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毎日アガる、お手頃ワインができちゃいました
輸入コストの高騰でピンチ!
「これからは海外でワインを造り、日本に輸入して売りまくるぞ!」
そんな野望を抱いて起業し、かれこれ3年が経ちました。
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無事にワインは完成し、みなさまのお手元に届けることができました。
今後リリース予定の商品も、スタンバイしています。
しかし、経営のトーシロには思いもつかない事態が起きました。
止まらない円安と、原材料や資材、輸送費といったコストの高騰です。
ワインボトルを取っても、2022年の時点で欧州では25〜50%もの値上げ。
これはロシアのウクライナ侵攻によって、製造時に必要な天然ガスのコストが爆上がりしたという背景があります。
ワインボトルは、ガラスを高温で融解・成型して作られます。
特に、ロゼワインやオレンジワインに好んで使われる透明ボトルを作るには、より高温での作業が必要となり、2倍の製造コストがかかるそうです。
これらの要因から、近年の輸入ワインはめっきり高くなりました。
同じカテゴリのKAZU WINEも、価格高騰のあおりを食らってしまったのです。
自分の願いは、1人でも多くのお客様にKAZU WINEを飲んでいただくことです。
原価が高くなったことを言い訳に、クオリティに見合わない値付けをしようとは思いません。
納得感のあるプライスでお出しするには、利幅を削る以外に方法はありませんでした。
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それでも、わたしが5年前まで造っていた日本ワインをご存じのお客様からすれば、いまのKAZU WINEは割高に感じられることでしょう。
「海外で、もっと安くワインを造る方法はないんかッ!」
吠えずにはいられませんでした。
「箱ワイン」に秘められた可能性
ここで登場するのが、毎度おなじみのワインメイカー、アレックスです。
「おい、スペインのダチが自分のワイナリーでBIBを作ってるんだ。興味ないか?」
「マジかよ、つないでくれ!」と即レスしました。
BIBというのは、漫才コンビではなく「バッグ・イン・ボックス」の略。
プラスチック製のバッグに注ぎ口を付け、紙製のボックスに収めた液体容器です。
これにワインを注入したものが、日本では箱ワイン、ボックスワインなどと呼ばれて大型スーパーでも流通しています。
通常のボトルワインの容量は750mlですが、BIBの主流は4倍の3リットル。
瓶とは違い、製造の過程でコストを抑えられるのが販売側のメリットです。
ユーザーのメリットとしては、大容量のワインを格安で買えるコスパの高さ。
また構造的に酸化しづらく、開栓後は瓶よりも鮮度をキープできます。
いいこと尽くめのようですが、ソムリエとして現場に立っていたひと昔前までは、BIBといえば激マズワインの代名詞でした。
一般的なボトルワインよりも質の低い原料を使い、添加物もたっぷりの粗悪な商品ばかりだったのです。
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こんなワインを好んで買うのは、質を問わずに1円でも安く仕入れたい飲食店か、一線を越えてしまった酒呑みぐらいしか考えられませんでした。
ところが以降、流れが変わります。
ちゃんと上質な原料を使った商品が増えてきたのです。
また、ナチュラル志向の造り手たちがBIBを製造しはじめ、クオリティの高い商品が市中に出回るようになりました。
そして世界的なパンデミックの到来を機に、BIBはおうち時間の消費用として需要を伸ばします。
日本も例外ではなく、キャンプブームの折には、BIBや箱なしのバッグワインがバカ売れしたと聞いています。
スペインでケタ外れのワイン造りを体験
さて、話は2022年の9月に戻ります。
スペイン北部のカタルーニャ地方でぶどうの収穫と仕込みを行っていた自分は、相棒のアレックスと一緒に中部のラ・マンチャへと移動しました。
現地に着いて案内されたのは、ボデガス・ドン・ファドリケ(Bodegas Don Fadrique)というワイナリーです。
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見たこともない巨大なタンクや、ぶどうの絞りかすの山があちらこちらに積まれ、のっけからスケールの違いに圧倒されました。
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大型トラックに満タンのぶどうは、荷台から圧搾機に直でブチ込まれます。
ここはゴミ処理場か!?と見紛う、豪快すぎる光景でした。
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それもそのはず、ラ・マンチャはスペインで生産されるワインの6割を占める、国内最大の生産地なのだそうです。
この施設の一角を間借りし、BIB用のワインを3泊4日かけて仕込みました。
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設備が充実した工業ワイナリーなので、イージーな造り方をしたのではと思われるかもしれません。
しかし、原料は吟味されたオーガニックぶどうを使用し、通常となんら変わらぬ工程で仕上げています。
毎日が待ち遠しくなるワイン
そして待つこと、1年半……。
ついに完成品「KAZU MAX」が到着しました!
