読書感想文「鳥類学者だからって、鳥が好きだと思うなよ。」川上 和人 (著)

 あー,面倒臭い。頭のいい人特有の話があちこちに飛び,自分の周りのネタを早口でぐいぐい押し込んでくる,そう,あなたも経験したことがあるだろう,あの喋りで全編,貫かれる。著者は,NHK「子ども科学電話相談」でお馴染み,我らがバード川上だ。テレビ出演もあるのでご尊顔を拝見したこともある人も多いだろう。このまくしたてる文体は気持ち悪くなる人もいると思うので,受け付けない人もいるだろう。
 ただ,最終章でバード川上は素直な本音を吐く。「テーマにこだわらず長期的に明るく楽しく鳥類学に励むことだ。鳥にはまだまだ謎がある。その秘密を紐解き,お茶の間に話題を,科学に新知見を提供するのだ」と具体的な目標を披露する。鳥類学の道には,受動的に大学で始まり,指示や質問に対し受け身に生きてきたと告白する。
 そして,「受け身の達人」は,こう言う。「世の中は積極性至上主義がまかり通り「将来の夢」を描けない小学生は肩身の狭い思いをするが,受動性に後ろめたさを感じる必要はない。これを処世術にうまくいきていくのも一つの見識である」。そうした人生の捉え方と幸運の話でもある。



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