読書感想文「日本経済学新論」中野 剛志 (著)

 副題をつけるなら「国家と経済」である。
 なぜ,国家なのか。現実の社会生活がどう営まれているかの理解ができていれば,自ずから導かれる。下村治の言葉である「現実の世界経済は,政府,中央銀行,各国通貨,為替レートといった,国境を前提とした『国民経済』から構成されている。その国民経済の中で,人間は生活を営んでいる」からだ。
 現実社会の課題に向き合うとき,先例はなくゼロからの実践こそ求められて「やるしかない」中で,考えに過ちがあれば修正し,柔軟に考えを変えることのできるクリエイティブと,健全なナショナリズムが大事であると教えてくれるのが,この本で取り上げられる渋沢,高橋,岸,下村の四人だ。彼らは,国家の経済を考えた際に,積極財政と保護主義を訴えた。
 結局,この30年の「改革派」とやらが旗を振ってきたのは,財政健全化と規制緩和,グローバル化で,結果,国民経済をすり減らし,ただただ,国力を弱体化させた。
 アンポの岸とばかりに,岸を軍国主義者・国粋主義者,国家統制経済主義者と決めつけることのバカバカしさがよくわかる。学ぶことによって得る謙虚さをあらためて思う。


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