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ファシリテーターおすすめ書籍 2024年版
こちらはアドベントカレンダー。ファシリテーター Advent Calendar 2024、Day14の記事になります
この記事を書いている人
はじめまして!この記事を読んでいただき、ありがとうございます。アドベントカレンダー経由で初めて私のことを知る方もいると思うので、少しだけ自己紹介させてください。
ワークショップデザインの考え方をベースに、学びのデザインや組織変革、あるいはチームづくりに取り組んでいます。
最近では、「場づくり」や「ファシリテーション」を生業にしている仲間と共に、Podcastも毎週配信しています。
そのPodcastでは、日々の活動から見つけた気づきや、場づくりを通じた挑戦について語っています。興味がある方は、こちらの記事で詳しく紹介しているので、ぜひご覧ください!
ファシリテーションに関連する本を紹介します
この記事は「ファシリテーター Advent Calendar 2024」の一環としてお届けするものです。私がファシリテーションに関する学びや仕事で参考にしてきた、影響力のある本を10冊ピックアップしました。どの本も、ファシリテーションを色んな角度で理解し、実際に役立った本の数々です。
各書籍の中から特に印象的だった部分を引用し、私がどんな学びを得たのかをシェアします。これを読んで、ぜひ次の読書リストの参考にしてみてください!
01:対話型ファシリテーションの手ほどき
相手が「◯◯の問題で困っている」などと語り始めたら、まず、「一番最近、誰がどのように困ってたか」を尋ねるべし。あるいは、「それを解決するためにどんな努力をこれまでしてきたか」を聞く。その目的は、「それは本当に解決すべき問題なのか」確かめるためでもある。・・・まだ誰も行動を起こしていない時点では、問題というより、願望に過ぎないと捉えたほうがよいとのこと。それによって誰かが何らかの苦しみや被害を蒙っており、さらには、、何とかしようと行動する当事者の存在があってこそ、問題は本当に問題として捉えられるということです。
【相手が願っていることを引き出す技術が学べる一冊】
ファシリテーションにおいて重要な「ヒアリング」の技術を具体的に教えてくれました。問題の本質を見極めるために、ただ「何が問題か」を聞くだけでは不十分で「誰が、どんな状況で困っているのか」や「事実質問」を掘り下げることで、初めて問題の核心が見えてくることを教えてくれた、私にとってインパクトのあった一冊です。
この本は118ページと薄いですが、内容は非常に濃密。私自身、ファシリテーションを学び始めた頃から何度も読み返し、今でも仲間におすすめしている一冊です。
02:人生のレールを外れる衝動のみつけかた
衝動は、偏愛を丁寧に解釈することで把握できることになります。つまり、特殊で細かな個人的欲望である「偏愛」をほどほどに一般化すれば、自分の「衝動」がどんなものなのかを言い当てることができるわけです。衝動とは、解きほぐされた偏愛にほかなりません。
【「衝動」を通じて主体性を引き出すヒントを得られる一冊】
「衝動」はファシリテーションにも深く関係しています。ファシリテーションの語源である「facilis(たやすい)」には「行動しやすくする」という意味があります。これを実現するには、相手が内側から湧き出る動機――つまり「衝動」を見つけ、活かすことが重要です。
ここで重要になるのが、相手が「主体的に動きたくなるきっかけ」を生み出すこと。その力を引き出すヒントになるのが、この本で語られている「衝動」の考え方です。「衝動」は、ただの感情ではなく、その人が本当に求めているものに根ざした動機の源泉。人は、自分の欲求が続く限り、それを軸に意外なほど発展し、学び続けることができます。
もちろん「衝動」だけですべての課題が解決するわけではありませんが、偏愛に耳を傾けることで、自然と持続的な行動が生まれる。この考えは、2024年に購入した本の中で一番読み返した一冊であり、私の中にある「衝動」を受け止めてくれた一冊でしたね。ぜひ多くの方に読んでほしい一冊。
