ホテルをイベントでブランディングするということ
ホテルは経年優化する
”The Basics Fukuoka”
もともとは1993年にハイアットリージェンシー福岡としてデビューしたホテルです。
私はこのホテルのバンケットの演出に関わらせてもらっていたご縁で長くお付き合いさせてもらって来ました。
このホテルが2020年よりリブランディングすることになり、社長そしてGM(ホテル総支配人)に対して、新しいブランドのためのイベントや演出を提案するチャンスをいただきました。
その際、このホテルの躯体や良いものを残しながらブランドを変えていきたいとの方針をもらいました。
このホテルは躯体が豪華で博多の南エリアのシンボル的な印象もあったので内装も外装も保存されることを嬉しく感じました。
新しいホテルがスクラップ&ビルドで話題になる、そんなトレンドも感じていましたので、月日を重ねた歴史とともにホテルがバージョンアップしていくことにワクワクしたのです。
設計デザインは当時、世界的建築家であるマイケルグレイブスさんが担当したこともあり、その文化的価値も保存されて新しい価値が重ねられていく。
ホテルは経年優化する。
年を重ねた価値が評価されて欲しい。
そう感じました。
コンセプトは知的好奇心を加速する
そして新たなホテルのコンセプトは「知的好奇心を加速する」でした。
本とアート、そして音楽がこのコンセプトを体現するためのキーワードとなりました。
松岡正剛さんの編集工学研究所がブックライブラリーを、当社が音楽やイベントの演出面を担当させてもらうこととなりました。
このコンセプトを体現するために当社がタッグを組んだのは「松浦俊夫」さんでした。
多くの音楽家、選曲家とお会いする過程でたどり着いた方でした。
松浦俊夫さんとホテルの演出面を一緒に行っていきたい。
そう考えたのは彼が提唱している、「ここではない、どこかへ」
このコンセプトに強く惹かれ共振し、ご一緒に進めてもらうことを決め、ご提案という流れとなりました。まさに日本でもなく福岡でもなく、空間の演出を通してここではない、どこかを感じて欲しい。そう強く感じたのです。
ホテルは体験でブランディング出来る
ホテルへ泊まると私はそのホテルで出来るだけ時間を過ごしたいと思っています。
食事やお酒もできるならそのホテルの施設内で利用したい。
ホテルは泊まる場所ではなく、体験をする場所だと感じているからです。
どんな音楽があり、どんなイベントが行われ、どんなカクテルがその日のおすすめのカクテルなのか。
すべてにホテルのメッセージが込められそのメッセージを体現するのがイベントなのだと考えています。
そんなホテルのメッセージを届ける顧客体験としてのイベントを松浦俊夫さんをオーガナイザーに迎え組み立てました。
第1回のイベントは音楽とワイン、そしてワインとのペアリングとしての地域の話題の飲食店のスペシャルフードでした。
THE SCENE Vol.2 ART × MUSIC MARKET
2023年5月はホテルロビーをアート展示するミュージアムへそしてアートを買うことの出来る”蚤の市”へというコンセプトで行われました。
10日間の展示のスタートにはオープニングレセプションが行われ、DJ松浦俊夫、ライブペインティング、ホテル壁面へのプロジェクションと演出でパーティーに彩りが添えられました。
この日のために東京、そして地元福岡からアーティストが集結し、このイベントのための限定作品も展示されました。
オープニングレセプション終了後、10日間に及ぶ展示期間は、松浦俊夫さんがこの期間のためだけにキューレーションした音楽もアートと共にホテルロビーに響き渡りました。
普段、宿泊することがないと足を運ぶ機会が遠のくホテルではありますが、ホテルへアートを観に行く、買いに行く、音楽に耳を傾けにいく。
ホテルは文化的で身近でそして感性を刺激してくれる場になる。
そうやって”新たな体験”を届けていくことでホテルが届けたいメッセージが拡がっていきホテルのブランド、そしてストーリーがカタチづくられていくと思います。
30年前に建てられたホテルが今でも美しく聳え立っているように経年優化して誇れるホテルが作られていく。
そんなブランディングをイベント=体験という側面で実現していくチームを私は作っていきたいと思います。