志望動機書を書くために〜その②〜掘り下げ
どうやって志望動機を書き上げていくのか、
前回取り上げた「医学部に行きたいAさん」(架空の人物)の例の続きです。
まず、理由を2つに整理しました。
①「自分の中にあるもの」
②「外にあるもの」
の2つです。
①「自分の中にあるもの」は、
人の役に立ちたい、特に地域の人たちに恩返しがしたい。医療者としてなら最高!
②「外にあるもの」は、
小さい頃から近所の人によくしてもらった。
その人たちが行っている地域の診療所はいつも混んでいる。
となりました。
ここまで整理できたら、
次は「掘り下げ」です。
難しいのは、この掘り下げは、なかなか自分ひとりではやりづらいということ。
うまく聞き出してくれる聞き上手な人やインタビュー上手な人が友達にいればいいですよね。もちろん、それが先生や親であっても良いわけですが、親や先生は、ご自身の思いや希望が入ってしまうので、なかなか難しい。
私が個人セッションできる人数も限られているので、
少しでも困っている人のヒントになることを買い置きたいと思います。
自分でほりさげるとき、
「どうして?」「どんなふうに?』を考えていくのが基本ですが、
そのクオリティを左右するのが
「どこから掘り下げるか」
ということです。
最初に掘り下げること次第で、その後の見え方が変わってくることがあります。
私がセッションするときは
「具体的にどんなことか話してもらえそうなこと」から掘り下げることが多いです。
「それがたとえ志望動機に関係なさそうでも」です。
Aさんの例をみてください。
①「自分の中にあるもの」
人の役に立ちたい、特に地域の人たちに恩返しがしたい。医療者としてなら最高!
②「外にあるもの」
小さい頃から近所の人によくしてもらった。
その人たちが行っている地域の診療所はいつも混んでいる。
上記の中だと、私は、
・小さい頃から近所の人によくしてもらった。
を掘り下げます。
「どんなふうに?」「いつ?」「それは具体的にどこの誰?」「名前は?」「どんな人だった?」「どんな話をした?」
と、まるで雑談です。
その雑談の中で、その人の価値観や感受性が見えてきます。
ひとりで掘り下げる場合に一番難しいポイントです。
「自分はどんなことに気持ちが動くのか」「どんなことを大切に考えているのか」
これは、直接的な質問をされたのでは考えにくいことです。
自問自答であるならなおさら思考停止になりやすいことです。
でも、こうやって「近所の人によくしてもらった」を具体的な人や時間まで思い描きながらそのときの気持ちや考えを思い出すと、「あ!」と自分でも見えてくるものがあります。
Aさんの場合、雑談の中から出てきたのは
「学校帰りに〇〇商店のおばちゃんが声をかけてくれるのが嬉しかった。」
「そのおばちゃんだけじゃなく、おばちゃんの友達も一緒だった。」
「学校で良い成績を取ると喜んでくれた。」
「小さい頃から、将来はお医者さんかな、と言ってくれていたけれど、
高校生になった頃から、その期待に応えたいと思うようになった。」
「校医だった先生も歳を取ってきて、診療所をたたむらしいと聞いた。」
というような話でした。
もうお気づきですよね。
「近所の人によくしてもらった」という言葉を掘り下げると
すべてにつながります。
さらには、「自分の中」の理由が
「外の理由」につながっていくのもわかります。
うまくかければ、自分の経験から起きた「自分の中」の理由と
ぼんやり気づいていた「外の理由」がうまく結びつくと
説得力のある志望動機書がかけそうです。
感謝の気持ち(自分の中)と、地域の医療が抱える課題(自分の外)が
自然に結びつくのです。
さて、その次は、いよいよそれをどう「文章化」するのか
「言語化するのか」という話に続きます。
書いてみたこと、発信してみたこと、 それが少しでもどこかで誰かの「なにか」になるならばありがたい限りです。