03:人と組織の進化を加速させる システム・インスパイアード・リーダーシップ
あなたがその場の主催者であれば、参加者をにこやかに迎えて歓迎する雰囲気を作りますし、チームメンバーが問題を抱えていたならば、気軽に相談できるようにオープンな空気をまとまったリーダーとしていられるように、石をもってあり方を選択します。
メタスキルとはあなたの中に限定されるものではありません。その場の特徴や状況によって、その都度最適なメタスキルを選択していきます。
【「メタスキル」という考え方が場づくりを進化させるヒントに】
エイミーミンデルさんが提唱している「メタスキル」という考え方との出会いが、ファシリテーションスキルを大きく引き上げてくれました。メタスキルとは、単なる技術や知識ではなく、「意図的に創り出す態度や哲学、スタンス、ムード」のこと。例えば、参加者が安心して意見を述べられる雰囲気や、チームがリラックスして課題解決に取り組める空気感をどう作るか。それがメタスキルの役割です。
この考え方に触れてから、自分自身がその場に与える影響や「あり方」を以前より深く意識するようになりましたね。初学者と比較した時に、熟練したファシリテーターほど、この「意図的に場を創る力」に長けていてるなと。それを補うヒントとして、この書籍の後半にある「リーダーに役立つ120のメタスキル一覧」はとても参考になりました。私もこの一覧を何度も見返し、具体的な場面で参考にしています。
04:コンセプトの教科書――あたらしい価値のつくりかた
あらゆるコンセプトは究極的には「AがBするためにCの役割を担う」という文章構造で表現することが可能です。「顧客」と「目的」と「役割」の3点で意味を整理するので3点整理法と呼びます。
【場づくりを成功させる「コンセプト」の重要性に気づかせてくれる一冊】
よりよい場をつくるためには、当日の状況や空間、人々の反応を見ながら柔軟に判断していく必要があります。しかし、その判断をどのような軸に基づいて行うか。これがチーム内でずれていると、場に一体感を生むのは難しくなります。
そこで重要になるのが「コンセプト」です。この本は、場づくりやプロジェクト運営における「コンセプトの作り方」を、とても丁寧に解説してくれる一冊です。書籍では実際の事例も豊富に紹介されています。「このコンセプトだからこそ、価値が生まれる」というプロセスが具体的に描かれていて、実践に活かせるヒントが満載でした。タイムテーブルや資料の準備だけでなく、場の根幹を支える「コンセプト」をしっかり構築したい人にとって、強力なガイドとなる一冊です。
05:Co-Creation TOOL〜ツールで仕掛ける共創の場〜
これま での教育というのは、一人の人が 道具もなく、文脈を切り離して、 その人がどれだけの能力を発揮す るかということに着目してきまし たけど、僕は最初から能力という のは一人の個人の中にあるのでは なく「関係性の中にある」と考え ているんです。
【「ツール」で可能性を広げるファシリテーションを学べる一冊】
ファシリテーションの「上手さ」について考えるとき、ついその人自身の性格やキャラクター、経験、スキルに依存していると感じがちです。しかし、この本が伝えてくれるのは、ファシリテーションは「人」だけでなく、「ツール」によっても大きく可能性が広がるということを教えてくれます。
例えば、「私はマイクを持つと気持ちが高まる」ように、ファシリテーター自身のパフォーマンスを引き出すためのツールも存在します。また、それだけでなく、参加者が自分の可能性を発揮できるようサポートする「空間」や「ツール」について深く考えることも重要です。
この本では、具体的なツールの使い方やその可能性が多く紹介されています。「ツール」と聞くと堅苦しい印象を受けるかもしれませんが、ここでの「ツール」は単なる道具ではなく、共創を引き出すための「仕掛け」です。
正直、本当に人に教えたくない!そんな風に思ってしまうくらい大切にしている一冊です。実は、この第7章「学びとデザインの道具論」は無料で読むことができるので、気になった方はぜひリンク先をチェックしてみてください。
06:レトリックと人生
