【なってからでは遅い】健康な人ほど知っておくべき慢性腎不全の食事方法
今回は、CKD(慢性腎不全)の人の食生活についてやっていきます。
CKDとは、腎臓の機能低下が持続すること。(1)
腎臓は、主に血液中の老廃物を尿として身体の外に排出する働きをしています。
つまり、ゴミを取り除いてくれる掃除屋さんですね。皆さんの家も、毎日ゴミ出しをしているから、衛生的に暮らせているわけです。
腎臓が機能低下するということは、ゴミ出しができなくなるということ。
家がゴミ屋敷になっていくところを想像してみてください。
ゴミがたまり空気が悪くなって、不衛生になっていきます。虫も発生するかもしれません。
身体も同じです。
毒素をため込むと、さまざまな不調が出てくるようになります。免疫が下がり、感染症にかかるかもしれません。
そして、CKDの怖いところは、自覚症状がないことです。
気づいた時には、もう手遅れなんてこともあります。
末期腎不全であるESKD(End-stage Kidney Disease )になると、もはや打つ手がありません。
腎移植や透析といって、人工的に血液の老廃物を処理する必要がでてきます。
だからこそ、なってからでは遅い!今から対策する必要があります。
今回の記事は、CKDの方に向けた記事でもあります。
しかし、むしろ健康的な方にこそ見てほしい記事になっています。
私は健康だから関係ないかな
もっと歳をとってから知れれば良いかな
そんな方にこそオススメです。
とくにCKDの食生活は、食事療法のなかでも群を抜いて難しいです。
というのも、CKDの食生活はルールがたくさん。食べてはいけない食品ラッシュだからです。
健康的な人は、CKDの食生活を知ることで、より健康でいることへのモチベーションが上がると思います。
すでにCKDの方、CKDのご家族がいらっしゃる方へは、食事方法の再確認や新しい気づきも提供できるかと思います。
ぜひ、最後までお付き合い頂けたら嬉しいです。
とっても複雑?CKDの食事ルールについて
CKD(慢性腎不全)になると、守らなければならない5つの食事ルールがあります。
1日3〜6gの食塩制限
タンパクの質の制限
カリウムの制限
リンの制限
必要エネルギーの確保
※以上のリストは(2)を参照して作成
では、1つずつ解説していきます。
①3〜6gの食塩制限について
高血圧は、慢性腎不全の原因の一つ。高血圧を予防するためにも、食塩制限が必要になります。
2011年にイタリアで行われた研究によると、
末期腎不全(ESKD)になるリスクが、食塩摂取量が1日7g以下の人に比べて、7〜14gの人は1.4倍、14g以上の人は3.3倍なりやすかった。
ということもわかっています。(3)(4)
ただし、過度な減塩は栄養不足が招く恐れがあるとし、ガイドラインでは3g以上6g未満と定められているわけです。
日本人は、平均10gくらい食塩を摂取しています。
このままだと、末期腎不全になるリスクは1.4倍ですね。
また、全世界の死因の2割は、不規則な食事が原因だといわれています。(5)
なかでも75歳以上の高齢者、全年齢の男性では、食塩の摂りすぎによる死亡が最も多いです。
健康でいるために、まず行うべきは減塩である。
これは、全世界の人々に共通するルールだといえます。
②タンパク質の制限
タンパク質を過剰に摂取した場合、身体にはタンパク質の貯蔵能力がありません。(6)
つまり、後で使うから貯めておこう、ができません。
例えば、糖質であれば、余分に摂取しても肝臓や筋肉で保管しておくことができます。
タンパク質は、摂取した都度ごと、腎臓に処理してもらわないといけないのです。
しかも、タンパク質には窒素が含まれており、窒素の老廃物は有害。
ちゃんと処理されないと、尿毒症といって、全身の臓器にダメージを与えることになります。
なので、CKDが進行し、タンパク質の処理能力が落ちてきた人は、過剰のタンパク質を摂取しないように、制限をする必要があるのです。
よって、CKDの人は、体重1kgあたり0.6〜0.8gのタンパク質が推奨摂取量です。
60kgの人だと、36〜48gほど。
じゃあ、肉を減らせば良いのね。
実は、タンパク質を含んでいるのは、肉だけではありません。
普段食べているお米やパン、野菜や果物にもタンパク質は含まれています。(7)
このようになっています。
これビックリですよね。野菜や果物にも入っていることもそうですが、お米に含まれるタンパク質の量は、意外にも多いのです。
ちなみにショートケーキには、6.9g。ミルクチョコレートには、6.9gのタンパク質が入っています。
さて、ここで質問です。
摂取していいタンパク質の量は限られています。皆さんだったら、どの食品からタンパク質を摂取したいですか?
ここで、ショートケーキやチョコレートなどの栄養価の低いものを選択してしまうとどうなるか。
栄養価が高い食品を食べられなくなる。
腹がいっぱいにならないので、たくさん食べてしまう。
たくさん食べてしまうので、タンパク質過剰になる。
つまり、タンパク質は、質が大切!
