【推しの子】と精神医学: 精神科医が各キャラのメンヘラ度&芸能界のメンタルヘルス問題を解説!(前編)
皆様、こんにちは!
鹿冶梟介(かやほうすけ)です。
先週も言いましたが、大切なことなのでもう一度言います。
明けましておめでとうございます!今年も宜しくです🥳🎉
新年最初の"水曜日記事*"...ということで、気合をいれて精神医学のマニアックネタをご紹介します!
今回の記事では週刊ヤングジャンプの大人気漫画【推しの子】を精神医学的な視点で考察します!
【推しの子】を記事にしようと思ったきっかけは、実は一昨年の10月に遡ります。
当時、X(旧Twitter)でシリーズ「マンガ・アニメと精神医学」の新ネタとしてDEATH NOTE、SPY×FAMILY、そして【推しの子】の三作品の中から、どれを読みたいかアンケートを実施しました。
その結果、【推しの子】はDEATH NOTEに敗れて2位に甘んじました… …。
【推しの子】は当時未読だったためアンケート結果を見て正直ホッとしましたが、2024年になると同作がメディア等で取り上げられる機会が増え、小生もちょっと気になっておりました。
そこで、スマホアプリ「少年ジャンプ+」でパラパラと読んでみたところ...、「これは精神科ネタ満載じゃねーか!… …っつーか、登場人物メンヘラだらけじゃね?」ということに気づき、執筆を決めました(ガチで読み込みましたよ😤)!
… …が、書き終わって思いましがた、ちょっと重たい内容ですね😅(新年早々のネタとしては、どうなんでしょうね……🤔)
とはいえ、原作をガッツリ読み込んで、黒川あかねばりに分析しましたので、もう後戻りはできませんがな!
… …ということで(←どういうこと?)、今回の記事では大人気漫画【推しの子】に登場するキャラクターたちの「メンヘラ度」を評価し、作中の精神医学ネタを精神科医である小生が解説していきます!
※本記事はネタバレを含みますので、未読の方は【推しの子】を読んでからのご高覧を推奨いたします!
【押しの子とは】
週刊ヤングジャンプに連載されていたサスペンスコメディ(2020年~2024年)。
原作:赤坂アカ、作画:横槍メンゴ
あらすじ:産婦人科医であるゴロー(雨宮吾郎)はアイドルグループ「B小町」の熱狂的なファンである。
そんなある日ゴローが勤める病院にB小町の絶対的センター・星野アイがやってきた。
自らの"推し"が産婦人科を受診し双子を妊娠しているという事実はゴローに衝撃を与えるが、アイが安全に出産できるよう全力でサポートすることを決意する。
しかし、出産予定日にゴローはアイにまとわりつくストーカーに殺害されてしまう...。
薄れゆく意識の中でアイの出産を心配するゴロー。
… … ところが気が付くとゴローはなんとアイの子供「星野愛久愛海(アクア)」として転生したのだ...!!
双子の妹の星野瑠美衣(ルビー)も転生者であり、いがみ合いながらも兄妹は出産後もアイドルとして活動する母親、すなわちアイを支えようとする。
自らの推しが母親になって至福絶頂の中、悲劇が起こる。
星野アイは自宅を訪れたストーカーにより殺害されてしまったのだ。
事件には共犯者がいると考えたアクアは芸能界に入り、アイを殺した人物を探し復讐することを誓う...。
【推しの子の主要登場人物】
【推しの子】がどのような漫画かお分かりになったでしょうか?
要するに"転生モノ"✖️"復讐劇"というありきたりな設定ではありますが、「芸能界」を舞台にしていることが本作のユニークな点ですね。
さて、ここからは主要登場人物&各キャラのメンヘラ度をご紹介いたします!