ここで大切なことは、議論というものについての概念ばかりではなく、実際の議論そのものも肉体の格闘についての知識と経験を基にして行われているということである。あなたがこれまでの人生で、戦争はおろかなぐり合いの喧嘩でさえ一度もしたことがないとしても、一人前に口が聞けるようなと仕事になってから繰り返し議論をし続けてきたのなら、やはり「議論は戦争である」というメタファーが、行ってきているものである。
【日常に潜む「メタファー」を意識することで、言葉と組織を見直す一冊】
私たちの日常の言葉に「メタファー」が深く根付いています。例えば、「戦略」「攻撃」「防御」「同盟」「ターゲット」といった言葉は、知らず知らずのうちに戦争をベースにしたメタファーを使っています。そして、こうした言葉が私たちの思考や行動にどれほど影響を与えているかを意識する機会は、実はあまり多くありません。
特にファシリテーションや場づくりにおいて、どんな言葉を使うかはとても重要です。例えば、「人を機械の一部のように『歯車』として扱う」メタファーを使うと、そのチームや組織のあり方そのものに影響を及ぼします。この本では、私たちが使う言葉がどのように「仲間」や「チームのあり方」を形作るかについて深く考えさせてくれました。
自分たちがどんな仲間とともにありたいのか。どんなチームや組織を目指しているのか。その答えを探す上で、この本は「自分たちがどんな言葉を使っているのか」に気づかせてくれる一冊です。
07:古びた未来をどう壊す?~世界を書き換える「ストーリー」のつくり方とつかい方~
僕がファシリテーションする場合は、参加者に次々にお題を出してテンポよく進行させ、以下の状況を作り出すようにしています。
◉全体の段取りを意識させない
◉ワークの意味や位置づけを考えさせない
◉より良いアイデアを求めて熟考する余裕を与えない
【未来を描き、逆算するファシリテーション手法に触れる一冊】
この引用だけを読むと、「何を言っているのか?」と感じるかもしれません。一見すると普段のファシリテーションとは全く違うアプローチです。しかし、この本は「SFプロトタイピング」という特異な手法に基づいており、その背景を知るとこの進め方の意図が見えてきます。
SFプロトタイピングとは、「課題が解決された未来像」を思い描き、その理想的な未来から逆算して「今、やるべきこと」を見つけ出す方法です。この手法では、従来の議論や分析型のアプローチではなく、未来の社会に没入することが重要視されます。そのため、参加者が日常の思考の枠組みを超えて自由に未来を描けるよう、ファシリテーターが意図的に段取りや意味づけを意識させない工夫がそこにあります。
この本では、こうした手法を活用する具体例が多く紹介されています。普段の場づくりとは異なる視点や進行方法が豊富に描かれているので、未来志向のワークショップをデザインしたい人にとって参考になる一冊です。
08:インプロ教育の探究ーインプロ教育の実践と理論
スポンタナエティとは「自然発生性」とか「自発性」などと役割れるもので、なんらかの表現が自然に表出してくるような状態を指す言葉である。・・・教育によって獲得されたスポンタナエティを抑圧するテクニックは、大きく三つある。「もっと頑張ろうとする(try harder)」、「計画する(planning)」、「言語的に思考する(verbal thinking)」である。
【「即興」の本質と、ファシリテーションに活かせる気づきを得られる一冊】
ファシリテーターは、その場の参加者一人ひとりの発言や表情、身体の動きから多くの情報を読み取り、それを即興的に活かして場をつくっています。しかし、「即興」を学ぼうとすると、逆に普段自分がしていること「頑張ろうとしすぎたり」「計画したり」「言語的に考えたり」といった行動が、自然な表現を抑え込んでいることに気づくことになります。
この本の中で語られる「スポンタナエティ(自発性)」の概念は、ファシリテーターにとって重要なヒントです。「もっと頑張らなければ」「完璧に計画しなければ」というプレッシャーを手放し、その瞬間の流れや感覚に身を委ねることで、私自身、場そのものが大きく変わる経験をしたことが何度もあります。この考え方は、即興演劇である「インプロ」の研究から得られたものです。
