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薬剤師がマルチビタミンをオススメしない3つの理由

今回は、マルチビタミンをオススメしない3つの理由を解説します。

野菜や果物が食べれないとき、
マルチビタミンを使っている方も
いらっしゃるのではないでしょうか?

あくまで補助的に飲むのであれば、良いと思います。
例えば、野菜が不足してしまった日に飲む、果物が摂れていない日に飲む、などです。

マルチビタミンを毎日飲むのはオススメしません。

私は薬局で働いてるので、お客さんや患者さんからマルチビタミンについて聞かれることがあります。
そのときは、なぜ必要なのか話しを聞かせてもらいます。
しかし、本当にマルチビタミンが必要だと思うのは、ごくわずかです。

むしろ、デメリットの方が多いのでは、と心配してしまう方がほとんど。

今回は、そんなマルチビタミンのダークサイドについて解説します。

理由その1 慢性疾患予防には効果がない説

マルチビタミンは、慢性疾患の予防には効果がない可能性があります。

アメリカは、人口の3分の1がマルチビタミンを摂っています。日本と違って国民皆保険がないので、医療費が高額なのです。
そのため、予防への意識が高く、マルチビタミンの服用率が高いです。そんなアメリカは、国としてマルチビタミンの摂取を推奨しているわけではないのです。

むしろ、「マルチビタミンの摂取はいかなる慢性疾患のリスクも減少させない」いう見解です。(1)


この根拠となったのが、アメリカのジョンズホプキンス大学が2006年に実施した研究。(2)
4万7,289人を対象に行った大規模な研究です。
目的は、マルチビタミンを飲むことでガンや心臓病、高血圧、白内障の予防になるのか。

結果は、とても残念なものになりました。

心臓病、高血圧、白内障の予防には効果がなかったのです。

一方、ガンや脳卒中は、発症リスクが減っていました。
しかし、栄養状態が悪い地域では発症リスクが減っていたのに対して、そうでない地域では変わりありません。
つまり、もともと栄養状態が悪く、病気になりやすい人達がマルチビタミンを飲んだため、ガンや脳卒中のリスクが減っていたのです。

栄養をしっかり摂れている人が飲んでも効果が薄いのではないか、これがこの研究の結論です。


また、効果ないだけでなくむしろ害になるのではないか、という研究もあります。

マルチビタミンとサプリに必ず含まれている成分です。例えば、ビタミンB6ビタミンB12
この研究は、2017年に米国臨床腫瘍学会が発表しました。この2つの栄養素を10年間、毎日飲み続けると肺がんのリスクが上がってしまうという研究があります。(3)

2011年、JAMAという米国医師会雑誌に掲載された研究では、ビタミンEを7〜12年飲み続けた男性は、前立腺がんのリスクが上がってしまうという研究もあります。(4)これらは、ビタミンの過剰摂取が原因だと考えられます。


ビタミンも薬と同じなのかもしれません。
例えば、痛み止めとして使うロキソニン。ロキソニンは、適量であれば、痛みや炎症を止めてくれます。
しかし、過剰に摂取すると胃腸を荒らす副作用が起きるのです。

何事も適量が大切。

毎日のように多量にビタミンを摂取していると、さまざまな害がある可能性があります。

マルチビタミンは、毎日飲むのではなく、栄養が足りない時にだけ飲むようにしましょう。


理由その2 ファイトケミカル最強説

2つ目の理由は、健康にはファイトケミカルが欠かせないということです。

ファイトケミカルとは、植物自身が作り出す天然の化学物質です。(5) 植物は、一度根を伸ばすと、生涯動くことができません。
自分を食べにくる虫や動物から逃げることもできなければ、人間のように武器で追い払うこともできません。
暑い日差し、紫外線を避けるために、木陰に入ることもできなければ、日傘をさすこともできないのです。

自然界の外敵から身を守るため、植物はファイトケミカルを作り出します。紫外線で傷ついた身体を治したり、毒を出すことで虫や微生物を追払います。


野菜や果物と一緒にファイトケミカルを摂取することで、私たちもファイトケミカルの恩恵を受けることができるのです。
例えば、アンデス山脈に住む人々は、皮膚がんになりにくいといいます。(6) 紫外線が皮膚がんの原因になるのはいまや常識。海や山などに行くときはもちろん、ちょっとした買い物に行くときでさえ日焼け止めクリームが手放せません。
アンデス山脈の標高はとても高く、紫外線の量は日本の比ではありません。それにも関わらず、彼らが皮膚がんになりにくいのです。

それは、彼らが食べるジャガイモに秘密があります。
紫外線をたくさん浴びたジャガイモには、ファイトケミカルが豊富に含まれています。紫外線で傷ついた自分の身体を修復しているのです。
このジャガイモを毎日食べて、ファイトケミカルを摂りこむことで、紫外線が多いのにも関わらず、皮膚がんになりにくいのです。


こうしたファイトケミカルは、野菜や果物によって種類が異なります。例えば、ブロッコリーなどのアブラナ科に含まれるスルフォラファン
スルフォラファンは、がん予防に効果があるとされています。

マルチビタミンには、ファイトケミカルは含まれていません。

つまり、マルチビタミンは、野菜や果物の代わりにはならないということです。


理由その3 野菜・果物を食べることで病気の予防になる

3つ目の理由は、野菜や果物を食べることで病気の予防になることです。

2019年にドイツ栄養学会が発表した研究では、野菜や果物を食べることで、心臓病や脳卒中のリスクが減ることがわかりました。(7)

例えば、野菜は100g食べるごとに心臓病のリスクを3%、脳卒中のリスクを8%減らしてくれます。
しかも、800gまでは効果が増えつづけます。
つまり、最大で心臓病のリスクを24%、脳卒中のリスクを64%低下させてくれるのです。

また、果物は200g食べることで心臓病のリスクを15%、脳卒中のリスクを20%低下させます。

マルチビタミンでは、この効果は得られません。


さらに、野菜をたくさん食べることで自然と摂取カロリーが減ります。

例えば、サラダボールいっぱいの
サラダを毎日食べるとしたら?

