小説#11 さすらい猫の旅-闇夜の中には-
「今日は真っ暗だね…」
「ひよ…」
曇天の中、まだ落ち着ける場所が探せていなかったので森を先へと進む。
大きな木が茂り、鬱蒼とした中を進むので、全然足元は見えない。
途中で何度も足を取られては転んだ。
「ひよ、気を付けて…」
そうひよに声をかけたのもつかの間、
すぐそこに崖があり、足を滑らせ一気に下まで転がり落ちた。
「いった~…」
どうやら、怪我はなく、ただ尻餅をついただけのようだ。
「ひよ?どこにいる?」
そういえばひよが見当たらない。
一緒に落ちたように思えたが…
あたりを見渡して探し回る。
「ひよ!どこに行ったんだ?」
「ひよ!!!」
心配とは裏腹にひよの元気そうな声が聞こえた。
振り返るとそこには羽ばたいて飛ぶひよの姿が見えた。
「ひよ!飛べるようになったのかい!」
ひよは嬉しそうにオレの周りを旋回して見せる。
どうやら、落ちるときにとっさに羽ばたき、飛べるようになったみたいだった。
火事場の馬鹿力、とでもいうのだろうか。
「怪我がなくてよかった。」
ほっと安堵した。
ひよは、近場の木にとまると、そばにある川を見るように促してきた。
「なんだい?」
するとそこには、きらきらと輝く無数の光が飛び回っていた。
「わぁ…」
「こんなの見たことがないよ。」
時間が経つのを忘れる程、光瞬く中でたたずんでいた。
この記事が参加している募集
おつかれとジュースを奢るような気持ちで頂けると、大変私が喜びます😌✨とても励みになります。