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分析・廃棄物処理とデータ解析② 分析結果から誤差要因の一般化を目指す

こんにちはかず波です。

先日あげた記事に後日談がありました
続きとしてお読みください(__)

後日談

実は、今回の測定時に室内空調が不調だったことが判明し、測定中に室温が規定(25℃)を大きく上回っていた事がわかりました。

そこで、影響を受けると考えられたMS(質量検出器)の物質ごとの感度とz値の関係をみたところ、

物質のMS感度とz値の関係

MS感度の大きい物質ほどz値(外れ度合い)が大きい傾向にある事がわかりました

さらに、先に用いた物質ごとの物性値とMS感度で重回帰分析を実施したところ、先のz値と同じ物性値を用いて高精度に回帰できました。

つまりMS感度もz値と同様、「物質の気中への逃げやすさ」指標で説明可能なことがわかりました。

モデル化

この要因については、z値ーMS感度の関係線で、横軸のMS感度を物質の蒸気圧、縦軸の誤差を示すz値をMS系内の物質吸着量とみたてた時の単分子吸着線にモデル化できる(※)と考えられました。

(※)物質の種類による吸着特性(ラングミュア式に従う)は同じとして、多変量で近似された蒸気圧を、温度一定下でのその変化とみたてたものなので、モデルからの乖離はありますが、ある程度説明できるものと考えました。

つまり、測定中の温度変化(温度上昇)によって、インターフェースを含むMS系内の物質ごとの吸脱着状態が変化して、「物質の気中への逃げやすさ」が大きいものは小さなものより脱着し易く、より高濃度に系内に存在するなどしてz値へ影響したと推測されました。

実証

後日、実証実験として検量線作成後、空調を切り、室内温度が増加する環境下で測定を行いました。

測定には、内部標準としてフルオロベンゼンを用い、その強度との比から各物質濃度を算出します。
また、この物質のMS感度を他の物質と同様に物性値から算出しておきます。

下表に結果を示します。
内標準物質よりもMS感度の小さい物質は温度上昇で測定濃度が低くなり、高い物質(ベンゼン)は高くなることがわかりました。

以上から「物質の気中への逃げやすさ」指標で、今回のVOC分析誤差を説明する事ができました。

空調有り無しの標準検出濃度の違い

まとめ

「物質の気中への逃げやすさ」の性質により、
① 標準試料調製工程
② MS測定感度
の複数の工程に影響を与えることがわかりました。

これは、分析に限らず同様な機構で生ずる資源化プロセス(蒸留など)においても、適切な制御パラメタの設定等に応用できるものと考えられます。

つまり、現象をより基本的な性質で説明(一般化)するほど、広範囲な対象への適用可能性が高まります。

今回のケースでは、「物質の気中への逃げやすさ」で一般化した指標が、分析条件へ特殊化できる事、つまり、「物質の気中への逃げやすさ」という一般的な現象が影響するもののひとつとして、VOC分析がありますよ と示されたのだと思います。

分析を通して、問題に対して最も適切な一般的な自然界のルールを発見、特殊化した具体的対策を講じることで解決を図っていきたいと考えています。

長文になりましたが、おつき合いいただきありがとうございました!



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