精神科医歴20数年の小生が独断と偏見に基づき、登場人物の「メンヘラ度」を星★の数(★が多いほどメンヘラ度が高い)で評価いたします。
ちなみに"メンヘラ度"とは精神科医からみて"精神的に問題ありだぞ!"と感じる程度のことです(極めて曖昧な定義です)。
したがって、あまり堅苦しく考えないでくださいな😖(あくまでネタです)
尚、ここからは物語の「核心」に触れる超ネタバレ内容なので、繰り返しになりますが是非とも原作を読んでからご高覧ください(大事なことなので2回いいました)!
↓【推しの子】1-16全巻セットを読んでから、本記事を読むことを推奨!
星野アイ(ほしのあい)
アイドルグループ"B小町"のセンター。
当時16歳。
紫色のロングヘアー、小柄な体格。
天性ともいえるアイドル性を持つ。
売り出し中のアイドルであったが、妊娠をきっかけに活動を休止。
双子を出産し家庭を持ちながらも(内緒で)アイドル活動を再開する。
しかし20歳のときストーカーに命を奪われてしまう...。
【メンヘラ度】★
星野アイ(以下アイ)は片親ですが、母親が窃盗で捕まり施設に預けられます。
母親は釈放されるもアイを迎えに行くことはなく、アイ自身母親から愛されていないと感じたそうです(母親が迎えに行かなかったのは、自分の男がアイに色目を使う様になったためらしい)。
作中でも"人を愛した記憶も愛された記憶も無いんだ"と述べています。
この様に愛情欠乏の状態で幼少期を過ごしたアイは、いわゆる「愛着障害」であった可能性があります。
愛着障害では対人関係において「恋人や配偶者、自身のこどもをどう愛すればいいかわからない」という問題が生じやすいと言われており、まさに星野アイの悩みと合致するのです。
また大雑把でおっちょこちょいなところがあり、実子アクア(後述)は「母親としてはダメな部類」と評価しています。
自身も自分のズボラさに気づいており、子供が15歳になったら渡すはずのDVDを「自分が持っていたら紛失する」と言い、五反田監督に託します(これには別の意味もありそうですが…)。
さらに女優かつプロファイラー(?)の黒川あかね(後述)は、アイが発達障害であった可能性を指摘しております。
以上より、おそらく星野アイはADHDである可能性が高いと感じます。
このように星野アイについてはいくつかの精神医学的診断がつきそうなので、メンヘラ度が高めにでそうなのですが、死の直前に実子アクアとルビーに「愛している」と心の底から言え「愛情欠乏」から抜け出せたようなので、メンヘラ度は星1つです(★)!
星野愛久愛海(ほしのアクアマリン)
愛久愛海(あくあまりん)と読むが、名前が長いのでアクアと呼ばれている。
16歳。
陽東高芸能科1年生。
長めの金髪の美少年。
転生前はアイの大ファンである「雨宮吾郎(30歳前後?)」。
雨宮吾郎は極秘出産を迎える星野アイの主治医を任されるが、出産当日に何者かに殺害される。
前世の記憶を保持し、かつ母親の美貌を引き継いだため幼少の頃より芸能界で子役として活躍。
実母であるアイが目の前で殺害され、何も出来なかった自分を責め続けている。
殺害したストーカーの背後関係を怪しみ芸能界に入る。
その目的はアイを死に追いやった人物を見つけ出し、殺害することであった...。
【メンヘラ度】★★★
前世の記憶をもった転生者という時点で定型発達とは言えず評価が難しいアクアですが、彼だけは作中で診断がついているようです。
それはPTSDとパニック発作です。
詳細は後述しますが、母親であるアイが目の前で殺されたことで幼少期からこの病気に悩まされていたようです。
しかし、このようなメンタルヘルス上の問題を差っ引いても、アクアのメンヘラ度は高めでしょう。
前世が医師(東京の国立医大出身: 東京医科歯科?)なので成績優秀で偏差値は70とのこと(入学する陽東高は偏差値40だが…)。
その頭脳と母親から受け継いだ美形は"チート"といって過言ではありませんが、その能力を復讐に全振りしているところは狂気を感じます。
しかも復讐という目的を達成するためには人を騙す、利用することも厭わないマキャベリスト。
例えば自分に好意を抱く有馬かな(後述)や黒川あかね(後述)を復讐のために利用します。
中でも黒川あかねについては、彼女のチート級の分析能力(プロファイルング)を用いて自分の前世の死体を探させようとします(遺体発見は偶然なのですが)。
加えてアクアの人格とは別に、前世「雨宮吾郎」の人格が統合されていないような描写もあり、解離性同一性障害の傾向もありそうです。
以上より精神科的診断がつき、かつ狂気とも言える復讐心からメンヘラ度は星3つです(★★★)!!!