食べ終わる頃には、お腹もだいぶ満たされています。白米やおかずを食べ過ぎてしまうこともありません。

実際に毎日の食事から、たった240キロカロリーを減らすだけで、2年間で7.6Kgも痩せることができます。(8)


痩せることは、高血圧や糖尿病、脂質異常症などの生活習慣病を予防
することに繋がります。
野菜や果物を食べずに、マルチビタミンに頼りすぎてしまうと、白米やお肉などの摂取量が増えてしまいます。

結果、肥満になり、さまざまな病気にかかりやすくなってしまうのです。


まとめ

以上、マルチビタミンをオススメしない3つの理由でした。

マルチビタミンを飲むことを否定する記事ではありません。しかし、マルチビタミンに頼り過ぎてしまうことの怖さを知ってもらいたいと思い、記事を作成しました。

マルチビタミンは、野菜や果物の代わりにはならない。
皆さんには、ぜひこのことを覚えておいて欲しいのです。あくまでも栄養を補うために使ってください。

決して、マルチビタミンが毎日必要な食生活を送らないよう、お願いします。 

今回の続きの記事はこちら。

マルチビタミンは取り扱いに注意しないと、無意味どころか害になる可能性があります。そんな害になる3つのサプリを解説した記事がこちら。

日頃からサプリメントを服用している人はどうぞ。

https://note.com/kazukawa_kennote/n/naa111dcc3689

それでは、また次回もよろしくお願いします!



参考文献

(1) Multivitamin/mineral Supplements

Fact Sheet for Health Professionals

https://ods.od.nih.gov/factsheets/MVMS-HealthProfessional/

(2) Huang HY, Caballero B, Chang S, Alberg AJ, Semba RD, Schneyer CR, Wilson RF, Cheng TY, Vassy J, Prokopowicz G, Barnes GJ 2nd, Bass EB. The efficacy and safety of multivitamin and mineral supplement use to prevent cancer and chronic disease in adults: a systematic review for a National Institutes of Health state-of-the-science conference. Ann Intern Med. 2006 Sep 5;145(5):372-85. doi: 10.7326/0003-4819-145-5-200609050-00135. Epub 2006 Jul 31. PMID: 16880453.

https://www.acpjournals.org/doi/full/10.7326/0003-4819-145-5-200609050-00135?rfr_dat=cr_pub++0pubmed&url_ver=Z39.88-2003&rfr_id=ori%3Arid%3Acrossref.org

(3) Brasky TM, White E, Chen CL. Long-Term, Supplemental, One-Carbon Metabolism-Related Vitamin B Use in Relation to Lung Cancer Risk in the Vitamins and Lifestyle (VITAL) Cohort. J Clin Oncol. 2017 Oct 20;35(30):3440-3448. doi: 10.1200/JCO.2017.72.7735. Epub 2017 Aug 22. PMID: 28829668; PMCID: PMC5648175.

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5648175/

(4) Klein EA, Thompson IM Jr, Tangen CM, Crowley JJ, Lucia MS, Goodman PJ, Minasian LM, Ford LG, Parnes HL, Gaziano JM, Karp DD, Lieber MM, Walther PJ, Klotz L, Parsons JK, Chin JL, Darke AK, Lippman SM, Goodman GE, Meyskens FL Jr, Baker LH. Vitamin E and the risk of prostate cancer: the Selenium and Vitamin E Cancer Prevention Trial (SELECT). JAMA. 2011 Oct 12;306(14):1549-56. doi: 10.1001/jama.2011.1437. PMID: 21990298; PMCID: PMC4169010.

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4169010/

(5) 野菜・果物の健康有用性:ファイトケミカルの多様な機能とその仕組み 野澤 義則 等

https://tokaigakuin-u.repo.nii.ac.jp/index.php?action=repository_action_common_download&item_id=3311&item_no=1&attribute_id=21&file_no=1&page_id=13&block_id=21

(6)DNA再起動 人生を変える最高の食事法

シャロン・モアレム 著 ダイヤモンド社

(7) Bechthold A, Boeing H, Schwedhelm C, Hoffmann G, Knüppel S, Iqbal K, De Henauw S, Michels N, Devleesschauwer B, Schlesinger S, Schwingshackl L. Food groups and risk of coronary heart disease, stroke and heart failure: A systematic review and dose-response meta-analysis of prospective studies. Crit Rev Food Sci Nutr. 2019;59(7):1071-1090. doi: 10.1080/10408398.2017.1392288. Epub 2017 Nov 7. PMID: 29039970.

https://www.tandfonline.com/doi/full/10.1080/10408398.2017.1392288

(8) Dorling JL, van Vliet S, Huffman KM, Kraus WE, Bhapkar M, Pieper CF, Stewart T, Das SK, Racette SB, Roberts SB, Ravussin E, Redman LM, Martin CK; CALERIE Study Group. Effects of caloric restriction on human physiological, psychological, and behavioral outcomes: highlights from CALERIE phase 2. Nutr Rev. 2021 Jan 1;79(1):98-113. doi: 10.1093/nutrit/nuaa085. PMID: 32940695; PMCID: PMC7727025.

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7727025/

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