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短編小説/小説/ショートストーリー

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歪んだそれに名前はない 04|連載小説

歪んだそれに名前はない 04|連載小説

頬切る風が、俺の頭を冷静にしていった。

新宿の歓楽街を抜け、スラムの様な一角にそこはある。
寂れたビルの3階。俺は手馴れた様子でドアノブを回した。

「ねえ…あなた…」
少し呂律の回らない言葉が聞こえて、慌てて身を起こした。
妻の隣で眠るのはいつぶりだろうか。
ソファーベッドで、いつの間にか眠りに落ちていた様だ。

「どうした?」俺は妻の顔を覗き込んだ。
妻は、顔をくしゃっとさせてこう言った。

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歪んだそれに名前はない 03|連載小説

歪んだそれに名前はない 03|連載小説

「もしもし」
慌てて出た携帯から聞こえて来た親父の声は、重苦しかった。

「病室に来い」
それだけ言って切れた。
ざわつく胸を、どうにか冷静に保とうと努力しながら、最上階の個室に向かった。

「あーあー、翼…翼ね…来てくれたのね。私の可愛いたった一人の息子。今まで何処に行っていたの?ママ探したのよ、いっぱいいっぱい探したわ。おもちゃ売り場にまたいたの?欲しいものがあったら言いなさい。何でも買ってあ

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歪んだそれに名前はない 02|連載小説

歪んだそれに名前はない 02|連載小説

霞む視界に、かつて愛を誓った人が微笑んでいた。
「…………」
私が発した言葉も、彼が発した言葉も何も聴こえなかったけれど、私達は愛の言葉を交わしたんだと安心して、私は彼の胸に飛び込んだ。

逆さまに落ちて行く、落ちて行く景色を私は幻覚の中で何度も見ている気がした。
私の手を振り解き……あの人は遠くへ逝った。

母親が病院で処置を受けている間、俺と親父は一言も交わさずに、じっと待合室のソファーに座っ

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歪んだそれに名前はない 01|連載小説

歪んだそれに名前はない 01|連載小説

波の音がすぐそばで聴こえる。
ボンネットの上に座り、煙草の煙を夜空に吹き掛けた。

あの夜も…こんなに星が瞬いていた。

15歳の時には、俺は夜遊びの常習犯だった。
察にも何度も補導され、酒に酔ったままの母親が迎えに来るのはお決まりだった。

帰れば母親からビンタされ、俺は殴り返した。
父親は帰って来ても、直ぐに別宅に向かい翌日の夜に帰ってくる、それが我が家だった。
父親は徹底して、俺を居ないもの

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