SNSを捨てよ、商店街へ出よう
すごい記事を見た。
🐬「こりゃあいかん、血の雨が降るぞ…!!」
あと先に申しておきますと、私過去にシンクタンクとして地方創生の取組みやってきたウーマンです。第一線からは退いてしまったけど、いちおう基礎知識とアンテナが拾う情報の範囲は広いつもりです。
1 福岡≠博多
私は福岡県内の大学に通っていたのだが、福岡には生まれ育った場所に深い愛情と誇りを持っている方々が多い。そして「福岡」と言っても1かたまりではなく、福岡・北九州・筑豊・筑後のエリアに分かれ、さらにそこに属する地域独自で個性豊かな歴史と文化が育まれてきた。県全体で同じラーメンがすすられ、同じ祇園山笠が執り行われているわけではないのだ。
先日某おしゃれ雑誌が「47都道府県のおいしいもの紹介!」みたいな特集を組んでいた。1都道府県につき2エリアほどの食文化が紹介されていたのだが、福岡県として紹介されいたのはなんと福岡市と糸島市。
こりゃあ戦争になるぞ、と思っていたら案の定、北九州地区出身の友人はこの件に対してぷりぷり怒っていた。彼女は目を三角にしながら語った。「目先のキラキラに溺れる者に地域の魅力を語る資格なし」と。
2 (一応)福岡に縁のある人間から見た「福岡つながり応援」プロジェクト
そう、彼女の言葉を借りるならば、この「福岡つながり応援」プロジェクトとやらは、まさに「目先のキラキラに溺れて」地方創生をやろうとしたことで、やらかしてしまったように思えるのだ。
渦中の「福岡つながり応援」プロジェクトはこちら。
ざっと読んだが、一言で言うなら「薄っぺらい」。県内60市町村すべてを取り上げていないどころか、載せている3市の情報も薄い。instagramの「こっそり教える!ディープなお店!」系の投稿の方がまだマシなレベルだ。
よくできている「地方創生」系のメディアは、良い意味で広く浅いが、記事の1つ1つはディープで泥臭い。「書いた人が出会った人の声や肌に触れた風や土、喉を通った食事の味」が目の前に迫ってくるようなリアリティ感があるが、こちらにはそれが感じられない。文章表現の上手・下手という問題ではなく、物書きとして素人であろう学生さんや公務員さんでもそれをやってのける方は大勢いる。実際にその場所に足を運んで、人と話して、何かしらの体験をしてきたか。地方住まいの人間にはすぐにばれる。
そもそも紹介記事はいろいろ挙がっているものの、当プロジェクトが書いたと思われる記事はほぼない。リンクを押すと自治体か他の民間団体が書いた記事にジャンプする。てか何でリンク先がねとらぼなんだよ。あなたたちがねとらぼみたいなことするんじゃないのか?!
そのくせアンバサダーは大勢いる。一応アンバサダーの活動方針らしきものがあったので以下に示す。
これって取組みの効果はアンバサダーさんにしかなくないです?肝心の地方創生に意識向いてないですよね???
なお採用要件については特段表記がなく分からなかった。県外にも福岡愛の強い方はいるだろうから「県内にお住まいの方」に限る必要はないだろうし、ある程度取組み効果を出すならSNSのフォロワーは多ければ多いほど良いだろうから、要件についてはゆるいものと推測している。
このほか「福岡つながり応援」プロジェクトのサイトにはいろいろなコンテンツがあるのだが、例の件で大部分の記事が消えてしまったらしい。
なお過去の経緯やサイト自体の問題は、noteに詳しく書いている方がいらっしゃったので、記事を載せておく。
3 地方創生プロジェクト、半端な覚悟で立ち上げるんじゃないよ
ここまで書いていて、ますますこのプロジェクトの立ち位置が分からなくなってきた。「まち・ひと・しごと創生」なんて言葉もあるが、どれも作っている気配はない。
まとめサイトなんて星の数ほどあるし、YouTubeやInstagramには福岡の名所やグルメを紹介しているアカウントも、雑誌やテレビ番組でもある地域の歴史からトレンドまでを紹介している例はたくさんある。
最近は民間だけでなく、県や市町村、広域連携の団体が自らおもしろいコンテンツを展開する動きが出てきている。そして何より、愛する福岡を後世に残す&盛り上げるために、あちこち走り回り、汗をかき続ける福岡の方々(住んでいる・住んでいない関わらず)は大勢いるのだ。
一応、「つながり応援プロジェクト」のミッションは以下のようにある。
この頃流行りの言葉使えば良いってもんじゃないぞ???????
地方創生の仕事をしていたときにもしょっちゅう感じていたのだが、いわゆる「キラキラした感じのまちづくり」をしたい人の頭にある「つながり」とは、せいぜい半径3m(知り合いの知り合い程度)くらいしか想定していないことが多い。周りにいるのは前向きな人とポテンシャルの高そうな土地と家屋のみ。あと数年で朽ち果てそうな鉄道や、全校生徒が50人を切った小学校や、家代々の畑を必死に守ろうとするお年寄りの姿は見えていない。
そもそも地方創生の方針も当初からだいぶ変わってきている。最初こそ「地域の魅力発信して人呼び込もうや!」みたいな感じだったが、最近はどちらかというと「人呼ぶのも限界ありそうやし地域内の人材フル活用&関係人口&人以外の力で頑張りましょ…」的な雰囲気になりつつある。デジタル田園都市国家構想(名前変わりそうだけど)なんてまさにその色合いが強い。
今回の件について声を大にして言いたい。
地方創生にとって「バズる」ことは一手段であり目的ではない。
地方創生は、地方(=そこに暮らす人々と産業と文化)が生き残るための「生存戦略」である。極論を言えば人の生き死にがかかっている。
現地に足も運ばず、その土地の人や産業や文化にリスペクトもなく、ただ他人の積み上げてきたものに乗っかっただけでやった気になっているプロジェクトに、地方創生を語る資格はない!!!
まあ、私もそこまでやりきる覚悟が持てなかったので、地方創生の一線から退いたわけですが。今はかなり地面の奥深くにおります。
本当に地方が生き残るための「つながり」を作りたいんだったら、まずはその場所に足を運んで、商店街か飲み屋街か産直コーナーにでも行ってほしい。いきなり深いつながりを作るのは難しいだろうから、まずはそこにいるお店の方やご常連さんとお話をしてくるので良い。地方は上澄みのキラキラだけでできているわけではないので。
バズりと補助金狙いで地方創生やっているわけじゃないんだったら、それくらいやって当然だと思っている。逆に1つでもでかいモデルケース作るくらいやってのけたら、将来にわたって尊敬されるんじゃないだろうか。
芳田「北九州のオススメごはんってなに?」
上記の友人「資さんうどん」