精神科医、驚愕する
みなさん突然ですが「予言・予知」って信じますか?
ひょっとすると「予知能力がある」という方もいらっしゃるでしょうか?
残念ながら私に予知能力はありませんが、「あったらいいな…」、と思うことはしばしばあります。
今回紹介するのは、数年前に私が経験した、「予言・予知」に関するある患者さんとのエピソードです。
尚、プライバシー配慮のため、論旨を変えない程度に脚色しております。
【精神科医、揺れる】
『地震です…、地震です…、地震です…』
アラーム音がけたたましく響き、夜の静寂(しじま)は切り裂かれた。
その直後、精神科医は大きな揺れを感じた。
「地震だ!」
咄嗟にテーブルの下に身を潜める。
数秒で揺れは収まった。
見回すと棚のオブジェが数個倒れたぐらいで、大きな被害はなかった。
「大きかったね…」
居間に集まった家族と顔を見合わせ、ホッとする。
「震源地はどこだ?」
スマホをチェックすると、震源地は100km以上離れた場所だった。
「こんなに離れているのに、この揺れ…?」
その日、余震は数回あったが、精神科医はどうにか眠ることができた。
朝、TVをつけると昨夜の地震について報道していた。
『最大震度7、マグニチュード6.5…』
TVには倒れた家屋、崩れた壁が映し出され、ヘルメットを被った記者が被害状況をリポートしている。
「これはひどい…」
そう思いつつも、いつものように大学へ向かう。
【精神科医、思い出せない】
その日の診察を終え、精神科医は帰途についた。
「今日は金曜日!」
家に着くなり、冷蔵庫からエビスビールを取り出し、冷やしておいたタンブラーに注ぐ。
「くぅーッ!生き返る〜」
仕事をする理由を聞かれたら、即座に“この至福の瞬間”と答えるだろう。
「おや?」
携帯の留守電にメッセージが残されていた。
ボタンを押すと、ざらついた音声が再生される。
お疲れ様です、ソーシャルワーカーのAです。
先ほど、本学◯◯学部から女子学生の件で相談がありました。
当該学生は、以前先生が診察して、学外の医療機関を紹介した方です。
至急お電話をしたいのですが、ご都合はいかがでしょうか。
精神科医はすぐさま電話をかけた。
「あ、先生。いま、お電話よろしいですか?」
「はい」
「以前、一度先生がお会いになった女子学生B子さんについてです」
「はい?」
「えーと、20歳女性、◯◯学部、統合失調症疑いで、外部医療機関に紹介した方です」
「…、あー、うん、うん」
精神科医は、なかなか思い出せなかった。
【精神科医、開き直る】
「そのB子さんですが、どうも昨日の地震から調子が悪いようです」
「どんな風に?」
「今朝、大学に来ると、突然黒板いっぱいに数式を書き始め、その後ずっと講義室で泣いているそうです…。」
「数式?」
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