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問題解決あるあるコラム#37:未然防止は評価されない?

こんにちは。いちおか@問題解決サポーターKAIOS代表です。

問題解決あるあるコラム第37回のテーマは、「未然防止は評価されない?」です。ここ数回のコラムでFMEAについてお話をしてきました。FMEAの目的は「未然防止」です。問題が起きる前に対策を打ち問題を未然に防ぐ、という素晴らしい取り組みです。でも、それは本当に効果を発揮しているのでしょうか?


起きなかった未来はただの妄想?

FMEAは、潜在的なFailure=故障の「原因」「条件」「影響」を解析し、許容可能なレベルまでリスクを低減する取り組みです。「その時点で考え得る範囲」が、取り組みの対象です。そして、それはあくまでも「予測」の域を超えません。打った対策が本当に効果があったかどうかは、実際に故障が起きてみるまで分からないのです。つまり、故障が発生して初めて「ダメだった」ということがわかります。故障しなかったら、「きっと効果があったのだろう」としか言いようがありません。「効果があった」という証拠がないからです。「いや、故障してないじゃん」と言っても、「この後、故障するかもしれないじゃん」と言われてしまいます。想像したリスクは実際に起きなかった以上、ただの「妄想」だったのかもしれません。

成果は闇の中

未然防止は、それが成功したかどうかは予測でしか判断できません。実際の故障のように、件数をカウントできないからです。そうすると、お金や手間暇かけて取った対策が本当に効果があったのか、測りようがありません。ここが未然防止活動の評価の難しいところです。「僕は未然防止を10件やりました」と言っても、実際に故障が発生していないのでその効果を具体的には測れません。言えるのは、「現時点までは故障が起きていない」ということだけで、本当に効果があったかどうかは分からないのです。

警察は事後処理戦略

例えば、交通違反の検挙率を考えてみましょう。皆さんも今まで何度かは交通違反をして反則切符を切られたことがありますよね? そうしていつも思います、「違反する前に注意喚起してくれればいいのに」と。でも、違反する前だと「一時停止するつもりだった」とか「ちゃんと駐車場に停めるつもりだった」などの言い逃れを生む可能性もあります。仮に注意喚起したことで罰則金の支払いを命じられても、「未然」なので絶対拒否しますよね。なので、「現行犯」を捕まえることを検挙数=KPIとして交通法規遵守に対する啓蒙活動の効果を評価していると考えることが出来ます。

未然に防いじゃったらわからない

つまり、未然に防いでしまったら成果を測れなくなってしまうのです。効果があったのかなかったのか、数値化しにくい評価基準よりも、実際に発生した件数を数えた方がみんなが納得できるのです(反則切符に納得している人はほぼいないと思いますが、それはまた別の話ですね)。でも、少し考えたら未然に防いだ成果を評価できる方法、いくらでもあると思うんですけどね。とにもかくにも、未然防止はその取り組みの成果が「事実」と認定し難い、という点が評価を難しくしているのかも知れません。

人は事実しか受け入れない?

我々は、自分の失敗をいくら口頭で指摘されても、なかなか受け入れません。ありとあらゆる物や人のせいにして「責任回避」をしようとします。しかし、失敗に関連する「事実」を示されると、受け入れざるを得なくなります。基本、他人の「意見」は受け入れず、「事実」のみを受け入れます。しかし、自分にとって都合の悪い「事実」は例え「事実」であっても受け入れません。未然防止という「意見」も受け入れず、失敗という「事実」も受け入れず、いったい人間は何なら受け入れるのでしょう? まあ、自分に都合の良いものなら「意見」も「事実」も嬉々として受け入れると思いますが。

成果のみえる化が未然防止の価値を落としたのか?

品質を始め各種マネジメントシステムでは、その取り組みの有効性や効率を評価するために、数値化された監視指標の導入を要求しています。しかしこれが、数えやすい「事後検出指標」を生み、成果絶対主義と相まって「見えない成果」が置いてきぼりになってしまい、未然防止活動の優先度が下がってしまっている要因なのではないでしょうか? よく、「本当に仕事ができる人は、未然に問題を潰してしまっているので、側から見ると仕事をしていないように見える」といいますが、「本当に仕事をしていない人」との見分けは難しいのかもしれません。実は、仕事をしていない人は「仕事をしないことで、問題を作り出していない」という「未然防止」をしているのかもしれません。

まとめ

あれこれ書きましたが、結局のところ「問題が発生しない・させない」ことが、我々の目標です。「未然防止」はその評価が難しいですが、「再発防止」は過去の「事実」と比較ができるので評価が可能です。「未然防止」はなかなかの高等スキルですが、「再発防止」は自分たちの努力で達成できそうです。まずは、こちらに注力してみるのはどうでしょうか? 「再発防止」ができれば、現場はかなり楽になりますよね。

今回も最後までお読み頂きありがとうございました。
次回のテーマは「管理者が指標を現場に投げるからパフォーマンスが上がらない」です。
次回もお楽しみに!

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