実は2024年、私自身も人生で初めてインプロショーに出演しました。この経験を通じて、即興の可能性を学びました。2025年も新しい挑戦を続けていきたいと思っています。興味がある方は、「IMPRO Machine / インプロマシーン」をぜひフォローしてみてください。
著者の一人である、堀さんはnoteで「インプロ」について詳しく書いていますので。こちらの記事も併せて読んでみるのもおすすめです。
この本は、即興というテーマを通じて、ファシリテーションや場づくりの可能性に触れることができる一冊です。「自分の抑圧しているもの」に気づき、それを手放すことで、より自然で効果的な場を創りたいと思う人におすすめです。
09:I型(内向型)さんのための100のスキル
現代は、どうしても積極的で「外交型」な人が目立つようにできています。学校でも、会社でも、物怖じせずに堂々と手を挙げられて、自分の言いたいことをハッキリと口にできる人が評価されるのではないでしょうか。一方で、静かで控えめな「内向型」の人は目立ちづらく、過小評価されやすい状況にあります。
【「内向型」の特性を理解し、場づくりをより豊かにするための一冊】
ファシリテーションや対話の場では、よく声を出して発言する人が目立ちがちです。一方で、あまり声を出さない人も、表情や身体の動きから豊かな情報を発してくれています。この本を読んで改めて感じたのは、「内向型」の人々が持つ特性を理解することが、場づくりの質を高める大きなヒントになるということです。
静かに考えを熟成させてから発言しようとしている姿や、しっかり話を聞こうとする真摯な姿勢は、決して「やる気がない」わけではありません。それどころか、その場を支える重要な存在であり知恵でもあります。この本では、「内向型」という特性を肯定的に捉え、それを活かすためのスキルや視点が具体的に紹介されています。「内向型」の特性を学ぶことは、「外交型」との違いを理解するだけでなく、誰もがその場で輝ける環境を作るための一歩になる一冊です。
また、書籍を出すにのノウハウも赤裸々に書いてくれています。気になった方はnoteも是非見てみてください。
10:プレイフル・シンキング[決定版] 働く人と場を楽しくする思考法
「Can I do it ?」から「How can I do it ?」へ、さらに「How can we do it ?」へと考え方をシフトしてみよう。そこでは誰もが「自分ひとりでなんとかしなくては」というプレッシャーから解放され、気持ちよく伸び伸びと課題に取り組めるのである。
【「できない」から「どうやったらできるか?」へのシフトを促す一冊】
2012年に初版を購入して以来、何度も読み返している一冊です。この本が教えてくれるのは、「人の能力は個人に限らない」という考え方。むしろ、知恵や力は集団的な場や生成的な場(Generative Social Field)にこそ宿るという視点です。この考え方は、年々重要性を増していると感じます。
私たちはつい、「自分ひとりでなんとかしなければ」と思いがちです。しかし、仲間やツール、さらには生成AIのような新しい技術も「自分の能力の一部」と捉えると、「できない」という壁にぶつかるのではなく、「どうやったら仲間と共にできるのか?」という視点へシフトできます。この視点こそが、この本が示す「プレイフル」の本質だと感じています。
この本と出会ってから10年以上が経ちますが、その間、私はこの考え方を活用しながら「人が本気になれる場」を探求し続けてきました。今では、職場やコミュニティを活性化するための『PLAYFUL LEADERS』という実践コミュニティを運営するまでになりました。『プレイフルシンキング』の考え方は、私の仕事や活動の根幹を支えるものであり、今もなお新しい発見を与えてくれています。
以上、10冊を紹介しました!これらの中には、すでにお持ちの本もあれば、はじめましての本もあったかもしれません。
ファシリテーションというテーマひとつ取っても、人によってイメージやアプローチは大きく異なります。それでも、今回ご紹介した本の中に、皆さんの日々の活動や考え方を少しでも広げたり深めたりするヒントが見つかれば幸いです。
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