どの食品から限られたタンパク質を摂取すべきかは、しっかり考えるようにしましょう。
③カリウムの制限
CKDの食生活のなかで、最も独特なルールがカリウムの制限になります。
そして、このルールがあるせいで、CKDの食生活がより難化しているのです。
カリウムは、摂取することで血圧を下げる効果があります。
緑黄色野菜や果物に多く含まれているため、健康的な食生活には、野菜と果物が欠かせないのです。
カリウムは、積極的に摂取する必要がある、何度か記事でも紹介していますね。
しかし、それはあくまで腎臓が機能している前提です。
CKDが進行すると、カリウムの排泄が困難になります。(4)
最悪の場合、不整脈による突然死も起こるため、カリウム値は、厳密にコントロールしなければならないのです。
カリウム値は、病院の血液検査によってわかり、その都度、主治医の先生からアドバイスがあると思います。
本来は、健康なはずの野菜や果物を制限しなければならない。
そのため、DASHダイエットや地中海式の食事など、一般的に健康な食事療法が適用できません。
また、カリウムは、水溶性の栄養素です。
野菜は細かくし、ふきこぼすまで茹でる。
茹で汁は捨てる。
果物は、缶詰のものを選ぶ。
このようなルールを守ることで、カリウムの摂取量は抑えることができます。
④リンの制限
リンもカリウム同様、CKDになると排泄できなくなる栄養素です。
身体にたまると、心血管疾患のリスク、腎機能のさらなる機能低下に拍車をかけます。
リンは、魚介類、肉類に含まれる栄養素ですが、特に多いのが加工食品です。
近年は、加工食品によるリンの過剰摂取が問題視されています。
リンの不足は、骨粗鬆症のリスクを高めますが、現代においては、もはや不足はあり得ません。
厚生労働省の食事摂取基準でも、リンは推奨量ではなく、目安量となっています。(8)
面白いのが、リンは不足しても過剰でも骨粗鬆症のリスクを高めることです。
過剰なリンの摂取は、カルシウムの吸収を妨げるからです。
CKDの方はもちろんのこと、健康な方であってもリスクは同じ。
加工食品やインスタント食品は、なるべく食べないようにしてください。
⑤必要エネルギーの摂取
ここまで①〜④のルールを説明しました。
すると一定の方が、このルールを厳格に守ろうとするのです。
タンパク質はもう食べない!肉や魚もやめる!
炭水化物も食べないぞ!
食塩もかけないぞ。
すると、食事に対する楽しみを失ってしまうことがあります。食欲がなくなり、栄養不足になる方も少なくありません。
⑤のルールは、栄養不足にならないためのルールになります。
では、どんな①〜④を守りつつ、エネルギーを確保するにはどんな食事をとれば良いのでしょうか。
定められたルールのなかで、質の良い食べ物を食べて、質の良いエネルギーを摂取すれば良いのです。
ケーキやチョコなどのお菓子を食べてしまえば、身体に必要な栄養素を摂取することができなくなります。
なぜなら、摂取して良いタンパク質、カリウムには制限があるからです。
栄養価の低い食品はやめて、栄養価の高い食品を摂取する。
これがCKDの食生活のキモになります。
いかがだったでしょうか?
以上がCKD(慢性腎不全)の人が守らなければならない5つの食事ルールになります。
なかなか難しかったですよね笑
しかし、言い換えれば、制限はメリットになりえます。
自由になんでも食べて良いよ、となるとついつい不健康な食事をしてしまうのが私たち。
がんや心臓病、脳卒中などにかかるリスクが上がってしまうのです。
しかし、CKDになると制限があることで、本当に健康な食品に気づくことができる。
大変だとは思いますが、食事を見つめ直すキッカケにもなるのがCKDの食生活です。
これが徹底できれば、がんや心臓病、脳卒中のリスクを下げることにも繋がります。
ぜひ、諦めずに試してみてください。
以上、CKD(慢性腎不全)の食生活でした。
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ルールはわかったけど、具体的には何を食べたら良いの?
そういう方が多いと思います。
CKDの食生活の問題点は、成分ごとの制限のため、具体的にその成分がどんな食品に含まれているかがわかりづらいのです。
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CKDの病態についても詳しく解説されている点がオススメ。
あれもダメ、これもダメ。
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腎不全の方で、心不全を合併している方は、こちらの記事をご覧ください。心不全の食事で注意すべきことを紹介しています。合わせて読んでみてください。
それでは、また次回の記事もよろしくお願いします。
参考文献
(1)エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン 日本腎臓学会 編集
https://cdn.jsn.or.jp/data/CKD2018.pdf
(2) 慢性腎臓病 生活・食事指導マニュアル ~ 栄養指導実践編 ~ 日本腎臓学会
https://cdn.jsn.or.jp/guideline/pdf/H25_Life_Diet_guidance_manual.pdf
(3) Vegter S, Perna A, Postma MJ, Navis G, Remuzzi G, Ruggenenti P. Sodium intake, ACE inhibition, and progression to ESRD. J Am Soc Nephrol. 2012 Jan;23(1):165-73. doi: 10.1681/ASN.2011040430. Epub 2011 Dec 1. PMID: 22135311; PMCID: PMC3269916.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/pmid/22135311/
(4) 平成 26 年3月「日本人の食事摂取基準(2015 年版)策定検討会」報告書
https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10901000-Kenkoukyoku-Soumuka/0000042647.pdf
(5) GBD 2017 Diet Collaborators. Health effects of dietary risks in 195 countries, 1990-2017: a systematic analysis for the Global Burden of Disease Study 2017. Lancet. 2019 May 11;393(10184):1958-1972. doi: 10.1016/S0140-6736(19)30041-8. Epub 2019 Apr 4. Erratum in: Lancet. 2021 Jun 26;397(10293):2466. PMID: 30954305; PMCID: PMC6899507.
https://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736(19)30041-8/fulltext
(6) Molina P, Gavela E, Vizcaíno B, Huarte E, Carrero JJ. Optimizing Diet to Slow CKD Progression. Front Med (Lausanne). 2021 Jun 25;8:654250. doi: 10.3389/fmed.2021.654250. PMID: 34249961; PMCID: PMC8267004.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC8267004/
(7)食品成分データベース 文部科学省
(8) 日本人の食事摂取基準 2020年版
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/eiyou/syokuji_kijyun.html