星野瑠美衣(ほしのルビー)
不動のアイドル星野アイの娘でアクアの双子の妹。
16歳。
外見は母親のアイにそっくり。
金髪の長髪。
ルックスだけなくダンスもうまく、歌以外のアイの才能を引き継いでいる。
陽東高芸能科1年生。
アクアとおなじく転生者であり前世は「天童寺さりな」。
さりなは母親の実家がある宮崎で生まれ育つが、「退形成星細胞腫」により12歳で他界。
このとき主治医だったのは、アクアの前世雨宮吾郎であった。
前世ではアイの熱烈なファンであり、アイの子供として転生したことに歓喜するが、母親のアイがストーカーに殺害され失意の底に沈む。
アイの死から十数年後、高校生になったルビーは亡き母親にあこがれ、自らもアイドルになるべく芸能界に身を投じる。
【メンヘラ度】★ => ★★★
星野ルビーは天真爛漫で、自信家、明るくてちょっとおバカ...というのが性格的特徴でしょうか。
行動的特徴としては、思ったことはすぐ口にして、思いつたら即行動...と、母親のアイ同様に過活動気味(ADHDの傾向)はありますが、物語の序盤はそれほど精神的に病んでいるようには見えません。
しかし、物語が進むにつれて徐々にルビーのメンヘラ度はアップしていきます。
最初にルビーの心の闇が現れたのは、兄(アクア)と黒川あかねが肉体関係を持っていると疑った時ですが(これは誤解ですが)、
と吐き捨て、恐ろしく冷たい表情をみせます(黒い★が目に光ります)。
これは子育てとアイドルを両立させようとした母親アイの苦労を慮っての反応でしょう。
さらに物語の後半ではルビーの前世、すなわち「天童寺さりな」が闘病中に母親から見捨てられ、死ぬ間際にすら家族が現れなかったことが判明します...(可哀想すぎる...😭)。
このように前世での「地獄」のような境遇がルビーのアイデンティティに影響しているようで、おそらく母親に対する愛着障害が存在していたのでしょう(アイと同じですね)。
また前世でお世話になった主治医、雨宮吾郎(つまりアクアの前世)が殺されたことを知るや、犯人を見つけ出して殺してやると誓います...。
それからのルビーは他人を道具として利用する"サイコパス"な一面が現れメンヘラーとして覚醒していきます。
… …ということで、ルビーのメンヘラ度は序盤は星一つ、後半は星三つです!!!(★ => ★★★)
(追記: 最終話まで読みました...。ルビーのメンヘラ度はゼロになったことをご報告いたします😭)
有馬かな(ありまかな)
かつて大人気子役であった芸能人。
17歳。
陽東高芸能科2年生。
アクアとルビーとおなじ高校の2年生。
小柄で髪型はボブで赤色。
ひょんなことをきっかけに、ルビーと共にアイドルグループ「(新生)B小町」を作ることになる。
子役時代はめちゃくちゃ売れていたが、年齢を重ねるうちに人気に翳りが...。
子役時代からアクアとは知り合いで、妙なライバル意識をもつが同時にアクアのことが好き(わかりやすい)。
いわゆる負けヒロイン...?
