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シリーズ最高傑作!? 疱瘡神と江戸時代の呪いにまで迫る恐怖譚【劇場版「本当にあった呪いのビデオ100】
記念すべきシリーズ第100作目となる「本当にあった呪いのビデオ100」は、現代と江戸時代の歴史が交錯する恐怖譚を描く。
今回投稿者から寄せられた映像の中には、謎めいた神社や古びた御札、異様な儀式の様子が記録されており、調査班はそれが江戸時代に関係する呪いの儀式に端を発していることを突き止める。
その呪いは、江戸時代の天然痘(疱瘡)流行に伴い祀られた疱瘡神に深く結びついていることが次第に明らかに。現代においても呪いの影響は続いており、次々と起こる怪異が視聴者を震撼させていく。
界隈では「シリーズ最高傑作」と称される魅力
歴史的背景を絡めたリアリティ
江戸時代における天然痘と疱瘡神信仰という、実際の歴史に基づいたテーマに。過去の儀式や民間信仰がどのように恐怖と結びついていくのか、考察が広がる作品。
臨場感あふれる映像演出
本作では、投稿映像ならではのリアリティと、劇場版ならではのスケール感が融合。特に疱瘡神の存在を示唆する儀式のシーンは、シリーズファンからも高い評価。
伝承と現代のつながり
神迎えや神送りといった儀式の再現はもちろん、現代の登場人物が伝承に向き合う姿勢が興味を引いていく。「過去から学ぶべき教訓」というテーマが観客に深く視点を広げていく。
本作扱われる疱瘡神、神迎えと神送りに関連した呪いを整理
天然痘と疱瘡神
天然痘は江戸時代において最も恐れられた疫病の一つであり、疱瘡神はその災厄を鎮めるために信仰されました。疱瘡神は疫病をもたらすと同時に、それを封じる役割も持つとされ、神を祀ることで疫病が収束すると信じられていました。
神迎えと神送り
神迎えは神霊を人々のもとに呼び寄せる儀式で、神送りはその神を元の場所へ送り返す儀式です。本作では、これらの儀式が呪いの根源として描かれています。不完全な儀式や忘れ去られた信仰心が、疱瘡神の怒りを呼び起こしたという解釈が、作品全体を通じて示されています。
呪いの再解釈
本作は、伝統的な民間信仰と現代の恐怖の感覚を巧みに融合させています。疱瘡神が持つ「祟り」と「守護」の二面性が、呪いの正体に深みを与えています。
感想
最近再び流行ってきているモキュメンタリー式の作品だが内容は流石しっかり作られていた。
若い投稿者から送られてきた映像が10数年前に少年から投稿されてきた映像と同一であることに監督の中村氏が気づき取材が始まっていく。
問題の映像はママさんバレーの試合の映像の後からいきなり切り替わり、赤い背景と共に謎の神社や祭壇、奇妙なお面や火の玉、だるまなどが映る儀式的な映像。
今作で同じ映像を送ってきた若い投稿主はエアドロップからIphoneでキャッチしてしまい、それ以降その映像を観た人不特定多数に怪奇現象が起きていくという不気味な始まり。
中盤から民俗学の専門家に見せることでより客観性を深めていくのはよかった。問題とされていた映像は江戸時代から始まる疫病にかからないよう疱瘡神に祈願するために願いが込められた供え物が映像に映っていたという話になる。
疱瘡神はその災厄を鎮める信仰もあったが、同時に病をもたらすともされていた。そうした神迎えをした後は必ず一年の終わりに神送りの儀式もしなければならない。
しかし神迎えをするだけの儀式的な映像がビデオとして不特定多数に広まってしまったため疫病や怪奇現象をもたらす呪いの映像として解釈されていく。
スタッフの自宅まで降りかかる怪奇現象はわざとすぎて冷めるが、コロナが時期と被りスタッフや取材相手に降りかかっていくあたりはよかった。多分これを通してやりたかったんだろうが話運びは全体的に見ても上手かった。
後半からはそもそもその映像をなぜ意図的に作る必要があったのか十数年前の投稿主やその母、ママさんバレーの監督などの取材が始まっていく。
結局個人のいきすぎた念のがあの儀式に繋がっていたことも分かり、その続きに見える映像も最後に明かされるが普通に怖い。「赤いもの」が並んでいるのも信仰と個人の念がダブルミーニングで関連していたことが分かっていくのも気持ち悪い。
ネットもスマホも普及していない時代に、個人の強い念や信仰は凶行やVHSのテープに集約されることが多かったのもその時代の話を物語っている。現代で見るとそのギャップがノスタルジーより不気味さを思わせることの方が多かったのも思い出させる。
終盤は返送していた原本のビデオを再び取り戻すため空き家状態になった暗闇の持ち主の家で探索するが生々しい現象も起きる。それまでの複雑性のある物語が背景であるため変な話、作品としての説得力でもYouTuberとはまた違う。
最後は神送りを終えたことを踏まえて問題の映像が映像として明かされるが、平成が終わり現代ではどのような形として呪いが普遍に再現されるかもしっかり分かりやすく見せて終わっていく。
他では真似できない本シリーズの本領発揮具合が集大成で見えるいい作品だった。