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マネジメントの作法
私のLINEヤフーコミュニケーションズでのキャリアは、一デザイナーからスタートし、約3年ほど前からはチームマネジメントに携わるようになり、現在はクリエイティブ部全体を下支えするOPSチームのリーダーをしています。最近、自分なりの『マネジメントの作法』と呼べるものが、少しずつ形になってきたように思います。この記事では、それを書き出して気づいたことや学んだことを整理してみたいと思います。
ここで書くことは、特別な理論やテクニックではなく、日々の中で誰もが実践的に取り入れられるような内容を目指していますが、私のnoteは、私自身の学びや振り返りのためのものでもあるので、決して「正解」を示すものではありません。
ただ、読んでいる中で「これ、聞いたことあるな」と思う部分があれば、それをきっかけに『自分は今どれくらい実践できているかな?』と考えるきっかけにしていただければ、とても嬉しいです。
まずは、前提を合わせるために、この記事において「マネジメント」と「作法」という言葉をどう捉えているか、簡単に定義します。
「マネジメント」と「作法」の定義
「マネジメント」とは?
「マネジメント」という言葉を聞くと、「上司やリーダーがやること」とイメージされるかもしれません。しかし、マネジメントの守備範囲はとても広く、大きく以下の4つの領域に分類できると考えます。
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対象や目的に応じて変わりますが、こうして整理してみると、組織であれプロジェクトであれ、あるいは自分自身の目標達成であれ「限られたリソースをどう使うか」は共通の課題であり、どの領域でもマネジメントの本質は『何かを計画・実行し、成果を上げるためにリソースを適切に配分・調整すること』にあるとも言えます。そして、これは上司やリーダーだけの専門領域ではなく、多かれ少なかれ誰もが関わるテーマだとも思います。
「作法」とは?
作法とは、「社会や文化、特定の状況で期待される行動や礼儀作法、事を行う際に適切とされる手続きや方法」を指します。
例えば、挨拶やお辞儀の仕方、食事のマナー、冠婚葬祭での振る舞い、武道における礼や姿勢などがその例です。これらは、状況に応じた適切な行動や振る舞いを通じて、人との関係や社会との調和を築くために欠かせないものです。
「マネジメントの作法」とは?
つまりこの記事における『マネジメントの作法』とは、「持っている力や資源を活かして、みんなが成果を上げやすい環境や仕組みを作るために必要な行動や考え方」を指します。
具体的な「マネジメントの作法」 5つのポイント
POINT1 目的・目標の設定と共有
目的(Why)と目標(What)は、明確で具体的であればあるほど、チームの行動に方向性を与え、モチベーションを高める効果があります。
目的:行動の意味や価値を明確にします。
→ 問い:「なぜこのプロジェクトを実行するのか?」
→ プロジェクトの意義や期待される成果をはっきりさせる。目標:目的を達成するための具体的な基準を示します。
→ 問い:「何を達成すれば成功といえるのか?」
→ 数値目標やKPIを設定し、進捗を測る基準を作る。
これらが曖昧だと、仕事が単なる作業になりがちです。その結果、プロジェクトの本来の価値や意図が見失われる可能性があります。
目的と目標を共有することで、チーム全員が同じ方向を向きやすくなります。メンバー間の行動が連携しやすくなり、曖昧なタスクも具体化されることで、チーム全体の集中力や効率が向上します。
POINT2 デッドラインを設定する
デッドライン(期限)を設定することで、タスクやプロジェクトが計画的に進み、停滞を防げます。期限があることで進捗が可視化され、チーム全体の優先順位も明確になります。定期的な進捗確認を行えば、問題を早めに発見して対処できるのも大きなメリットです。
デッドラインのメリット
進捗の可視化
「期限」があることで、タスクの進み具合が一目で分かります。優先順位の明確化
チーム全体で「どのタスクが重要か」を共有できるため、効率的に進められます。停滞の防止
期限がないと、タスクが後回しになりがちです。デッドラインを意識することで、ゴールに向けて計画的に進み、仕事の質とスピードを高められます。
明確で無理のないデッドラインを設定することは、シンプルながら非常に効果的です。確実に実践することで、チームの生産性を高める基盤となります。
POINT3 会議を機能させる
会議が機能しない主な原因は、目的が不明確であったり、過剰な参加者や無計画な議論にあります。この課題を改善するには、事前準備とフォローアップを徹底することが大切です。
