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あの人も……

ええ!そうでしたよ。
 あの人も。
作家なんて、そんなもんです。
 大した稼ぎも無いのに、見栄っ張りで。女に弱くてね、私も苦労しましたよ。
ナルシストを自慢して…すぐに泣いてしまうんです。
 そうするとね、女は決まって

 「私が居ないと駄目になる。」
なんて母性出してしまうもの。
そこをあの人たちは利用するんですよ。甘えた小声で
「君がいないとこの本は完成しやしないさ、だってボクの体の一部はもう君なんだからね。君が他の男とどうこうなると、ボクは苦しさと痛さでどうにも狂いそうになるんだ。」
なんて、歯の浮くような嘘を真顔でいうのです。
まぁ、当人がそのことを嘘と自覚してるかどうかは知りませんがね。
結果的に己の体は幾つあるのか?わからないくらいおもてになっていらっしゃいましょうよ?
そしてまた
「僕は駄目な男だ。」と、新しい若い女の金で買った酒を飲みながらその女の腰にすがりついてさめざめ泣くのです。
えぇ、その姿を私は何度も何度も呆れて、その女達を哀れに思うのです。
一時の快楽と優越感を瑞々しい身体と時を引き換えにあの人は何を与えたのでしょう。
そう、何も与えず、貪るのです。然し女たちは自ら輝き、強さと自信を獲るのです。
あの人に愛され、あの人の作品の一部になると納得させられる。
それが事実かとうか?
それ程重要でしょうか?あの人の作品が真実を物語ってると言う事にして上げてくださいな。えぇ、ロマンチストなのですよ。私は……。

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