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もう一度会いたい人。

私が高校3年の時お世話になった予備校の、ある先生(以降N先生とする)のことを綴ります。

高校を卒業してから、時折受験期のことを思い出しては無性にその先生に会いたくなる。
でも理由ははっきりと分からずにいた。

色々考えを巡らせてたどり着いたのが、
先生にふわっとした好意を抱いていた、という結論。(恋愛的なものではなく、尊敬の意味での好き、人柄が好き、といった感じ。だと思う。)
当時も先生を好きだなと思うことは何度かあったが、はっきりと自覚したのは最近のことだ。

そうは言っても自分から堂々と「先生が好きだった」と言うのもなんだか違うなと思っていて。
異性として…という意味では無くとも、なんだかストレートに言うのは気が引ける。

だからこの事は知り合いの誰にも言えていないし、
もともと言う気もない。
ひっそりと心の中に留めていたものをこの場で言語化するのも少し躊躇してしまうが、
ただちゃんと自分の気持ちを言葉にしたかったので、ここで整理させて頂きたい。

昔から私は男性が苦手だ。
うまくコミュニケーションが出来ない。
何を話せばいいのか分からない。
男の人というだけで壁を作ってしまい、
気付けば相手に避けられていたり、怖がられていたりして、中々異性とは良い関係を築けずにいた。

私の男の人への苦手意識は高校生になっても健在であり、彼氏はおろか男友達もろくにいなかったが、部活動に全力投球していたことを言い訳になんとか逃げてきた。


そんな私が何故か惹かれてしまったらしいのがN先生だ。

N先生は私が予備校に通い始めて数ヶ月した頃に突然現れた人物だった。

失礼ながら顔はイケメンとは言い難いし、背も低め。髪も重たい感じで、外見の第一印象はあまり良くなかった。
堅い。地味。真面目。近付きがたい。そんな感じ。
そして、私を含め生徒達がやり残している確認テストについて、帰り際に毎回、早くやるようにと口うるさく催促してくる。
(当時そういう担当だったのかもしれない)
面倒くさそうな人が入ったな…正直そう思っていた。

事務的なことで何度か話さなけらばならないタイミングがあったのだが、会話は案の定噛み合わず、上手くやっていけそうな感じはしなかった。何なら出来るだけこの人と話す機会を作らないようにしようと思ったほど。

しかし、そんな私の考えがふっと変わった出来事があったのだ。一度エレベーターで私と先生の2人になり、ほんの一瞬ではあったが大学について話した。先生が某有名大卒だとその時初めて知って驚いている私に、先生は人差し指を口に当てて、言いふらさないようにとお茶目に釘を刺した。

あ、笑っていると可愛いんだ。

新しい一面が見られて嬉しかったし、
意外と普通に話せる人なのかもしれないと思った。
そしてその事実を今私だけが知っているのだとしたらなんだか嬉しいな、と感じた。

他にもよく覚えている(嬉しかった)エピソードがいくつかある。

年明けに髪をばっさり切ったことに、かなり経ってからだったが気付いてわざわざ声を掛けてくれた。

頭痛が酷かった為塾から早めに帰った日の翌日、私を見つけるなり「もう頭痛大丈夫?」と声を掛けてくれた。

センター試験後、塾で自己採点をしていた時、他にそんなことをしている生徒は居なかったにも関わらず、高得点を取れた嬉しさを抑えきれずに良かった科目の点数を思わず先生に報告しに行った。
その時先生は急に報告してきた私に驚きつつも、嫌な顔ひとつせず褒めてくれた(気がする)。

私立大入試の前々日、明日も来るかどうか尋ねられた。なぜか聞いたところ、(もし明日=前日に塾に来ないなら今日が入試前に激励出来る最後の日だから)「頑張れって言おうと思って」とのことだった。

2月から勤務する校舎が異動になったらしくぱったり塾に来なくなったが、国公立入試の前日にだけ、応援しに校舎に来てくれていた。

私が1人でお昼を食べていると、「〇〇(私の名前)を見に来た」とわざわざ私の側まで来てくれ、入試のことなどを色々話した。
異動になったことを私が寂しがっていると思われたのか、「(異動先の校舎に)いつでも会いに来れるじゃん」と。
おそらく冗談だと思うが、会いに行っていいの??と思ってしまった。
また、同じ日に、以前私が塾にスマホを置き忘れて帰ってしまった、という何の面白味もない取るに足らない話を何故か覚えてくれていて、話題に出してくれた。
その日の帰り際、激励してくださいと頼んでみたところ、頑張ってね、と可愛く言ってくれた。

その後、先生やアルバイトの大学生からのメッセージ入り色紙を貰い、お礼を言って帰った。
この日以来一度も会っていない。

一見生真面目で人間味のない人のように思われたが、実はお茶目で心優しい一面もある人だった。
ありきたりな言葉だが本当に「人は見かけによらず」なのだなぁと実感した。
生徒数も多いのに1人1人をよく見ていて、私のような気難しい一生徒のことも気にかけてくれ、励ましてくれた。それが凄く嬉しかった。
私自身がそのような大人にあまり出会ってこなかったからか、N先生は今現在もなお私の中で特別な存在である。
私にとって信頼でき、好感を持てる大人の1人だった。
前述の通り私は基本男性が苦手で極力関わらずにいようとしてきたが、この人には今までのような苦手意識が芽生えず、むしろもっと親密になりたいとさえ思った。
もっと質問に行って教えてもらえばよかったし、
もっと他愛ない話もしてみたかった。
当時そんな勇気は無かったし、
今思ったところでどうしようもないのだけれど。

先生に会いたくなった時には、あの最後に会った日に貰った色紙の先生からの直筆メッセージを読む。
「いつも通りの自分の力を出せれば大丈夫!」
ありきたりな応援メッセージではあるが、その字を見るだけでちょっぴり心が落ち着くような気がするのだ。

今でも会いたい。とても話したい。
自分でも何をしているのだろうと呆れるが、たまに駅でばったり出会したりしないものかと人混みの中にその姿を探してしまうこともある。

またいつかどこかで会えたなら。
その時にはこの気持ちと感謝をちゃんと直接伝えたいと切に思う。

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