まず、会議の開始前に「議題」と「この会議のゴール」を明確に設定します。これにより、議論を目的に沿って進めやすくなり、無駄な話題を減らすことができます。さらに、以下の工夫を取り入れることで、会議を価値ある場に進化させられます。
事前準備
議題や目標、参加者を明確にします。
必要な資料や情報を事前に共有しておきます。
議論の進行
各議題に制限時間を設け、効率的な時間配分を心がけます。
フォローアップ
会議後にアクションプランを具体化し、「誰が」「何を」「いつまでに」を明確にします。
ただし、会議は全員の時間を共有して使う行為です。そのため、情報共有だけであれば、Slackやメールで済ませるなど、会議を省略する選択肢も積極的に検討しましょう。会議の必要性を見極め、タイムマネジメントを意識することで、リソースをより有効に活用できます。
POINT4 柔軟にマネジメントスタイルを使い分ける
マネジメントのスタイルは一つに固定されるものではありません。チームやプロジェクトの状況、さらにはメンバーの特性に応じて、柔軟に変化させることが求められます。
例えば
形成段階のチームや新しい業務に取り組む場合
「指示型」のようなトップダウン型を採用します。リーダーが目標を明確に示し、具体的な指示を与えることで、チームの方向性を明確にし、行動をサポートします。経験豊富なチームや安定した業務を任せる場合
「支援型」のようなボトムアップ型マネジメントを取り入れ、自主性を尊重し、メンバー自身が最適な判断を下せるよう促します。
「トップダウンよりもボトムアップが理想的」というのはよく耳にすることがありますが、実際には状況によってアプローチを選択することが重要です。大切なのは、一つのスタイルに固執するのではなく、適切な方法を柔軟に選ぶことで、チーム全体のパフォーマンスを最大化することです。
また状況によってマネジメントには多面的な役割が求められます。
リーダーとして方向性を示す。
管理者として進捗を追う。
交渉者として調整を行う。
トラブル処理係として問題解決に取り組む。
これらの役割を状況に応じて使い分け、チームやプロジェクトに最適な形で対応する柔軟さが、効果的なマネジメントのポイントです。
POINT5 メタ認知を活用する
メタ認知とは、自分の思考や行動を客観的に捉える能力を指します。このスキルを磨くことで、感情に流された判断や見落としがちな選択肢を冷静に確認できるようになります。その結果、思考の深さと広さが増し、物事を構造的に整理しやすくなります。
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難しく聞こえるかもしれませんが、以下のような行動もメタ認知的な行為です。
振り返りの実施
プロジェクト終了後に「何がうまくいったか」「何を改善すべきか」を記録する。視点の切り替え
「上司ならどう考えるか」「他部門の視点ではどう映るか」を想像する。
これらの問いを繰り返すことで、自分の視点に欠けている要素や偏りを発見し、判断の質を向上させることができます。また、自分の役割を超えて組織全体の視点で考える力を養うことで、組織のカルチャーづくりや再現性を持った環境づくりにもつながります。
メタ認知を活用することで、単に個人の判断を改善するだけでなく、組織全体にとっても長期的なメリットをもたらします。冷静で客観的な視点を持つことは、より良い意思決定や創造的な問題解決の土台になると考えます。
まとめ
紹介したポイントは抽象度を上げると以下のようにも言い換えることができると思います。
目的・目標の設定と共有 =【方向性の明確化】
デッドラインの設定、会議を機能させる =【計画性と実行力】
柔軟にマネジメントスタイルを使い分ける=【適応力とリーダーシップ】
メタ認知を活用する =【意思決定の精度向上】
これらは、どの領域のマネジメントにも当てはまる、基本的で普遍的な原則です。しかし、多様な現場であらゆる状況に対応する具体的な手法を全て網羅するのは困難です。そのため、こういったどのような場面でも応用可能なシンプルで実践的な作法を持つことが重要だと思います。
また、マネジメントの役割は、自分が不在でもチームやプロジェクトがスムーズに進む仕組みを整えることにあります。それを実現するためにも、今回のような作法を地道に、意識的に取り組み続けることが欠かせません。
もし「忙しさに追われている」と感じることがあれば、ぜひ一度、今回の作法を振り返ってみてください。ヒントが見つかるかもしれません。
この記事が、少しでも読んだ方のお役に立てれば幸いです。最後までお読みいただき、ありがとうございました。