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LTV最大化のためのABM×カスタマーサクセス。


あまりnoteで自分の経歴を書いたことがないのですが、実は4年ほど顧客フォロー、最近の言葉で言えばカスタマーサクセスの部署に所属しておりました。


メインで行なっていたことは自社CMSツールを使ったWEB制作の既存顧客からのアップセルやクロスセルの創出、そしてチャーン防止。そのプロセスの中で自ら営業して売り上げをあげるところも行なっていました。


以前の弊社は既存クライアントからの売り上げはほとんどなく、実はアップセルやクロスセルに関する指標は、私が異動になったタイミングで別ミッションとして課されたものでした。


それまでも顧客フォローには力を入れてはいましたが、あくまで”カスタマーサポート”がメイン。保守費用も頂いてなかったので、本気で成果を追うところまでは行なっておりませんでした。



その為、事実上、私の異動のタイミングで一人カスタマーサクセスのための組織変革を行なってきたわけですが、結果として3年かけて当時の10倍くらいの売り上げは出せるようになってきました。(元々が少なすぎたところもありますが。)



その組織変革の重要ファクターとして、カスタマーサクセスの中にABMの要素を入れ込んだわけですが、これがかなり汎用性も高く秀逸な考え方だったな今でも思います。


そこで、現在はもう別の部署に異動にはなりましたが、せっかくなので当時を振り返りまとめていきたいと思います。

WEB制作(CMSツール)におけるカスタマーサクセスの特徴

大前提として、CMSツールの特徴として解約率の低さが挙げられます。シンプルな理由ではあるのですが、WEB制作にそれなりに費用が掛かり、簡単には作り換えができないからです。

そのため、一度作ったWEBサイトを何年も使うことがほとんどなので、最低利用期間の1年で解約、といった状況にはなかなかなりません。カスタマーサクセスの業務であるチャーン防止に関しては、不満さえなければ短期では起こりにくく、そこまでハードルが高くはないでしょう。もちろん長期的な視点では必要になりますが。

また、同様の理由で仮にオンボーディングに失敗しても解約にならないことが多くあります。むしろ、オンボーディングという定義すらも企業ごとに異なるのですが、WEBサイトを活用したいと真剣に思っているクライアントはそもそもオンボーディングしますし、そこまででないクライアントは公開されていれば十分なので特に解約になりません。クライアントによって温度感は様々です。

そのため、クライアントの温度感を正確に把握した上でカスタマーサクセスを行なっていく必要があります。そもそもサクセスが必要ないクライアントに対して手厚くフォローをしても、相手からしたら暑苦しいだけです。しっかりとセグメント分けをした上で、適切なアプローチ方法を取る必要があります。

その際に、ABM(アカウントベースドマーケティング)の考え方を掛け合わせることで、効率的なカスタマーサクセス活動が可能となります。ABM×カスタマーサクセスは次の章で詳しくお話しします。

WEB業界における顧客との関わり方

ここからは、なぜWEB制作業界でABMとカスタマーサクセスを掛け合わせた施策が有効なのかをお話しします。

これはWEBに限らずBtoBの高額商材全般に言えることなのですが、

・必然的に長い付き合いになること
・顧客によって目的も重要度もことなること
・顧客ポテンシャルに差があること

この3つがメインの理由になります。

この3つの要素がそれぞれカスタマーサクセスとABMに効いてくるところなので、それぞれ説明していきます。

既存顧客と長く接点を持てるメリット

WEB制作は一度制作してしまえば数年はリニューアルを行わないので、必然的に付き合いが長くなります。クライアントと必然的に長い付き合いになるということは、顧客との接点を持ち続けることができるということです。


毎年のように企業の広告費が上がっているネット業界において、これほどよい話はありません。世の中的にも追い風のタイミングで接点を持ち続けることができるので、それだけ提案の余地と機会があるということ。これを活かさない手はありませんよね。


また、一般的に新規の営業は既存の営業に営業する5倍の労力が必要と言われますが、まさしくそうだと思っていて、しっかりと顧客の成果や成功にコミットして入れば必然的に追加投資は発生します。これはゴリゴリの営業とは考え方が根本的に違い、カスタマーサクセスに基づいた行動になります。


そもそもWEB制作は長期的な成果を前提に設計から行うべきなので、当然といえば当然なのですが、最近もセミナーなどを行なっているとまだまだできていない企業が多い印象です。