【メンヘラ度】★★
幼少期に芸能界という伏魔殿で過ごしたせいか、その性格は相当歪んでおり自分自身もそのことに気づいています(本人曰く「面倒でひねくれた女」とのこと)。
有馬かなの性格を箇条書きにすると…
現在の精神医学的診断に当てはめると、自己愛性パーソナリティ障害や境界性パーソナリティ障害の傾向もありそうですが、いずれも診断基準は満たしておりません。
しかし、このように歪んだ性格になった背景には母親との関係があるようです。
売れっ子だった子役時代、母親はいつも笑顔だったので、有馬にとって「人生が一番幸せな時期」でした。
しかし、人気に翳りが見え始めると母親は変わってしまいます。
有馬は母親が等身大の自分ではなく、「売れている有馬かな」が好きであると理解しておりました。
詳細は後述しますが、子役を経験した人の後のメンタルヘルスは非常に悪い!
...ということで、有馬かなのメンヘラ度は星二つ(★★)です!
(追記: 最終話まで読みました...。有馬かなのメンヘラ度は星三つになったことをご報告いたします😭)
黒川あかね(くろかわあかね)
劇団ララライに所属する実力派女優。
17歳。
高校2年生。
青みがかった髪。
「恋愛リアリティショー」で共演したことをきっかけに、アクアと偽装カップルとなる。
努力家でプロファイラー顔負けの分析力をもつ。
アクアには恋心を抱いているが、有馬かなに対しては敵意をむき出しにする。
超真面目キャラでメモ魔。
焼肉を皆で食べる時、絶対トングを手放さないって決めているタイプ。
【メンヘラ度】★★★
幼少期にあこがれだった有馬かなのクソ最悪な性格に失望し、一種のトラウマを植え付けられる。
あかねとはある意味"因縁"と言える間柄出会ったが、「2.5次元舞台編」では互いに認め合うライバルに昇華。
アクア、ルビー、かなに比べると家庭環境は恵まれており、特段メンタル面に問題を抱えてるはずがないと思いきや、かなりヤバめのパーソナリティです。
そもそもあかねのプロファイリング能力は、有馬かなを理解しようとして心理学系の文献を読み漁った結果身につけたスキルなのですが、正直なところ「そこまでやる!?」という感じです。
思い込んだらとことんやる...、という所はどこか強迫的であり、その性質は有馬かなに対する想いに反映されております(実はかなのことが今でも大好き)。
この"とことんやる"という性格が災いしてリアリティーショーで失敗しますが(後述)、さらに恐ろしい発言をしております。
それは、アクアが芸能界に入った目的を"人を殺すため"と言った時、逡巡なく"一緒に殺してあげる"と返答したことです... …(本当にとことんやる子ですね)。
またとても賢いあかねは自分がアクアに利用されていることを知りながらも、彼の計画に協力していきます。
自分が愛する人のためなら殺人も厭わない...、まさに狂気です。
したがって、黒川あかねのメンヘラ度は星3つです(★★★)!!!
MEMちょ(めむちょ)
登録者数37万人の人気ユーチューバー。
自称18歳だが実は25歳。
金髪のショートヘア。
小悪魔(?)をモチーフにしたカチューシャをつけている。
媚びるような性格だが、それは大人の処世術であり決していやらしいものではありません!
高校時代に母親の代わりに家計を助け、弟二人を大学に行かせた時には23歳...。
苦労人ならではの気遣い・気配りができる良い子。
【メンヘラ度】星無し
年齢を7歳もサバを読んでいる時点でメンヘラ度が高いと思いきや、その背景を知ると同情を禁じ得ません。
アイドルを夢見ながらも家計を助けるために一生懸命仕事をこなし、気がつけば23歳… …。
しかし、アイドルをあきらめきれずTikTokやYouTubeに活躍の場を求め大人気インフルエンサーに上り詰めたのがMEMちょなのです!
他のメンバーよりも年上なせいか周囲への配慮は欠かさず、特にアクアを巡る有馬かなと黒川あかねの間で両者を応援する優しいお姉さんポジションを演じます。
作中最もメンヘラ度の低い子なので、メンヘラ度は星ゼロです!
<後半に続く>