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「笑顔で働き続けるために——対人援助職がバーンアウトを防ぐためのヒント」


はじめに

「人のために役に立ちたい」——介護福祉士や看護師を始めとした対人援助職に携わる方は、このような思いで毎日働かれていることと思います。

あなたの仕事が多くの人々の生活や健康を支えていることは、計り知れない価値があります。しかし、そんな大切な役割を担うからこそ、肉体的・精神的な負担は非常に大きく、しかもいつの間にか自分自身のことを後回しにしてしまいがちです。

そのような状況の中で、「最近なんだか心も体も疲れている」「仕事にやりがいが感じられなくなっている」と感じているとしたら要注意。それは、バーンアウト(燃え尽き症候群)の前兆かもしれません。私自身長年介護の現場で働く中で、心と体の限界を感じたり、自分を見失いそうになった経験があります。
今回は、対人援助職の仕事をしているあなたに向けて、バーンアウトを防ぎやりがいをもって働き続けるために「これだけは知ってほしい」と思う内容をまとめてみました。人をケアする仕事をしているからこそ、最優先すべき自分自身のケアについて、一度立ち止まって考えてみませんか?

1. 「完璧」を目指すのではなく、「最善」を尽くす

対人援助職は、相手の幸せや安心が自分の喜びになる反面、「自分の対応は不十分だった」「もっとできたのではないか」と自分を責めてしまうことがあります。

ですが、どれだけ努力しても、すべての問題を解決することは不可能です。重要なのは、「自分のできる範囲で最善を尽くす」こと。仕事での一歩一歩が相手にとって大きな支えになっていることは間違いありません。あなたがいるだけで利用者、患者は安心なのです。

小さな成功や利用者、患者などからの「ありがとう」という言葉を素直に受け止めていくことが、モチベーションを保つ鍵となります。「これで十分」と自分に言い聞かせる勇気を持ちましょう。

2. 相談する勇気を持つ——助けを求めることは強さです

悩みを一人で抱え込むことはありませんか?「忙しい職場で迷惑をかけたくない」「自分が弱いと思われたくない」といった気持ちから、相談するのをためらってしまうこともあるでしょう。

しかし、助けを求めることは弱さではなく、むしろ強さの表れです。例えば、同僚や上司に悩みを話すことで、意外な解決策や共感を得られることがあります。また、職場の外で信頼できる友人やカウンセラーなどの専門家に相談するのも有効です。
私自身、仕事の悩みを誰にも言えずに抱え込んでいた時期がありました。結局その流れで介護の世界を離れてしまったのですが、その後心理学やカウンセリングについて学ぶ中で、社会には今まで思っていた以上に話しを聞いてくれる人、相談にのってくれる人がたくさんいることを知りました。
もっと早く知りたかった…という思いがあります。だからこそ、かつての私と同じように悩み、葛藤を抱えながらも精一杯頑張って働いているあなたに、少しでも役立つ情報をお伝えしたいと思ったのです。

自分一人で抱え込む必要はありません。「大丈夫?」と声をかけるのも立派なスキルですが、同じくらい「助けて」と言えるスキルも大切です。相談することで問題が解決するとは限りませんが、心が少し楽になることは間違いありません。「助けてほしい」と言える自分を肯定してください。

3. オンとオフを明確に分ける工夫を

対人援助職では、仕事中も相手に寄り添う姿勢が求められるため、心身が常に緊張状態にあります。その結果、勤務後も気を抜けず、仕事のことを考えてしまう人が少なくありません。あなたはどうですか?

