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はたらくことで、自分を知る。

社会人になる前の私には、中身がなかった。やりたいことが皆無だったのだ。本当に空っぽというか、のっぺらぼうというか、自分ですら自分がわからなかった。

そんな私ももうすぐ社会人9年目。一丁前に学生の面接をする機会が増えてきた。その中で、「働きがい」や「仕事のやりがい」について聞かれることも少なくない。業務に沿った内容で具体的に回答をしているが、何もなかった頃からしたら考えられないような話である。

そこで今日は、何もなかった私が「はたらく」こととどう向き合ってきたのか、どんなプロセスを経て今にいたるのかを述べていきたい。やりたいことや働きがいに悩んでいる学生や社会人には、ぜひ参考にしていただきたい。

空っぽだったかつての私

空っぽだった私にも、就活の軸はあった。1つは自分の力で生きていける人間になること。もう1つは多くの中小企業をITのソリューションを通して救うこと。なんとなくそれっぽいことを言っているが、個性はないし、心からそう思っていたかはわからない。

つまり、私は半端な信念で社会人になっていった。

その結果、新卒のまあまあ早い段階で、一度挫折することになる。会社にいくのが嫌になって、本気でやめようと思った。ただしそれすらも中途半端な気持ちだったので、結局会社に復帰する。若い頃はそんなことを繰り返した。悪い意味でニュートラルに生きていて、ときどき半クラッチで前に進んでいる。そんな状態だったと思う。

誤解のないようにお伝えすると、そもそも仕事自体は頑張っているつもりだった。先輩のやりかたを完コピしたり、本を読んで勉強したり、資料にまとめたり、自分なりには努力をしていた。ただ、前に進んでいる感じがしなかったのと、どこにハンドルを切ったら良いのかわからなかったのだ。だから、どんどん先に行く周りと比べて、焦って、エンストを起こしていた。

そんな私も、だんだんとできることが増えていき、結果も出るようになっていった。そうすると仕事も楽しくなっていき、なんとなく働きがいを見出すことができるようになった。2年目の後半の話である。なんとなく道が見えてきた気がした。

何もなかった自分に、ようやく少しだけ中身が注がれていった気がした。

できることとやりたいこと

仕事は楽しくなってはきたが、本当にやりたいことはまだわからなかった。できることが増え、結果がでるのは嬉しいけれど、人生をかけられるか、というとちょっと違う。

とはいえ仕事に不満はなかったので、とにかく目の前のことを必死に頑張っていった。そうやって仕事に打ち込んでいくことで、充実感を感じることができた。何より、余計なことを考える必要がなかったので楽だった。

一見、思考停止のように聞こえるかもしれないけれど、結局仕事は「決めて、やる」だけだ。それ以外は、無駄な思考エネルギーを使わない方が、パフォーマンスを発揮できる。だからこの時の自分は成長率も高かったし、自分が変わっていくのが実感できた。

そんな生活を続けていると、少しずつやりたいことが見えてくる。壮大な夢やビジョンはないけれど、なんとなく、こういう仕事をしたいとか、こんな働き方をしたいとかが見えてきた。例えばこうやって文章を書くこととか、人を笑わせることとか。「できる」だけではなく、「自分はこれがやりたい」と自信を持って言えるようになった

できることから派生して、少しずつやりたいことが見えてきて、ようやく自分の中身が形作られていった気がした。

「はたらく」ことで、自分を知る

かなりライトに書いてきたが、やりたいことが見えるまでには様々な葛藤があった。

「自分の道はこれでいいのか」
「このキャリアで大丈夫か」

そんなことを考えるのは一度や二度ではない。本当にこれまで、何十回と迷いながら、前に進んできた。

だからこそわかることだけど、人は行動を通してしか自分のやりたいことを知ることはできない。確かに過去の自分を分析して、強い動機を見つけることができる人もいるけれど、そうでなければまず行動するしかない。

もっと具体的に言うと、他者との関わり合いがとても重要なのだ。他者に対して何をする時に幸福を感じるのか、どう世の中と関わっていきたいのか、何を価値として提供できるのか。そんなことを、実体験をベースに考えていく必要がある。

その最たるものが仕事である。あれほど不特定多数の人と関わり合っていく活動はない。どんな仕事だろうと、必ず1人以上は利害関係者が存在し、何かしらの価値を提供することで自分の存在が認められる。それは顧客かもしれないし、社内の人間かもしれない。いずれにせよ、その関わり合いの中で、自分がやりたいことや、やりたくないことをより深く理解することができる。

だから私は、「はたらく」ことが自分を知るもっとも有効な手段だと思っている。逆に言えば、仕事をする前からやりたいことがわからないのはある意味当然で、多くの人間ははたらきながら、やりたいことを見つけるしかないのだ。

もちろん、すでにやりたいことが明確にある人もいるので、必ずしも全ての人がそうだとは思わない。ただし、もともとやりたいことがある人ですら、働きながら自分のやりたいことが変化していくことなどザラにあると思う。

現時点でできる限りの自己分析を行い、まずは働いてみる。その結果、どうしても自分に合わないと思うのなら環境を変えるのも良い。その代わり、自分は何が嫌なのかを正確に把握する必要がある。せっかく自分を知るきっかけとなるヒントを、そのままドブに捨ててしまってはもったいない。もしかしたら今の環境でも、自分がやりたいことは実現できるかもしれないので、冷静になって考えてみると良い。

そうやって、行動と分析を繰り返しながら、他者との関わりを通して自分を形作っていく。プロセスの中で、本当に自分がやりたいことを見つけることができれば、そこからもっと楽しい毎日を送ることができる。少なくとも私はそう信じて、仕事と向き合っているつもりだ。

「はたらく」ことで自分を知る。もし自分のやりたいことがわからなくて悩んでいる人がいたら、ぜひその視点で考えてみてほしい。もしくは意識的に行動してほしい。もともと空っぽだった私自身も、結果的にそうやって自分を形成し、やりたいことをみつけてきたからだ。

そんなことを思う8年目の終わり。まだまだ道半ばなので、探究心を持って仕事に取り組んでいこうと思う。

小木曽
Twitter→小木曽

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