Kazu

揺るがぬ愛と絆。 小説、詩、エッセイ。

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0309|詩

ザワザワする不穏な風が 頬に過ぎる瞬間 「お前は馬鹿だ」 悪魔の笑いが聴こえる 耳を塞いでも無駄 目を閉じて私は安全地帯に逃げ込む そこは秘密の小部屋 天井までの本棚には びっしり隙間なく 本が収まり 立て掛けてある梯子は私を待っている 「手に取る本は決まってる」 そう呟いて梯子を上る 『0309』 ここに書いてあるのは 二人が歩んで来た道程 まだまだ半分以上は真っ白なページ そこに記される言葉は 私達が作り出す未来 「大丈夫、傍にいる」 耳元で聴こえた声 「知

    • キャラメルとチョコチップクッキー|エッセイ

      甘いものが好き。お菓子(洋、和)が好き。 今はキャラメル、塩キャラメルとチョコチップクッキー。 沈んだ時、イライラした時、辛い時。 口に入れると、一瞬でその甘さに癒されて、ほんの少し幼少期の幸せだった時間を思い出す。 大人になって、改めて絵本や童話を読んでみると、子供の私には当たり前の様な世界が実は奥深い哲学や、その文体に隠された暗号を提示してくるのだ。 ただ癒されるだけなのもいいけれど、奥にある鍵を手に入れたくて、体調が安定している時は古本屋の絵本コーナーで宝探し。 最近

      • 不確かな者|詩

        確たるものはこの世に存在しない 皆変化しながら水の流れによって 変容して行くのに 女狐の戯言 思い込みの片想い 醜い顔なら仮面を外すな 鋭利な切先でアイツの喉元を切り裂いた そこから流れ出たのは虚言 真実なんて何処にもないんだよ、と 笑いながら息絶えた 握りしめた拳を開いても空っぽ 私の無能さが空に映し出される 無知で愚鈍な私を必要とする人は この世に存在しない 真っ黒な冷たさに身を投げた 沈んで行けばいい 私など ガラクタの様な私 価値ない私の言葉は塵と消えた も

        • 歪んだそれに名前はない 04|連載小説

          頬切る風が、俺の頭を冷静にしていった。 新宿の歓楽街を抜け、スラムの様な一角にそこはある。 寂れたビルの3階。俺は手馴れた様子でドアノブを回した。 「ねえ…あなた…」 少し呂律の回らない言葉が聞こえて、慌てて身を起こした。 妻の隣で眠るのはいつぶりだろうか。 ソファーベッドで、いつの間にか眠りに落ちていた様だ。 「どうした?」俺は妻の顔を覗き込んだ。 妻は、顔をくしゃっとさせてこう言った。 「私と結婚してくれてありがとう。私は…酷い女なのに、あなたは私が良いって。 あの

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          歪んだそれに名前はない 03|連載小説

          「もしもし」 慌てて出た携帯から聞こえて来た親父の声は、重苦しかった。 「病室に来い」 それだけ言って切れた。 ざわつく胸を、どうにか冷静に保とうと努力しながら、最上階の個室に向かった。 「あーあー、翼…翼ね…来てくれたのね。私の可愛いたった一人の息子。今まで何処に行っていたの?ママ探したのよ、いっぱいいっぱい探したわ。おもちゃ売り場にまたいたの?欲しいものがあったら言いなさい。何でも買ってあげるわ。 そうだ!帰りにいつものレストランに寄りましょうね。翼の大好きなパフェ、

          歪んだそれに名前はない 03|連載小説

          歪んだそれに名前はない 02|連載小説

          霞む視界に、かつて愛を誓った人が微笑んでいた。 「…………」 私が発した言葉も、彼が発した言葉も何も聴こえなかったけれど、私達は愛の言葉を交わしたんだと安心して、私は彼の胸に飛び込んだ。 逆さまに落ちて行く、落ちて行く景色を私は幻覚の中で何度も見ている気がした。 私の手を振り解き……あの人は遠くへ逝った。 母親が病院で処置を受けている間、俺と親父は一言も交わさずに、じっと待合室のソファーに座っていた。 居た堪れなくなった俺は、外に煙草を吸いに出た。 無性に彼女の声が聴き

          歪んだそれに名前はない 02|連載小説

          歪んだそれに名前はない 01|連載小説

          波の音がすぐそばで聴こえる。 ボンネットの上に座り、煙草の煙を夜空に吹き掛けた。 あの夜も…こんなに星が瞬いていた。 15歳の時には、俺は夜遊びの常習犯だった。 察にも何度も補導され、酒に酔ったままの母親が迎えに来るのはお決まりだった。 帰れば母親からビンタされ、俺は殴り返した。 父親は帰って来ても、直ぐに別宅に向かい翌日の夜に帰ってくる、それが我が家だった。 父親は徹底して、俺を居ないものとして扱い、母親は世間体を気にして離婚しないだけの存在。 アルコール依存症になっ

          歪んだそれに名前はない 01|連載小説