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BtoB営業(主にHR業界)のアップデートに想いを馳せる

kazooです。スタートアップで事業開発/セールスを担当しています。
noteでは、主に人間の熱量やモチベーション、そして人と人との関係性に焦点を当てながら、組織や人の営みの本質について思いを馳せています。

今回は「BtoB営業(主にHR業界)の今後」に思いを馳せていきたいと思います。
昨今の目覚ましいAI技術、特に生成AIの進化によって、私たちの働き方やビジネスの在り方は大きく変わりつつあります。多くの業種で「専門性」や「経験」が生み出す価値が見直されており、BtoB営業の現場でもその変化を肌で感じるようになりました。

私は長らくBtoBの営業に携わってきましたが、とりわけ組織開発や人材育成の領域に深く関わってきたこともあり、AIの進化と営業の変化について整理したいなと思っていました。そこで本稿では、これからのBtoB営業がどのようにアップデートされるのか、そして私自身が感じていることをまとめてみたいと思います。



「事前調査」や「提案ストーリー作成」の変化

BtoB営業において、従来は企業の課題把握や提案ストーリーの構築こそが営業の腕の見せどころでした。企業研究を徹底し、業界知識を活用しながら競合との差別化を図ってきたのです。
しかし、生成AIの台頭により、企業の現状やニーズ分析、課題仮説の立案といった「情報整理」作業が瞬時に誰でも精度高くできるようになりつつあります。大量の公開情報を収集し、それらを整理・分析しやすいツールが充実してきたことで、いわゆる「情報格差」はどんどん小さくなっているのです。

  • 情報格差がなくなる
    かつては「〇〇業界に長く携わってきたからこその洞察」を武器に提案を組み立てられました。しかしAIを活用すれば、業界知識や最新理論などを短時間で吸収でき、類似のケーススタディを探すことも容易です。そのため、営業が持っていた情報面での優位性は、以前ほど強みになりにくくなっています。
    結果として、顧客も同じ情報を入手しやすくなり、「課題の特定から解決策の洗い出し・選択」までを自前で行う傾向が高まると思います。

  • 提案の質と多様性が問われる
    顧客が同じように情報を得られる今、営業としては「すでに顧客が知っている情報を、単にまとめるだけ」では不十分です。サービスの質や柔軟なソリューションを提供できるかが大きな差別化ポイントになっていきます。「かゆいところに手が届く」最適な提案や、業界を越境したような新しい発想が求められると思います。


組織・人材にかかわるデータの捉え方

私がこれまで力を注いできた組織開発や人材育成の領域では、テクノロジーの進化とともに取得できるデータの量と種類が格段に増えてきました。アンケート調査やエンゲージメントサーベイのような主観的データだけでなく、生体情報などの客観的データを扱うケースも増えてきています。

  • 主観的データの限界
    組織内で実施するアンケートは、どうしても所属メンバー同士の力学や社風の影響を受けます。そのため、たとえ回収率の高い調査結果であっても、ある程度は歪んでいることを前提に解釈しなければなりません。数字に表れない社内文化や個人のバイアスを理解して初めて、正しい打ち手が見えてきます。

  • 客観的データの活用の難しさ
    ウェアラブルデバイスなどを通じて得られる身体データや行動データは、個人の認識によらない、いわば「嘘のつけないデータ」です。とはいえ、プライバシーやセキュリティの観点から収集には慎重にならざるを得ない面もあります。また、客観的データを取得できたとしても、それをどのように解釈するかが重要です。組織や人を理解するには、数字だけでは説明できない文脈や背景を汲み取る必要があります。

  • 深い理解と解釈力が鍵
    組織・人にかかわる分野のBtoB営業では、「表面化していない情報をどう拾い上げるか」という眼力がますます重要になります。現場の一次情報を入手するときのコミュニケーション、組織文化の根底にある価値観の理解など、専門性というよりも「コンサルティング力」「関係構築力」がモノを言うのだと思います。結果として、顧客が本当の課題に気づいていない可能性があるからこそ、営業側がそこを的確に見極め、提案の質を高めることが求められます。


これからのBtoB営業に重要な能力

上記を踏まえると、今後のBtoB営業では「顧客にフィットしたサービスを見極め、提案・実行できる」コンサルティング力やクリエイティビティが一層求められると感じています。ここでは、その具体的なポイントを整理してみます。

  1. 課題特定・コンサルティング力

    • 組織・人材に関わる分野ほど、「なぜその現状が起きているのか」を突き止めるには深い洞察が必要

    • データだけでは拾いきれない“当事者たちの認識”や“発話されていない不満・希望”など、見えない部分をどう汲み取るかが差別化につながる

    • 一般論を超えた個社ごとの事情を把握し、多様な仮説を提示しながら臨機応変にサポートしていく必要がある

  2. 提供ソリューションの柔軟性・創造性

    • BtoB営業は自社のプロダクトやサービスを販売するだけが目的ではなく、顧客企業が持つ課題を解決することがゴール

    • そのためには、サービス自体の柔軟性を高めたり、業界の枠を越えたクリエイティブな解決策を模索したりする姿勢が重要

    • ときには自社のサービスをカスタマイズし、顧客が「こんなことまでやってくれるんだ」と感じるような新たな価値提案をめざすことが有効

  3. ブランディングとストーリーの構築

    • 情報格差が小さくなればなるほど、「誰が提供しているか」「なぜそれをやっているか」というストーリーやブランドの在り方が差別化要因になる

    • 「〇〇ならこの会社」「この人に相談したい」と思ってもらうために、実績や専門性だけでなく、自社・自分の想いやストーリーを発信していくことが大切

    • 顧客との長期的な信頼関係を築くためにも、会社や営業個人としての人間性・世界観を伝えていくことがますます重要になる

  4. テクノロジーの進化に対するモニタリングと適応

    • 一年前には画期的だったサービスが、テクノロジーの進化によって一気に時代遅れになってしまうことも珍しくない

    • 自社サービスを信じつつも、市場の変化を常にモニタリングし、必要であればすぐに軌道修正やアップデートをする柔軟性が求められる

    • AIの進化によって「どこで価値を生み出すか」が変わっていく局面だからこそ、半歩先を見据え、超スピードでの行動が欠かせない


おわりに

生成AIをはじめとしたテクノロジーの進化が、BtoB営業に与える影響は計り知れません。営業と顧客の情報格差が小さくなる一方で、BtoB営業の本質は「顧客の課題をどれだけ深く理解し、どれだけ最適なソリューションを提示できるか」にあることは変わりません。

しかし、AIが提供する“客観的”な情報だけではわからない企業文化や組織の微妙なニュアンス、そこに働く人たちの本音やモチベーションにこそ、大きな課題の本質が隠されていると私は思います。それらを見極め、解釈し、共有し、新しいアイデアとともに解決策を提示するのが、営業としての価値となるはずです。

テクノロジーを味方につけつつ、いつの時代も変わらない“人と人との本質的なやりとり”を大切にしながら、BtoB営業をアップデートし続けていきたいと思います。

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