【読み聞かせ】ひとつ足らない12の月物語り
【住民の姿が見えない街に迷い込んだ12の月カレンダーに載せていく話】
『見ようとすれば見えてくる世界がある。そう信じ続ければそれは現実の世界を創ってしまう。信じない人には決して見えない世界がそこには生まれるのさ。だからね、何を君が信じ続けるかが大切になるんだよ。12月にサンタが君にどんな世界をプレゼントしてくれるか楽しみにしてるよ』と、天の月は見守っていた
✩一月の物語り✩
人がいつからか 居なくなった街に、迷い込んだのさ
貝がら屋根から、コロコロと赤い靴が片方 落っこちて来たよ
『誰か〜、この靴 落としたよ〜』
屋根に向かって声を掛けても返事がないんだ
赤い靴をじっと見てると浮かんできたよ
赤い靴履いてスキップしてる女の子
ほら、ほら、歌も歌ってる 🎶
お空に向かって手を振って『また、来てね』
白いふんわか子ども雲が『また 来るね』と言って消えて行く
女の子も赤い靴一つ残して どこかに行っちゃった
これが 一月の物語りなんだ
きっと12月になると、消えた住民が街にみんな戻って来てクリスマスを祝うんだ。僕はそう信じて街中を探し始めた。
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✩二月の物語り✩
雪が降ってきたよ
まだ 誰の姿も見つからない
街の中の一つの家に 入ってみよう
『お邪魔します』返事はない
きょうは、ここで温かい夜を過ごそう
Zzzz....
朝の光が 窓から入って来たよ
『おやおや? なんの影だろう』
床に映った黒い影
ニャーオ
『待って、待って』
うっすら積もった雪道に
足跡が...
良かった、やっぱり 独りじゃない
心も温かくなった
これが二月の物語りなんだ
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✩三月の物語り✩
青い芽が屋根の上から背伸びする
『そこから誰か 見えないかい?』
光に手をかざす青い芽には聞こえない
お日様 いっぱい浴びて 一休み
もう、人を 探すのやめようか
ヒュルル〜ン
誰かが 飛ばした紙ひこうき
羽に『僕を探して』と書いてある
『わかった、見つけよう』
と返事を書いて 飛ばしたよ
これが三月の物語りなんだ
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✩四月の物語り✩
街の名前 見つけたよ
『しおかぜレモンのまち』
これから そう呼ぶよ
街はたくさんのレモンの木に囲まれて
潮風のシャワーはレモンの香り
風が 囁いた
『ほら、誰かと一緒に吹かれててよ』
肩を優しく 触れていく
レモンの香りとあたたかさ
人の温もりに囲まれる
心に春は やって来た
これが四月の物語りなんだ
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✩五月の物語り✩
遠くから 笑い声がした
きっと 誰かに会える
心が弾む
双子の蝶々が 早くおいで と呼んでいる
あっちの方に 違いない
レモンの木に隠れてるんだ
そうっと 木の後ろへ
あ、花飾り
誰かが レモンの木に咲く白い花で
花飾りを作ってたんだね
花かんむりは 僕の頭にぴったりだ
『しおかぜレモンのまち』の王子に
決まりだ
そうだ お城を探そう
お城で 待っていれば
きっと みんなが会いに来る
これが五月の物語りなんだ
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✩六月の物語り✩
お城は 見つけたよ
大きくはないけど 高い塔の城さ
高い塔からは、街が全部見下ろせる
ここで 毎朝 手を振るのさ
僕からは見えない住民たちに向かって
挨拶するのさ 王子なんだから
雨が止んだ後のスピーチは
虹の大喝采だったよ
お返しに 歌を歌ってあげたんだ
月の綺麗な夜には セレナーデ
ギターを奏でる音が聞こえたよ
誰が 弾いてるかって ?
