
ベルフェイスが調達した5億の半分を、いきなり交通広告に突っ込む理由
先日プレスリリースした通り、ベルフェイスは照英さんを起用した交通広告を開始した。
ベルフェイスCM『新人加入』篇
年内にも追加で1億ほど投じ、先日調達した5億の半分を一気に使ってしまう予定だ。Indeedやサンサンさんに比べると雀の涙だが、まだARR数億の我々にとってはそれなりの決断である。
BtoB、かつインサイドセールス (訪問せずリモートで営業) という絞った領域でサービス提供する我々が、なぜマス向けに広告するのか?
「資金調達したらとりあえず広告してみるベンチャーあるある」と言われない為に、3つの側面から説明しておきたい。
①All for Customer Success
一つ目は、カスタマーサクセスの為だ。「営業に特化したウェブ会議ツール」であるベルフェイスは、はっきり言って売れる。セールスに課題がない会社は無いし、プロダクトはシンプルだし、ベルフェイスの営業チームは強い。(プロダクトを尖らせる為に精鋭エンジニアチームが日々弛まぬ努力をしていることは触れておきたい)
語弊を恐れずに言えば、新規獲得に課題は無い(少なくともそこがボトルネックでは無い)。
本当の問題は、プロダクトがシンプルだからと言って “顧客が使いこなせるとは限らない” こと。せっかく手間とコストをかけて導入したのに、我々の全力サポート虚しく解約になる企業は一定いる。
、、、なぜか?
理由は明快。
営業マンは訪問したいのだ。それは戦後数十年かけて遺伝子に組み込まれた本能だ。何十回もガチャ切りされようやく出会えた天使のような担当が話を聞いてくれるというのに、「じゃあオンラインで」なんて死んでも言えない。
”とりあえず会いに行く” という習慣は麻薬のように甘美で、抗うのは本当に難しい。
つまり、ベルフェイスとユーザーにとって最大の問題は「インサイドセールスという商習慣が日本に浸透してないこと」だ。
なので我々は、その解決に広告も使おうと考えた。もちろんこれまで通りユーザーへの直接的な支援はフルコミットしていくが、”営業される側含めた マーケットの啓蒙” こそ最大のユーザー支援 (カスタマーサクセス) につながると考えたのだ。
ベルフェイスは、ユーザーがベルフェイスを使うたびに自然に口コミが拡がるビジネスモデルだから、ユーザーが成功することさえ考えていれば自社の成功は後からついてくる。だから、カスタマーサクセスに最大の投資をすることは合理性がある。
②For acquiring new customers
二つ目は、新規顧客獲得の為だ。
30秒前に「新規獲得に課題はない」と言ってみたが、そんなワケない。課題はたくさんある。大きな広告投資をするのだから、新規顧客獲得につながることを期待しないわけではない。いや、とてもしている。
対象メディアは電通さんからたくさん提案をもらったが、最後は私の独断と偏見でタクシーと電車 (山手線) に絞った。
ベルフェイスはインサイドセールスのシステムだから、”電車・タクシー=移動している人たちへの広告” は悪くない選択だったと思っている。今回の放映期間は2ヶ月ほどだが、2ヶ月間一度も山手線にもタクシーにも乗らない営業マンは少ないだろう。そんな人材はどうせクビだ。(インサイドセールス専門でない限り)。交通広告はテレビのような即効性は無いと思うが、ボディーブローのような効果を期待している。
それから忘れてはならないのは、Webマーケティングにおける直接的なコンテンツ利用だ。
実は、ベルフェイスにマーケティングチームが発足したのは今月から。創業して今まで開発とカスタマーサクセスばかりやってきた骨太なベンチャーだ。
(余談だが、最近のベンチャーは見せ方ばかり上手で中身がスカスカなのが多い気がする。これが昭和と平成のギャップなのだろうか)
マーケは日々A-Bテストや広告を展開してるわけだが、ここに照英さんと筋肉のインパクトのあるCMや素材が使える。照英さんの人気度は知らないが、少なくとも認知度はある。既知のものかそうでないかは人の心理に大きく影響するから、マーケの効果はすぐに現れるだろう(と、期待)
ベルフェイスは月額7万2000円〜 + 初期費用10万円だから、顧客あたり初年度売上は100万円〜になる。継続やアップセルを含めたLTV(Life Time Value)で見れば3億投資しても〜150社獲得で回収できる。中期的にこれくらいの新規獲得を上乗せできると思うならGO、厳しいならNO。私はGOだと思った。
③ I just wanna try
三つ目は、やってみたかったから。
ベンチャーを名乗るからにはいつかCMをやってみたいとかねがね思っていた。自社のCMをタクシーや電車で見たらきっと感慨深いだろう。その感情は、苦労して起業した人間にとっては間違いなく「報酬」だと思う。世界を変える、資産家になる、そんな先のビジョンの手前にある小さな報酬(達成感)だ。小さなことだが、ぜひ仲間と一緒に噛み締めていきたい。
[最後に]
今回のCMを作ってくれた監督は、山田孝之さん出演の缶コーヒー「GEORGIA」(ジョージア)CMなどを制作した方だ。撮影現場に同席させてもらったが、その徹底したこだわりに「これがプロフェッショナルか、、」と脱帽しっぱなしだった。前職で6000人の社長インタビュー動画を作ったが、「規格化、統一化」と真逆の『センスとオリジナリティ』の世界だ。成功は細部に宿るというが、1mmも妥協しないその姿勢に深く学ばせてもらった。
※ちなみに3人の「ヒラメ筋」は、プロのボディービルダーを別に撮影して合成している。筋肉の輪郭を鮮明にする為にアイシャドーで影をつけたりしていた。
※パン!とお尻を叩いてズボンの裾が上がる効果は後ろでディレクターさんが紐を引っ張っるというアナログ100%だが、3人➕3人(計6人)のタイミングを0コンマ秒で合わせるのは至難の業で、このシーンは何十テイクもやり直した。
0.1%単位で正確に計測できるweb広告と違い、マス広告は効果測定が難しい。なので他社は(特にITベンチャーは)web広告にばかり傾倒する。だからこそ、その手法を戦略的に使えるようになれば大きな手札になるはずだ。
※オマケ