海外移住 | 私を強くするもの
こんにちは、夏真っ盛りのオーストリアで日々の思いを書き留めているKayです。
ヨーロッパも毎日暑い日々が続いていますが、太陽が燦々と輝く空を眺めていると、ある夏の日を思い出します。
約8年前、日本に住んでいた時、海のきれいなあの小さなまちへ引っ越して間もない、ある夏の1日です。
当時、結婚はしていたけれど、子どもがいなかった私はちょうど転職したばかりで、新しい環境に毎日が愉しくて仕方がない日々を過ごしていました。
同じ部署の同僚は同世代ばかり、20代後半から30代前半で、本当に仲が良く、昼休みには毎日一緒にランチをして大声で笑い転げる毎日。
何がきっかけか、その同僚の男女5人で週末、海に行こうという話になりました。
呆れるくらいまとまりがない5人で、集合時間にだれも来ないし、その中の1人(男)は「暑すぎるから」という理由で、上半身裸で短パンと7色に反射するギラギラのサングラスを身に着け、フェアレディで登場。遊ぶ相手間違えてないかと先が思いやられるスタートでした。
予定から1時間以上遅れて、やっと海岸につき、ターコイズブルーとエメラルドグリーンにきらめくサンゴ礁の海で、シュノーケルを楽しむことしばし。
海の美しさよりも、1人がなぜかビート板を持ってきていて、「海でビート板ってあり?」と爆笑したことのほうが印象に残っています。
泳ぐとお腹が空いて仕方がない、とその後ハンバーガーを食べに行くことに。シュノーケルあがりにジューシーな肉に食らいつき、自家製ジンジャーエールで流し込む最高なランチ。
それでも、全員が全員まだお腹が空いていて、浜辺のカフェでアイスラテとブラウニーチーズケーキをオーダー。
当時流行っていたポケモンGOをしている同僚に対して、くだらない、とケチをつけながら、特別でもなんでもない話をしながら、ふと、今日は地元の夏祭りの日だと思い出しました。
また車を飛ばして会場に着き、地元の特産品が並ぶ屋台で、さらにお腹を満たし、伝統芸能をみながら、夏をたっぷり身体に吸収しました。
こんなに遊んだにも関わらず、まだ遊び足りない私たちは、未完成の職場の新築オフィスの屋上に忍込み、夕焼けを眺めることに。海辺に位置するその真新しい建物は水平線に沈む夕日をみるのに最適で、どんどん赤らんでいく空をただただ眺める5人。
そして、その夕日が落ちる最後の瞬間
「あ、グリーンフラッシュ!」
真っ赤な夕日が一瞬、緑に輝くグリーンフラッシュを目撃したのです。
雲が水平線にかかると見えないこの現象は、なかなか稀有で、感動で騒ぐ5人。
その興奮冷めやらぬまま、あたりはどんどん暗くなっていき、今度は星空を見ようと、屋上で川の字に並んで寝転がる5人。
夜になると真っ暗になるその地域は、夕日だけでなく星空も別格で、またくだらない話でバカ笑いをしながら、どんどん増えていく星たちを眺めていました。
あ、飛行機。あ、人工衛星!あ、流れ星!!
毎日会う仲間なのに、なんの名残惜しさからなのか、その場からなかなか離れられませんでした。
ひたすら遊んで、ひたすら食べて、ひたすら笑った日。
こんな奇跡なような1日。
このときは、こんな週末を何度も迎えるのだろうと思っていました。
でも、手のひらからさらさらとこぼれ落ちていく星砂のように、こんな光り輝く日はこれ以来二度と訪れませんでした。
別になにか大きな事件があったわけでもなんでもありません。
転職する仲間、異動する仲間、結婚したり、職務上の立場が変わり、そして私も妊娠し、普段の時間の過ごし方が変わり、優先順位も変わっていく中、自然と共に過ごす時間が減っていきました。
そして、私が海外移住を決意したときに、最初に報告したのも、残り少なくなったその仲間でした。
「Kayがここにいるのはもったいないとずっと思っていた。やっと決めてくれて嬉しい。」
「俺もKayの立場だったら、同じ選択をする。」
形は変わっても、最後まで私に寄り添ってくれた仲間たち。
当時、楽しいだけで悩みがなかったわけではありません。私は不妊治療でストレスを抱えていたし、仲間もそれぞれ問題を抱えていました。
でもそれをも霞ませるくらい、輝きを放っていたこの1日は、私の心を強くし、今も支えてくれているのです。
そして、今こうしてオーストリアで必死に過ごしている日々の中にも、実はこんな日が紛れているのだと思います。
こんな日は、急に訪れるので、それがどんなに貴重な日になりえるのか、なかなか気付けません。なので、とにかくその瞬間に向き合うしかないのだと思います。
とにかく五感全てを使って向き合うこと。空気、湿度、気温、匂い、音、光、風、感触、風味…
そして、その思い出たちが、これからの私を強くしてくれるのだと思います。