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だから、私は子どもより早く寝られない~子どもの不眠と抑うつ

(これは私の話。徹頭徹尾、私と我が家の話)

もう1週間、夜更かしが続いている。

寝るのは早くて1時半、遅ければ4時前。空が白み始めて、小鳥が鳴き始め、さわやかさ満点の状況でぐだぐだで布団に入る。最悪はリビングに座布団を2枚並べて、毛布を持ち込み、明るい照明の下でうつらうつらした晩。


夜更かしの弊害

自分が寝たい時刻に寝られない、眠くなった時に寝られないというのは、睡眠時間の不足よりも疲れる。疲労困憊。くたくただ。イライラする。自分がとげとげしくなるのが分かる。

いうまでもなく翌朝の起床時刻はダダ下がり。お昼を回る。活動時間が大幅に削られる。

なぜ夜更かしか?…子どもよりも早く寝られないから。

子どもは小さい?…問題の子は中学3年生の男の子。

放って寝たら?…それはだめ。

なぜ?

なぜ?

この子は児童精神科で起立性調節障害の診断を受けている。加えて抑うつが強い、強迫性傾向あり、不眠症状なども主治医に認められている。症状が強いので自宅療養中。学校には行っていない、いわゆる不登校。

4年前、リンゴ病や虫垂炎など、病気を立て続けにして倒れたのが小学校6年の時。病気はどれも軽く、すぐに治ったのだけど、彼は起きられなくなった。だるい、つらい、起き上がれない、という。

体を動かすのが大好きな、がんばりやの体力オバケな子が「だるい、つらい、起きられない」という。


信じる理由なんて要らない

このころの我が家の様子を知る周囲の親たちによく言われるのが、「私なら、何さぼっているの!起きなさいって言っちゃうだろうな」ということ。どうして子どもが「ほんとうに起き上がれないのだ」と信じることができたのか?とよく聞かれる。

なぜだろう。

でも、私はすとん、と信じたのだ。ああ、この子がだるいというなら相当だるいのだろう。この子がつらいというならほんとうにつらいのだろう。この子が起き上がれないというなら起き上がれないのだ。

だから、私は彼を負ぶわんばかりにして病院を回った。小児科、内科、心療内科、神経科。この子の状況を説明してくれる医者を探した。行きついたのは児童精神科。

診断はあっという間に下りた。

言葉のうしろにあるもの

そして今。私は4年前と同じように、彼の言葉をそのまま信じる。いや、成長した彼の言葉は複雑になった。だから、彼の言葉を吐き出す、彼の心を信じている。彼の心の健やかさを信じる

それはやりたくない、と言えば、やれないほど疲れているのね。あいつは嫌いだ、と言えば、受け入れられる心の余裕がないのね。イベントに行きたくない、と言えば、行きたい心をくじくほど、つらいことがあるのね。

眠れない、と言えば、緊張が解けていないのね。寝付けない、と言えば、考えたくないことがぐるぐる回るのね。寝たくない、と言えば、焦っていることがたくさんあるのね。


自律神経と精神疾患

起立性調節障害は自律神経の病気だ。そして、自律神経と精神科領域はとても近い関係にある。事実、起立性調節障害と抑うつの関係について児童精神科で尋ねたら、抑うつの症状のひとつに起立性調節障害があるという説を教えてもらった。

抑うつ、うつ病。

これは子どもにも起きるのだ。そして、おとなに起きた場合と同様、この病気は油断ならない。この病気は命の危機がやってくる病気。命を危険にさらしながら進む病気。

だから、私は子どもより先に寝られない。

彼を放って先に寝たらどうなるか?

先に寝たらどうなるか?

彼はきっと本を読んだり、動画を見たり、やる気が起きれば数学をやってみたり。そうやってはたから見れば穏やかに時間を過ごすだろう

しかし、

夜更かしをしたことのある人なら知っている。夜は思考が堂々巡りをしやすい時間。この堂々巡りに抑うつがはまったらどうなるか?泣くだろうか、イライラするだろうか、叫ぶだろうか。

抑うつはイライラとして、周囲の目に映ることが多々ある。イライラの後ろにそびえるのはかなしみ。かなしみは心を冷やす。冷やしながら切り刻む。心の痛みは体の痛みになる。体の痛みに耐えきれなくなると、ひとは自傷行為に及ぶ。

私が恐れているのはこのこと。でももっといえば、自傷行為で済めばよい、とも思っている。

何も起きなければ、それでいい。


だから、私は子どもより先に寝られない

忘れてはならない。抑うつは、うつ病は、命の危機を呼び寄せる。油断ならない。

そして、かつて私が苦しんだ不眠の日々を、今まさに彼が戦っているなら、その彼を置いて「先に寝るよ」とは、私には言えない。ひとりで戦わせるなんて、できない。

寝ようよーと言いながら、うつらうつらしてしまっても、孤独な彼を忘れてなどいない人間が目の前にいるのは、彼の心を温めると私は信じている。うるさいなー寝ていいよ、と言いながら、自分を忘れない存在が彼をしっかりとこの世に留めて離さないと信じている。

だから、私は子どもより先に寝られない。

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