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宇野千代『98歳まで生きてわかった、「超ポジティブ思考」がいちばん!』
作家、宇野千代さんといえば、
自由奔放、著名人と次々に浮名を流し、結婚離婚を繰り返した人というイメージが先行する。
しかし、テレビなどで見る限り、お年を召してもお茶目で魅力的な人だった。
小説を地でいくような波瀾万丈。
着物デザイナー、実業家としても活躍された。
美人だから。
才能があるから。
それだけでは片付けられない、人間的魅力や物怖じしない積極性で人生を切り拓いていった人だと思う。
随分前だが、宇野千代さんに興味を持ち、『おはん』、自伝『生きて行く私』などを読んだことがある。
『おはん』は60歳のとき、『生きて行く私』は、85歳のときの作品だという。
涼みに入った本屋さんで、目次だけ見て購入した。
私たちは、自分の努力によって能力を生み出すことができるのです。しかも、その能力は、氷山の一角で、無限に隠された能力があるとは、なんと愉しいことでしょう。
ここで大事なことは、この能力は、放っておくと錆びついて、使い物にならなくなる、あるいはなくなってしまう、ということです。
(中略)
能力を積み重ねる、その努力をする。そうすることによって才能の花が開くのですね。才能とは、能力を積み重ねることなのです。
作家としては寡作だったが、努力を積み重ね、能力が積み重なった結果、晩年まで活躍されたということであろう。
私は固く信じているが、人の中には、駄目な人は一人もいないものである。人と人との相違は、その人が自分のよい芽をひらかせるような気でいるか、あるいは摘みとってしまうような気でいるか、その違いである。
誰にでもその人の持っている芽、というものがある。その芽を太陽のよく当たるところへ出して、時どき水をやり、肥やしもやっているか、あるいはそこら中へおっぽり出して、まるで構わないでいるかで、勝負は決まる。
駄目人間には励みになる言葉だ。
五十代までは、こつこつと能力を積み重ねる。うまずたゆまず積み重ねる。その結実が、六十代からの人生を輝かせるのではないでしょうか。
人間、六十代までは、言ってみれば、人生が騒々しいのです。体も心もさわがしいのです。四十代、五十代はあっちへ行き、こっちへ行き、いろいろな経験を通して人生修行をする時代です。そしていよいよ、人生の本番を迎えるのは六十代からなのですね。四十代、五十代に積み重ねてきた力は、このときから、花開くのです。
六十代にはうれしいメッセージである。
今までにもどこかで聞いたようなメッセージも多い気がするが、98年の人生を全うされた宇野千代さんの言葉には、説得力がある。
紹介していたら、キリがない。
章のタイトルを読むだけでも心に響くので、ご紹介する。
迷ったときは「行動する」ほうを選ぶ
一人でいるときも「陰気な顔つき」をしない
幸せな思い込みは、その通りになる
暮らしを「自分流」に愉しむ人になる
何に対しても否定的に言わない
4回の離婚で気づいたこと
95歳には95歳の美しさがある
死ぬ瞬間まで「愉しいことだけ」を考えて暮らす
生き方は到底真似ができないけれど、心意気だけでも大いに見習いたいと思いつつ、本を閉じた。