探しには 行かないさ
確かに 居るって わかったからね
これが六月の物語りなんだ
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✩七月の物語り✩
ギターを見つけたよ
朝 お城の前に 置いてあったのさ
ギターが 勝手に奏でるんだ
満天の星に向かって 歌ってみよう
街を流れる小川に向かって
星たちが舞い降りる
地上の天の川を作るのさ
こんな綺麗な街
誰かと一緒に 眺めていたい
そう 星に願ったのさ
これが七月の物語りなんだ
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✩八月の物語り✩
浜辺に流れ着いた瓶の中から
手紙を見つけたよ
『助けて』
大変だ どこだろう
助けなきゃ
ボートで海に出てみよう
泳げないけど 怖くない
海の底から また 瓶が届いたよ
『ここに います』
そう 書かれた手紙
よし、潜ろう
大丈夫 潜るのは 上手いんだ
あ、誰かの手が
しっかり掴んで ボートまで
握った手を見て 驚いた
そこには 薄紅色のヒトデが
にっこり 微笑んでいた
星のカタチは 天からの贈り物かい?
小さなヒトデの手と握手した
これが八月の物語りなんだ
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✩九月の物語り✩
お城の前に 木の実が
どっさりあったのさ
こんな 想いが浮かんだよ
🌱
青い芽が 大人になって
白い花つけ歌うには
『 私を見つけてくださいな
あなたが 見つけし その時は
黄色い実になりましょう
お空にゆきとう ござんすが
私は ここで生きる永遠(とわ)の花
命を繋ぐ永遠(とわ)の花 』
黄色い実となり そう歌う白い花
空に手を振り 地上へ舞い降りる
🌱
木の実と一緒に レモンもいたよ
ありがとうって 言って
『がぶり』とかじって 見たら
小さな種が 飛び出した
土に戻して 言ったのさ
『待ってるよ』ってね
これが九月の物語りなんだ
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✩十月の物語り✩
誰もいない街なのに
賑やかな祭り風が吹いている
ついつい 一緒に 踊り出す
独り輪をかき 踊るのさ
心もカラダも 弾むんだ
弾んだままのその夜は
夢の中でも 弾むのさ
みんなに会える場所だから
このまま ここに居たいけど
『いつか 夢から出ておいで』
そう言って 帰って来たのさ
『いつか 会える』
弾む心が そう言うよ
これが十月の物語りなんだ
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✩11月の物語り✩
紅葉(もみじ)の葉っぱが 手を振るよ
冬を過ごす 身支度さ
『小さな焚き火に 入ろうか』
赤い葉っぱが そう言って
赤い火に 溶けていく
紅葉が 暖めてくれるんだ
心もすっかり 冬支度
そうだ、暖炉の薪を集めよう
ガサッ、 ガサッ
足音が 聞こえるよ
冬の支度をするのは 独りじゃない
心をしっかり暖めておこう
暖炉の火より 暖かく 暖かく
これが十一月の物語りなんだ
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✩十二月の物語り✩
この月の物語りは ないんだよ
ひとつ足らないいんだ
だから、君の物語りを聞かせおくれ
見えないものが見える話をね
そう月に語りかけていると
『トントン』と戸を叩く音がした
扉を開けると そこには街の住民たちが
『メリークリスマス』と言って
戻って来てたんだ。そして、
一人一人の物語りを話し始めたよ
長い夜が明け、暖炉に火がなくなると
僕の姿も 消えたのさ
でもね 、わかるだろ
見える人には 見えるんだよ
月が笑って見ています
これが地球にしかないカレンダー
十二の月物語りなんだ
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🍋これで この物語りは 終わりです。
しおかぜレモンのまちに戻った住民たちのお話を何処かでお届け出来ることを楽しみに カレンダーを閉じることにします。ありがとうございました。
写真提供: やさしいせかいのえがきかた
*スマホ・タブレット用カレンダー
インスタグラム:Lemon Breez Town~しおかぜレモンのまち