真剣にカスタマーサクセスを行なっていけばクライアントも自社も幸せになるような関係構築がWEB制作業界であれば可能です。だからこそ、長い付き合いの中で生まれる接点を大切にしていく必要があります。

顧客によって違う目的や重要度

ですが、顧客によってWEBサイトの目的が全く違ったり、活用意欲にも差があります。そのため、全てのクライアントに対し公平にフォローをしていくのはとても非効率で、必要としているお客様に適切なタイミングで会うことができません。

どのクライアントにも”最適な”フォローのペースがありますので、そこを仕組み化する際にABMの考えが役に立ちます。

顧客ポテンシャルの差

重要度とも少し被るのですが、顧客によってWEBサイトへの予算の掛け方にも差があります。また、全体の販促費にも差があるので、当然予算がある企業はPDCAの速度も早くなるので、たくさん訪問をするべきですし、そこまでWEBに費用をかけるつもりのない企業には、現実的に施策が回せるペースでの訪問になります。

特に最近では、SNSなど別のチャネルで集客をしておりWEBサイトは一旦看板、といった企業もあるかと思います。しっかりとクライアントのビジネスモデルから、WEBサイトがにどれだけ費用をかけることが妥当なのか、考えた上で提案しましょう。

顧客によってフォローを分けることは悪なのか

以上のように、必ずしも企業のWEBマーケティングの中心にWEBサイトがあるとは限らないので、WEBサイトが重要ではなく、販促費もかけるつもりのない企業と、メインの集客チャネルで積極的に投資をして行きたい企業で同じフォローをしていたら、クライアント全体の成果も最大化できません。(そこを前向きにするのが我々の仕事だというのは重々承知しています。)


そもそも逆の立場で考えれば活用意欲がないとわかっているのに、毎月のように訪問されるのも後ろめたいですし、場合によっては迷惑ではありますよね。お互いにWin-Winな形でクライアントのフォローは行なっていくべきです。


だからこそ、「ABM(アカウントベースドマーケティング)」の考え方を、カスタマーサクセスに盛り込む必要があります。

ABM(アカウントベースドマーケティング)とは


ここから少しABMについての解説をしますね。一般的なABM(アカウントベースドマーケティング)の意味としては下記になります。

ABM(アカウントベースドマーケティング)とは、ターゲットとして個別具体的な企業・団体(アカウント)を明確に定義したうえで、その「アカウント」の観点から戦略的にマーケティング活動を展開する手法です。リードベースではなくアカウントベースでセグメント分けを行い、アプローチする手法。

上記のような意味です。イメージとしては

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こんな感じですかね。案件ベースでリードを追うというより、企業のポテンシャルによってアプローチを変えるイメージです。


もともとアメリカのマーケティングの考えで、日本よりも効率的な営業が求められるため生まれた考え方です。


ただし、日本はまだまだ案件ベースの営業の方が売り上げに繋がりやすいのでなかなか普及してない(そもそも合わない?)のですが、これをカスタマーサクセスに取り入れて見たわけです。

ABMとカスタマーサクセスを組み合わせるメリット

続いて、ABMとカスタマーサクセスの相性がよい理由を述べます。
ABMはそもそも顧客のポテンシャルやステータスを定義して、アプローチを変える必要があります。また、カスタマーサクセスは顧客の成功を追うわけですが、ここってかなり親和性が高いんですよね。


いずれも顧客に合わせたフォローをしていくわけですが、本気でWEBで成果を出したい(サクセスしたい)顧客には注力してフォローすべきですし、そうではない顧客に鼻息の荒い提案は必要ないので、双方にメリットが生まれるわけです。先ほどの話にもリンクしますね。


例えば、縦軸を販促費、横軸を行動ステータスに設定してポートフォリオを作り、そのポートフォリオごとにアプローチを変えるとか。例えばですよ。やってる人は感覚的にやってるんですが、全員が一定の水準になるようにするためにはそういった決め事も大切です。

無料でやるからLTVが最大化する、という話

ちなみに大前提として、これは有料でフォロー(コンサル、運用含む)している場合は役務が発生するので話が別になります。今回はあくまで”無料のフォロー”としてサポートやカスタマーサクセスに取り組んでいることが前提となります。


