【エグゼクティブの成功マインドを磨くCEOコーチング:シーズン1-8】未来へ誘う力 ‐ フィードフォワード(後編)
(1)なぜ、私は過去のことを覚えていないのか?
こんにちは。
エグゼクティブ専門コーチの久野和禎です。
前回お話ししたように、「フィードフォワード」は「これからどうしたいですか?」と聞けばいいわけですから、誰にでもできそうですよね?
実際、本当にそうなんです。簡単です。にもかかわらず、驚くほど劇的に仕事や人生によい効果をもたらしますので、ぜひ実践していただきたいと思っています。
もちろん、多少のテクニックは必要です。
技法については書籍『CEOコーチング』の第5章でも扱っていますし、「フィードフォワード」だけを扱った書籍『いつも結果を出す部下に育てるフィードフォワード』もあります。アマゾンのみで買える『「質問」だけですべてをプラスに変えていくフィードフォワード全技術』という「ガイドブック」も発刊していますので参考にしてみてだくさい。
実は、私は自分自身に対して一日中「フィードフォワード」しているため、よい意味で「未来」のことを思いつきすぎて、ついつい忙しくなってしまいます。
その反動もあってか、私は「過去」のことをあまり覚えていません。
毎月コーチングをする方の「前回」の話も覚えていないことがあります。「覚えていない」というと語弊がありますが、ようは「前はこういう話をしましたが、今日はどうですか?」という発想を、私はしません。
理由は単純で、前回お会いしてから1カ月、2カ月経っていれば、状況は変わっているはずだからです。状況が変わっているのに、私が同じ関わり方をすると、相手を「過去」に引き戻してしまいます。
その方が前に進むためにコーチングをしているのですから「過去」は重要ではありません。もちろん、「未来」に進むために「過去」の話を聞く必要がある場合にはじっくり聞きますが、基本的には、毎回はじめて会ったかのように接することを心がけています。
(2)スポーツ選手はいつも次の一手を考えている
仮に人間の身体に何十兆もの細胞があったとすると、私の場合、頭の先からつま先まですべてが「フィードフォワード」になっていて、全細胞が「未来」を見ている――。
もちろんこれはイメージの話ですが、もし、みなさんの体のすべての細胞が「未来」を向いていたらどうでしょうか。過去のことについてくよくよするのではなく、「未来に向けて一つひとつ集中していこう」と思うのではないでしょうか。
私の仕事の大半は経営者や組織のサポートになりますが、ご縁があって、スポーツ選手のサポートもしています。スポーツ選手こそ、過去の失敗に囚われても仕方がない職業の典型で、起きた結果に対して「次にどうするか」を考えるしかない方たちです。
たとえば、テニスのサーブが思い通りに決まるときもあれば、決まらないときもあります。いいところに打ち込めても相手が素早く動いて打ち返してくることもあるでしょう。それでも、瞬間瞬間で切り替えていくしかないのですが、それはまさに「フィードフォワード」です。
「フィードフォワード」は、長い時間軸で考えることもあれば、次の一球、次の一歩というように、短い時間軸でも実践できます。もし、すべての要素に対して「未来」を考えることができるなら、みなさんのアクションの結果もいまとは違ったものになるはずです。
(3)相手に問いかけると、自分にも問いかけることになる
私自身は、ほぼ100%に近い形で未来に向かってフィードフォワードしていますし、周囲にも同じくらい未来に向かってフィードフォワードしている方がいます。
では、どうしても「昔のことを考えることが多い」という人はどうすればよいのでしょうか。
その状態は改善のチャンスだと捉えてみると良いと思います。それだけ多くの機会、オポチュニティがあると考えればいいのです。
つまり、仮にもし今は30%程度しか未来を向いていないとしたら、残り70%も未来に向けられる余力=「伸びしろ」があることになります。この「伸びしろ」を引き出すのが、フィードフォワードの一連のコミュニケーションです。
ここで、一つ思うことがあるとすれば、誰かにフィードフォワードをしてもらうことで「未来思考」になれるとしたら、まずは誰かにフィードフォワードしてもらわないといけないのかな?という疑問かもしれません。実は誰かにフィードフォワードをするとその一部が自分に返ってくるという特徴があります。
その一例として、前回、部下が上司にフィードフォワードをしてみたら、上司が部下にフィードフォワードするようになったという話をご紹介しました。
なぜそうなるのでしょうか?
どうも人間の脳は何かを相手に問いかけると、自分自身に対しても同じことを問いかけるようにできているようです。「これからどうしたいですか?」という質問をした人は、相手の返答を待っている間、自分でも「自分はこれからどうしたいのかな」と考えることになる、というような例です。
たとえば、誰かに「お昼に何を食べたい?」と問いかけたとして、相手が考えている間に「自分は何を食べたいのかな」と考える。
「夏休みはどうするの?」と聞けば、「私は夏休みはどう過ごそうかな」と考える――。
つまり、相手に質問した内容が自分に返ってくるようになっているのです。
繰り返しになりますが、フィードフォワードは難しい技術ではありません。私の書籍をパラパラと読んでみただけでも実践可能です。
ぜひ「ちょっとやってみようかな」という軽い気持ちでスタートしてみていただきたいと思っています。
(4)「ピクサー」と「CEOコーチング」との共通点
最後に最近あったうれしい出来事を1つ紹介させてください。
20代のころに経営の勉強をはじめて、その後、実際に会社の経営をしてきた私にとって、大変尊敬しているジム・コリンズさんという方がいらっしゃいます。日本では「ビジョナリー・カンパニー」シリーズの著者として知られている方で、丹念に調査、研究したうえで1冊1冊の本を書かれているため、説得力があって、私の考え方の血肉にもなっています。
そのジム・コリンズさんが、『トイ・ストーリー』で知られる「ピクサー」について書かれた書籍『ピクサー流 創造するちから』(エイミー・ワラス/エド・キャットムル著)をおすすめしていました。
ピクサーは、スティーブ・ジョブズさんが関わった会社としても有名で、そのピクサーの組織文化、カルチャー、リーダーシップについて書かれた本です。
早速読んでみたところ……、なんと私が『CEOコーチング』の中で書いていることと、同じことが書かれていたのです。あのピクサーで実践されていることと同じことをやれているなら、私の「CEOコーチング」の体系は大丈夫だと背中を押してもらえたようで、うれしかったですね。
「CEOコーチング」の内容はどうも普遍的に企業の成功につながるのかもしれません。
今回も最後までお読みいただきありがとうございます。
また次回お会いできるのを楽しみにしています。
書籍『CEOコーチング』(ソフトカバー、kindle)
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