オンとオフを切り替えるためには、自分なりのルーティンを持つことがおすすめです。

  • 帰宅時にお気に入りの音楽を聴く

  • 軽い運動やストレッチをする

  • 香りの良いお風呂にゆっくり浸かる

また、勤務時間外に仕事関連の連絡が入るのを避けるため、スマートフォンの通知を切るなど、物理的に「オフ」の空間を作るのも効果的です。
ただし、在宅のケアマネジャーなど勤務時間外でも連絡対応が求められる職種の方は、スマートフォンの通知を切ることは現実的ではありません。その場合は、以下のような対応が考えられます。

  • 対応範囲を明確にする:緊急性の低い内容については、翌日以降に対応できる旨をあらかじめ周知しておく。

  • 短時間のリフレッシュ時間を確保:連絡の合間に深呼吸やストレッチ、短い散歩を挟み、自分をリセットする習慣をつける。

  • 仲間と連携する:負担を一人で抱えないよう、職場でサポート体制やシフト管理について話し合う機会を持つ。

どのような形でもよいので、自分が仕事から完全に解放される時間をつくることです。

4. 「小さな幸せ」を見つける力を育てる

忙しい毎日の中で、ふとした瞬間の幸せを感じることは、心の栄養になります。

例えば、以下のような些細な瞬間を大切にしてみてください:

  • 同僚と交わした笑顔や冗談

  • 利用者さんからの「ありがとう」という言葉

  • 仕事の後に飲む一杯のコーヒー

これらの小さな「喜び」を日々意識することで、自分の気持ちを前向きに保つことができます。

5. プロとしての距離感を持つ

相手に深く共感することは、対人援助職に欠かせないスキルです。しかし、相手の感情に寄り添いすぎて、自分自身がその影響を受けてしまうこともあります。

しかし、すべての問題を解決するのは難しいことを理解し、適切な距離感を保つことが重要です。ここでは具体的な工夫をいくつかご紹介します:

・「相手のため」と「自分の限界」を分けて考える
利用者さんの気持ちを想像し共感するのは大切ですが、その苦しみを自分の問題として背負い込まないことを意識しましょう。例えば、相手が解決しなければならない問題に対しては、「できる範囲で寄り添い、サポートする」というスタンスを保つことです。

・問題を言語化し、具体的な行動に落とし込む
例えば、「夜眠れない」と相談された場合、「眠れないのは心配ですが、今できることは主治医に相談することです」と具体的な解決策を提示し、自分の役割を明確にします。感情だけに引きずられることなく、プロとして適切な対応に集中できます。

・心のクッションを意識する
「一歩引いて見る」という心のクッションを持つことも大切です。これは冷たい態度ではなく、プロフェッショナルとして冷静な視点を保つための方法です。たとえば、心の中で「これは自分の生活や価値観とは別の世界」と意識し、相手の状況をその人自身の課題として捉える練習をしてみましょう。

・支え合う環境を作る
同僚やチームと定期的に情報共有することも有効です。一人で抱え込むのではなく、誰かに話すことで、気持ちが整理され、適切な距離感を再確認できます。

プロとしての距離感を持つことは、相手に対して最適な支援を行いながら、あなた自身を守るための大切なスキルです。仕事を続けるために、このバランス感覚を磨くことを意識してみましょう。

6. 心のSOSに耳を傾ける

忙しいと、自分の不調を見過ごしてしまいがちです。「なんとなく疲れが取れない」「常にイライラしてしまう」「眠れない」と感じるときは、心と体が助けを求めているサインかもしれません。

  • 無理をせずに休む

  • 趣味や好きなことをする時間を作る

  • 必要であればカウンセラー、精神科医などの専門家に相談する

自分を労わることは、プロフェッショナルとしての成長にも繋がります。

おわりに

あなたが今いる場所で頑張り続けていること、それ自体が素晴らしいことです。でも、あなた自身が疲れてしまっては、誰かを支える力を発揮することはできません。

「まずは自分を大切にする」ことを、今日から始めてみませんか?その一歩が、あなたの笑顔と健康を守り、仕事の喜びを長く味わうための鍵になります。

最後までお読みいただきまして、ありがとうございました。この記事の内容が、少しでもあなたのお役に立てれば幸いです。

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Kazu(菊川和幸)
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