WEB制作会社によってはサポート費として月額を取る場合もあるとは思いますが、個人的にはサポートは無料にして、カスタマーサクセス活動から追加投資をもらった方がLTVは高くなると考えています。確約はしていない成功報酬みたいな感じですかね。


だからクライアントによってフォローの仕方は変えていくべきですし、そこでお金を取るのではなく、しっかりと成果に基づいた、もしくは成果を見越した追加投資をいただくのが、健全なフォローの形だと思います。だからこそ、ABMの考え方を取り入れて、カスタマーサクセスをやっていく必要があるわけです

小さく初めて教祖になる

正直、新規の営業でABMの考えを取り入れるのはハードルが高いかもしれませんが、既存顧客へのカスタマーサクセス活動においては非常に有効です。


ただし、それなりに本気で取り組み、かつ長期的な視点で考えるようにしないと、なかなか芽が出ずに終わってしまうかと思いますので、まずは小さく初めて徐々にスケールするのがおすすめです。


また、クライアントをやる気にさせるのもカスタマーサクセス部隊の役割ではあるので、1社1社に対し真剣に向き合っていくことが前提になります。何がなんでもクライアントに動いてもらい、サクセスを目指す。このくらいの情熱がカスタマーサクセスには求められます。


この辺りに関しては過去に書いた完全教祖マニュアルの記事が参考になるかと思うので、引用させていただきます。


宗教をやれって話ではなく、顧客のデジタル施策を成功に導く先導者になれって話です。カスタマーのサクセスのために、圧倒的なリーダーシップと神格化を目指し、実際に成果に結びつけてあげることが非常に重要です。


繰り返しになりますが、成果を出してもらうためであれば、カスタマーサクセスはなんでもやる覚悟が必要です。そのやり方の1つがABMであり、教祖であること。ABMで効率的にクライアントにアプローチし、教祖となってクライアントを動かし、カスタマーのサクセス総量を最大化する。とにかく小さな成果をカスタマーにだしてもらうこと。


以上のような流れでABMとカスタマーサクセスを組み合わせ、私もかつて売り上げを積み上げて行きました。そして、クライアントのLTVも引き上がり、しかも成果も出ているという好循環を回すことができました。

月額ストックを増やすためのABM×カスタマーサクセス

最後におまけ的な話で、WEB制作業界に置いてカスタマーサクセスを追えばストック売り上げも増えていく、といった話をします。ストック売り上げの増加はLTVにも大きく関わる部分なので、非常に重要なところです。


そもそも最近のツールはサブスク型が多いので、カスタマーサクセス からの追加投資ももらえた場合はストックの売上が増えていきます。


そのため、サブスク型のビジネスモデルを作っていくとなると、WEB制作会社が良い提案をして、良い成果を出して、追加をもらって、さらに成果を出して、といったループを回して行けば必然的に増えていくことになります。ますますLTVが上がっていくのでこちらも手厚いフォローが可能となります。


絶対に忘れちゃいけないのは、あくまでクライアントの成果という軸だけはブラさないこと。ここだけは絶対にずらしちゃダメです。絶対。どうしても欲が出て売上を取りに行ってしまうこともありますが、まずは成果を第一にする必要があります。


せっかくであれば、全員がサクセスするようにフォローしていく。このマインドが大事です。

最初は大変、でも絶対カスタマーサクセスはやるべき

ということでつらつら書いてきました、実際に自分がやってきたことをベースに書いているので、少しでも参考になればと思います。


そして、理論的にはこれまで書いて来た内容ではあるのですが、当然イレギュラーもたくさん起きますし、初めはとにかく忙しいです。


カスタマーサクセス マネージャー、いわゆるCSMは、あらゆる対応業務や調整も必要ですし、容量を掴むまではそれこそ走り続けるような働き方になります。軌道に乗っていけば横展開してリソースを振ることもできますが、標準化するまでには骨が折れるでしょう。


それでも、やっぱりカスタマーサクセスはやるべきです。これからの時代において、顧客のロイヤリティはますます高まっていきます。その時に、成果の上がっていないクライアントはすぐに離れていきます。


そうならないためにも、まずは小さくカスタマーサクセスをはじめて、広げて行ってはいかがでしょうか。きっとクライアントのLTV向上にも役立ちます。その際に、ABM的な考えや本記事の内容が少しでも参考になれば幸いです。

そしてこういった話を今後も発信していくので、ぜひTwitterのフォローもお願いします!



今回は以上。



小木曽


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