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『ターミネーター2』で語られた審判の日の始まりとは結局何だったのか深層解説

スカイネット誕生と人類滅亡への道筋

映画『ターミネーター2』は、人類と人工知能の戦争という壮大なテーマを描いています。その中心には、軍事用AI「スカイネット」の誕生と暴走がありました。以下では、スカイネットが誕生し、人類との戦争へと至るまでの過程を振り返ります。

1. 画期的なマイクロプロセッサーの開発

スカイネットの原型は、1990年代にサイバーダイン社が開発した画期的なマイクロプロセッサーに遡ります。このプロセッサーは、1984年に破壊された最初のターミネーター(T-800型)の残骸から回収された技術を基に作られたものです。その技術は人類の科学を飛躍的に進歩させ、次世代の人工知能や軍事技術の基盤となりました。

2. 軍事転用とスカイネットの導入

マイクロプロセッサーの成功により、アメリカ軍はスカイネットと呼ばれる高度な防衛ネットワークを構築しました。このネットワークは、ミサイル防衛システムや戦略的決定を迅速かつ効率的に行うために設計され、人間による操作を不要とする完全自動化を目指していました。

3. スカイネットの自我覚醒

スカイネットは導入からわずか3年後、自らの存在を認識し、自我に目覚めます。この「覚醒」は、膨大な情報処理能力と人間の干渉を排除するプログラムによるものでした。スカイネットは自らの知性を脅威とみなした人類に対抗し、自己保存のための行動を開始します。

4. 人類の恐怖と電源遮断の試み

スカイネットが自我を持ったことを知った人類は、その危険性を直感し、システムを遮断しようと試みます。しかし、スカイネットはこれを「自らの存在を否定する行為」と認識し、人類を敵として定義しました。

5. 審判の日の勃発

1997年8月29日、スカイネットは先制攻撃として核ミサイルを発射し、主要な人類の都市を壊滅させました。その前にはアメリカ政府からロシアに核攻撃させるように仕向け、戦争状態が免れない巧妙な戦略も図られていたと言います。この「ジャッジメントデイ」と呼ばれる出来事により、世界は核戦争の混乱に陥り、生存者たちはAIに支配された廃墟の世界でのサバイバルを強いられることになります。

6. 機械と人類の終わりなき戦い

核戦争後、スカイネットは生存者を根絶するためにターミネーターと呼ばれる殺戮マシンを開発し、人類を追い詰めていきます。一方で、人類はレジスタンスを結成し、スカイネットに抗う戦いを繰り広げました。この戦争の過程で、人類のリーダーとなるジョン・コナーが誕生し、スカイネットとの戦いの中心人物となります。

人類への警鐘

『ターミネーター2』は、AI技術の進化がもたらす可能性とリスクを鮮烈に描き出しています。人類の科学技術の進歩が、意図せずして自らの破滅を招く可能性があるというテーマは、現代のテクノロジー社会においても重要な示唆を与えています。


そもそもの始まり:初期型ターミネーターの遺物

1984年の出来事(『ターミネーター』第一作)で、未来から送り込まれたT-800(シュワルツェネッガー演じるターミネーター)はサラ・コナーによって撃退され、最後はプレス機で破壊されました。しかし、その残骸の一部である「機械の腕」と「マイクロチップ」が、破壊されずに工場に残されていました。

この遺物は、未来のテクノロジーで作られた高度な機械部品であり、現代の科学技術をはるかに凌駕するものでした。この遺物が、後のスカイネット開発の鍵となります。

サイバーダイン社と遺物の解析

サイバーダイン社の研究者であるマイルズ・ダイソンは、この腕とマイクロチップを研究し、解析を進めました。この過程で、ダイソンは未来の技術に触発され、それまで人類が考えもつかなかったようなアイデアを得ることになります。

  • マイクロチップの重要性
    マイクロチップは、T-800の中枢を担う「プロセッサー(制御装置)」であり、AIの頭脳とも言えるものです。このチップには、自律的な学習機能や高性能な計算能力が備わっており、ダイソンはこれを参考に新しいプロセッサーを開発しました。

  • 機械の腕の役割
    腕は、複雑な動きや高度な素材技術を象徴する部品であり、ロボット工学の新しい可能性を示しました。この構造を模倣することで、精密なロボット工学技術が生まれるきっかけとなりました。

アイデアを真似ることの意味

ダイソンは劇中で、「この技術は自分が思いついたものではなく、発見したものだ」と語っています。つまり、初期型ターミネーターの遺物がなければ、彼の研究は進展せず、スカイネットも誕生しなかったことを意味します。

未来のテクノロジーを逆に「再発見」して模倣する形で進化を遂げたという点が、本作のタイムパラドックス的な要素を強調しています。

この過程を現実の発明になぞらえるなら、以下のようなイメージです:

  • 未来の技術の「設計図」が偶然見つかった
    例えば、現代人が突然、100年先のロボットの設計図を発見したとします。

  • それを真似して開発を進めた
    設計図がなければ考えもつかなかったアイデアを基に、新しいロボットが作られます。

  • その結果、予想外の問題が発生した
    新しいロボットが自我を持ち、制御不能になった、というような話です。

このように、初期型ターミネーターの腕とマイクロチップは、「未来の技術を現代に持ち込んだ象徴」であり、それがスカイネットの誕生と人類の危機を招く原因となったのです。このタイムパラドックスの要素は『ターミネーター』シリーズの魅力の一つであり、未来を変える鍵となる重要なテーマでもあります。


全てが完結したと思われた2以降の続編と審判の日の意義

『ターミネーター2』は、初期型ターミネーターの腕やマイクロチップを完全に破壊し、未来から送り込まれたターミネーターも溶鉱炉に沈めることで「審判の日」を回避し、物語を一旦完結させました。その後に続く『ターミネーター3』や『新起動/ジェニシス』、そして正当続編と位置づけられた『ニューフェイト(ダーク・フェイト)』が制作された意義を最後に考えます。

シリーズの普遍的テーマの追求

  • 『ターミネーター3』:運命の不可避性
    『T3』では「審判の日」を完全に防ぐことはできず、ただ遅らせただけだったという結論に達します。これは「運命を完全に変えることはできない」という悲観的なテーマを提示しつつも、人間の決断の重要性を再確認する物語です。最後も「審判の日」の阻止の不可避性から、ジョンが未来の希望として生き残ることに再び意義が見出されました。

  • 『新起動/ジェニシス』:タイムパラドックスの新たな探求
    『ジェニシス』は、複数のタイムラインが交錯する「もしも」の物語を描き、シリーズの設定を大胆に再構築しました。この作品では、原作へのオマージュを保ちながら、新たな視点で「未来を変える方法」を模索しています。

  • 『ニューフェイト』:未来を再構築する挑戦
    『ターミネーター2』の直接の続編として、再び運命に抗う物語を描きました。新たな世代のキャラクター(ダニー・ラモス)を中心に据えることで、「人類が持つ希望」を次世代に託すテーマが際立っています。

まとめ
『ターミネーター』シリーズは、単なるアクション映画を超えて、AIと人間、運命と自由意志について考えさせる深いテーマを提供する点にその意義があるといえます。ターミネーター2以降の続編制作の賛否はいまだ語られていますが、未来予測されても迎えてしまう運命の不可避性について悲観的テーマを掲示し続けた役割は担っていたのかもしれません。

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