく、50代になって読んだときには、高齢社会を予見した内容に改めて驚かされました。
前置きが長くなりましたが、内容についてはくどくど説明しません。
ご興味ある方はこちらから「本の概要」をご覧ください。
この作品は、13 の短編から構成されています。
青い壺(砧青磁の壺)の数奇な運命とそれにまつわる人間模様が描かれています。
青い壺は陶芸家の手を離れ、持ち主を次々に変えますが、見る人の想像力を掻き立てる不思議な壺です。
十余年後に、意外な姿で作者の陶芸家と再会を果たし…
一人の女性が関係者によってまったく違う人格として語られる『悪女について』と、共通点のようなものを感じました。
作中で、女性が「老婆」呼ばわりされるなど、時代背景は古いですが、定年後の夫婦の微妙な関係、都会で単身頑張る若い女性、同窓会に参加して久々に同級生に会う70代女性の心境など、描かれているのは今に通じる人間ドラマです。
現代人が忘れかけた昭和の心のようなものにも懐かしさを覚えました。
今書店で新刊書と並んで平積みになっている理由がわかるような気がしました。
余談
子どものとき、有吉佐和子さん原作、八千草薫さん主演の『夕陽ヵ丘3号館』というテレビドラマを夢中で見ていた記憶があります。
内容は忘れてしまいましたが。