碁盤斬り~武士の意地と、それぞれの正義(ネタばれあり)
映画『碁盤斬り』を観てきました。
原作は、映画の脚本担当でもある加藤正人さんの小説『碁盤斬り 柳田格之進異聞』
また、講談・落語の『柳田格之進』をベースに製作されております。
主演は草彅剛さんです。
今回感じたポイント
とにかく草彅さんの演技!
草彅剛さんの演技が素晴らしい!
前半、穏やかだけど武士としてのたたずまいがしっかりしている場面
中盤、真相を知り、柴田兵庫を血眼になって探している場面
終盤、怒りが爆発し、感情すべてをぶつけている場面
本当に同じ人が演技しているのか!?
と、錯覚するくらい圧倒されました。
草彅さんと言えば、『○○の戦争』シリーズが好きだったのですが、影があり不器用な役をやらせたら右に出る者はいないんだなあと。
改めて思い知らされたひとときでした。
囲碁のルール
物語を通して『囲碁』の盤面が出てきました。
雰囲気でどちらが勝っているのかはわかりましたが、ルールを知っていればさらに楽しめたんでしょうなあ…
『清廉潔白』だけでは…
碁打ちを通じて交わる、國村隼さん演じる萬屋源兵衛との友情。もともとケチであった源兵衛の性格まで変えてしまった、その『清廉潔白』の心がとても心地よかったです。
しかし、『清廉潔白』だけでは世の中生きられないのもまた事実。
一度決めたら意見を曲げない頑固なところも重なり、とても息苦しい人生を送って来たのだろうなあと、心中察するに余りあるほどでした。
筆者も真面目一辺倒で生きてきた人間なので、格之進の性格に自分を投影してしまい、ちょっと来るものがありましたね。
感情揺れとロウソクの火
感情が火に宿り、心が揺れている時は火の勢いが強くなる。
真実を知った格之進が、源兵衛との碁打ちを再開した際にかなり動揺していることがこれでわかりました。
また、格之進にあらぬ嫌疑をかけてしった弥吉。
源兵衛に話さなくてはならない、でも話せない。
この描写もお見事でしたね。
殺陣
斎藤工さんの殺陣が素晴らしかった!
足が悪いのにあそこまで戦えるのか!?というのは置いといて…あれだけの人数相手に大立ち回りをしている様子はよかったですね。
願わくば、もう少し草彅さんの殺陣が見たかったですが、一撃必殺ということであれば、あれでよかったのでしょうね。
それぞれの正義
クライマックス、斎藤工演じる柴田兵庫と碁打ち→斬り合いとなるのですが、その途上で「お前が殿に訴えたから藩を追われた人間がいる…」というような話がありました。
いわばクビになってしまうわけですから、いくら江戸時代とは言え仕事がなければ食べていけません。
もちろん不正はいけないことですが、当時はそんなきれいごとを言っていられなかったのでしょう。なので、兵庫の言うことも一理ある気がします。
これはどちらがいい悪いではなく、考え方の違いのなので相容れない場合は物別れになるのが必定。最終的には決着をつけなければならないのでしょうね。
古典芸能実写化への希望
上述した通り、本作は『柳田格之進』という古典芸能を基にして制作されています。筆者は古典芸能が好きでよく落語や講談を観ていたのですが、このネタは聞いたことがありませんでした。
ということで、今後聴く際は、『碁盤斬り』がベースになるでしょう。
同様にまだまだ実写化できるネタはたくさんあると思います。
それこそ落語は500、講談は3000を超えるとまで言われているので、掘れば金塊のようなものが出てくるのではないかと。
近年、講釈師の神田松鯉先生の講談(荒川十太夫・俵星玄蕃=監修)が歌舞伎化されていますが、それと同じことが長編映画でも続いてくれればと思っております。
それは地上波で放送されなくなってしまった時代劇を観る契機にもなりますし、何より、まだ古典芸能に触れたことのない方々へのアプローチになるのではないでしょうか。