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綺麗なシーザー編完結だったが、続編に求められる「共生」の落とし所【映画「猿の惑星:聖戦記(グレート・ウォー)」】

「猿の惑星 聖戦記(War for the Planet of the Apes)」は、リブート三部作の完結編として、エイプと人間の最終的な戦いを描く。


あらすじ
猿と人類による全面戦争が開始されてから2年、猿の群れのリーダー・シーザーは奇襲によって妻子を殺されてしまう。彼は限られた仲間と共に復讐を決意。道中で新たな仲間を加えながら、冷酷非道な敵の大佐のもとを目指す。

ここまでのリブートシリーズのおさらい

1. 創世記(Rise of the Planet of the Apes)

「創世記」では、アルツハイマー病の治療薬として開発されたウイルスALZ-112が、人間には致命的な影響を与える一方で、エイプには知能向上の効果をもたらす。研究所で育ったチンパンジーのシーザーは、知能の向上により自身の置かれた立場に疑問を抱き、人間社会に反旗を翻すリーダーとして他のエイプたちとともに逃亡を図る。エイプたちが独自のコミュニティを築く一方、人間社会ではウイルス感染が広がり、大量の死者を生み出すパンデミックが発生。

2. 新世紀(Dawn of the Planet of the Apes)

「新世紀」では、ウイルスによって荒廃した世界で、生き残った人間と知能を持つエイプたちがそれぞれの社会を構築。シーザー率いるエイプたちは、平和共存を望むものの、カーバーなど一部の人間や、エイプ内部の不和分子であるコバが対立を引き起こす。最終的に、シーザーはエイプたちのリーダーとしてコバと対決し、平和共存への道を模索するが、コバの反乱により人間とエイプの関係はさらに悪化していくのだった。

3. 聖戦記(War for the Planet of the Apes)

「聖戦記」では、シーザーが指導するエイプのコミュニティは、過激な人間軍事勢力である大佐の部隊に襲撃され、さらなる戦争へと追い込まれる。シーザーは家族を殺された復讐心から大佐を追跡し、ついには人間とエイプとの決着をつけるために戦う決意を固めた。しかし、シーザーは敵意に囚われず、リーダーとしてエイプたちを守りながらも、人間とエイプの未来に望みを託す姿勢を保つ。最終的に、シーザーの犠牲的な行動により、エイプたちは新たな故郷を見つけ、彼らの新しい時代が始まる。

人間とエイプの争いの過程

物語全体を通して、エイプと人間の対立は、ウイルス感染や恐怖、誤解によって深まりましたが、特にエイプ内部の不和や人間社会の生存本能も関係している。シーザーは平和を求めるが、コバや人間側の過激派が戦争の原因を作り出し、結局はエイプと人間の分断を避けられない運命へと進んだ。この三部作を通して、共存と戦争、そして復讐と寛容といったテーマが重層的に描かれている。

感想

人間の叡智によって自然に抗う新たな世界が構築されていくも、実験台にされていたエイプからの反乱から、人間はどんどん自然世界から反動を浴びて追い込まれるシリーズにもなった。

新世紀からの疫病世界がさらに人々の生き方を変える決め手になり、エイプを通じての科学から排除された自然との共存を新たに考えなければいけない話になっていくのも今見ると未来予言に近いシナリオである。

シリーズを通して知能を持ったエイプという自然世界から人間はどこまで異様な存在になっていくのかが徹底して描かれなおされていたのが個人的にも評価したいシリーズ。

人間は関係ない誰かが改編した世界による悲劇から自然に対して共存ではなく復讐心にかられ、エイプ自身も同じような道を歩まざる得なくなっていく。

マクロで見ればエイプ対人間の対立構造だけに固まっているが、個人視点で見れば元々共存の努力を望んでいた者も多くいたという虚しさ。リーダーの示す方向が変わるたびに個人の思想は除かれて服従に変わり、扇動的に対立の歴史が紡がれてしまうのも大切な話だった。

聖戦記では最終的にシーザーは亡くなりエイプと人間は再び分断の道に終着して幕を閉じた。形としてはモヤモヤも残る終わりに思うが、互いの復讐心がピークまでいった彼らの争いを落ち着かせるにはあの形が彼らの平和を紡ぐための落としどころとなる。

今年公開された続編キングダムはまだ見ていないが、あらすじでは300年後の地球で人間は言語も話せなくなるような退化した未来になりエイプのリーダーも大きく変わるという。

叡智を身につけた人間の愚かさの終局を描いたシーザー編から、いよいよ猿の惑星化した世界で自然側から人間との共存テーマに関してどう「落としどころ」をつけるかという話が求められる。自然の脅威から力を再び奪われた未来という設定も中々興味深い。

勝手に共存ではなく「落しどころ」として見ているのは、こういった話で互いに満場一致ですべてを納得する結論は不可能だとされるからだ。不満点もあるが「まだまし」なところを探っていく話を掲示される方が現代から未来においての自然への共生を考えるうえでも現実的な解釈になると思っている。

評価を聞いている限り不評も相次いでいるみたいだが、ここにきて風呂敷を広げたからには新たな「落とし所」を見せるシリーズになってほしい。







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