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約束

昨年のこの時期、私は必死にピアノに向かっていました。
ある「約束」を守るために。

「先生、練習進んでる?」
ドキッとすることばです。

「先生、なんで校長先生になろうと思ったの?」
と同じくらいドキッとします。

「まあ、ぼちぼちな。」と歯切れが悪い返事をしてしまいます。
よく覚えてくれているなあと感心すると同時に、「このままではまずい。」と、焦る気持ちを抱えていました。ここ数か月です。

というのも、4月の始業式で、私はこんな話をしたからです。

「やりたいこと、目標を作りましょう。『今年は、これをやってみたい!』と、何か一つでもいいから、目標をつくり繰り返し努力することです。先生も一つは決めました。ピアノで1曲弾けるようになることです。実は、この小学校へ来ることが決まって、練習を始めました。もちろん上手ではありません。目標は、6年生を送る会です。先生の腕前が上達するかどうか分かりませんが、聴いてもらえるように努力します。」

確かに言いました。

私は、息子が小さい頃よくした「ゆびきりげんまん」を思い出しました。どんな小さなことであっても、必ず「約束」を守る。子どもはそんな大人を信頼していくのだと思います。

私の楽譜には、赤ペンで「ド・ファ♯」などといったカタカナが書いてあります。「ここは一緒」など、自分にしか分からない書き込みもあります。

この楽譜は、見られると実に恥ずかしい。途中で間違って止まると、頭が真っ白になることも。指づかいは、たぶん…間違っているでしょう。

ただ、井上陽水さんの「少年時代」を通して伝えたい気持ちは、楽譜の赤ペンではなく、鍵盤に込められたかなと思っています。

【2023年3月7日 初出】

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