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KAZU MAX WHITE 2022(ホワイト)
アルコール分11.5% 品種:アイレン100%
KAZU MAX ROSÉ 2022(ロゼ)
アルコール分10.3% 品種:アイレン70%、テンプラニーリョ30%
KAZU MAX RED 2022(レッド)
アルコール分10.7% 品種:テンプラニーリョ100%
希望小売価格:各8,800円(税込)
輸入販売元:ウミネコ醸造株式会社
今回はスペインの地ぶどうを使い、白・ロゼ・赤の3種類をご用意しました。
しっかりしたアロマと果実味が感じられながらも、アルコール度数を抑え、クリーンで飽きのこない味わいに仕上げています。
容量は3リットルで、750mlのボトル4本分の大容量。
毎日1杯、100ccずつ飲んだとしても、ひと月は楽しめる計算です。
手前味噌ですが、デイリーワインとしてはちょっと贅沢な出来映えかもしれません。
KAZU MAXは、ボトルのKAZU WINEと同レベルのオーガニックぶどうを使い、手間と時間をかけて丁寧に造っています。
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つまり容器が違うだけで、クオリティはほぼ一緒。
そこらのブラックフライデー、ぶっちぎりのおトク値じゃないでしょうか?
お客様にBIBを見せられない理由
さて、ここで問題提起です。
BIBを使っている飲食店は少なくありませんが、つねづね、その扱われ方に疑問を感じます。
みなさんも、こういう経験はないでしょうか?
はじめて入ったお店でワインを頼もうとしたら、メニューには「グラスワイン」「カラフェワイン」としか書かれていません。
それをオーダーすると、店員さんが見えない場所でワインを注いで持ってきました。
「なんのワインですか?」と聞くと「フランスのメルローです……」とか、ごにょっとした説明しか返ってきません。
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わたくしも接客業が長かったので、店員さんの気持ちはよくわかります。
ダンボールからワインを注ぐところなど、カッコ悪くてお客様には見せたくありません。
「えっ、ボトルじゃないの!?」
もしお客様の目に触れたら、そう思われても仕方ないでしょう。
「BIB=安物ワイン」という認識は、クオリティが上がったいまも、世の中的にはまだ主流だからです。
しかしながら、こういう場面で誰よりもテンション激落ち君なのは、私たちのような造り手だと思います。
なぜなら、見た目はただのダンボールでも、中身はハードな肉体労働を通じて、仲間たちと精魂を込めて造り上げた、大切なワインだからです。
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それを密造酒じゃあるまいし、コソコソと出してロクな説明もされなかった日には、醸造家としてのプライドはズッタズタです。
「デコ文化」をワインの世界へ
とはいえ、見てくれがダンボールでは、特別感もへったくれもありません。
お客様に出しづらいのはわかります。
だったら、見た目が映えればいいんじゃね?
そう、思いつきました。
実際、カラフルで凝ったデザインのBIBは存在します。
しかしながら、販売コストを下げるためにBIBを造ったのに、デザインや印刷にお金をかけるのは本末転倒です。
そこで、違う方法を考えてみました。
KAZU MAXを購入すると、このようなマルチステッカーが付属します。
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これらはナチュラルワイン好きなら、国籍を問わずでグッときちゃうスローガンだったり、わたしの写真を使ったおふざけコラージュだったりと、KAZU WINEのラベルと同じテイストのデザインになっています。
このステッカーを外箱のダンボールに貼り、映えるようにカスタマイズしていただきたいのです。
やり方はもう、完全に自由です!
付属のステッカー以外のものを貼ってもいいですし、ダンボールに蛍光ペンで落書きしちゃってもOK。
図工が苦手な方は、いっそ周りにお願いしてみたら、隠れた才能を発揮するスタッフがいるかもしれません。
平成の「デコ文化」に慣れ親しんだ元ギャルなら、こんなのお手のものでしょう。
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お客様から「それ、なんですか!?」と聞かれるぐらいに目立てば、勝ったも同然です。
堂々と見せながら目の前で注ぎ、ほかのワインと同じように説明をお願いします。
KAZU MAXをきっかけに、お客様のBIBへの認識を変えていきたいと、本気で願っています。
もちろんお店用ではなく、宅飲み用のお客様もガンガンにデコってください。
毎回注ぐたびに、気分がアガるのは間違いありません。
KAZU MAXは、これからのムッシムシした季節を吹き飛ばす、爽快なデイリーワインです。
箱がデカいのが難ですが、保管は冷蔵でお願いいたします!
真に持続的なワインメイキングのために
長くなりましたが、最後にひとつ言わせてください。
今回の取り組みを通じて、ワインボトルの製造や輸送には、膨大なエネルギーコストやCO2の排出によって、環境に相当な負荷がかかっていることを知りました。
わたくしもこれまでの活動で、耕作放棄地の復活だの、サステナブルなワイン造りだのと一丁前なことをメディアで語ってきました。
しかし結局のところ、自分の目の届く範囲内でしか、環境に配慮できていなかったことに気付かされました。
至極、反省の至りです。
調べたところ、自分よりはるかに若いワインメイカーたちは、この問題にもっと意識的に取り組んでいます。
昨年末、日本にも輸入されて話題になったゴンゾ・ヴィーノ(Gonzo Vino)というオーストラリアの造り手は、ボトルの製造は行わず、BIB、缶、生樽のみで勝負しています。
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また、Djuice(ディージュース)というスウェーデンのブランドは、缶ワインに特化して展開しています。
試供品をいただきましたが、ナチュラルな造りでおいしかったです。
若きパイオニアたちを見習い、これからは真に持続的なワインメイキングを日々考え、実践していく所存です。
どうぞ、ご支援のほどよろしくお願い申し上げます!
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