モービウス (2022)
主人公の絶大な力とそれに伴う苦悩や代償、愛する人、友情、大事な人、派手なアクションにCG技術…モービウスには、スーパーヒーロー映画に求められる要素が詰まっている。
でも、「それだけ?」と思う自分がいた。
これがMCUだと、直近だけでもブラック・ウィドウの血を越えた家族の絆、エターナルズのナチュラルな多様性と環境問題への警鐘、そしてNWHの映画史を塗り替える衝撃と、(必ずしも全て成功しているとは言えないが)ヒーローものの面白さとは別途に「この時代にそれを産み出す意味性」が付与されてきた。
一方今作はひたすら愚直なダークヒーローものであり、それ以上でも以下でもない。まあ、ここがMCUとSSUの作品性そもそもの違いなのかもしれないが。
何にせよ、ここ15年近くにわたる圧倒的な作品の数々が、我々を単なる「カッコいいヒーロー映画」では満足できない体にしてしまったと言える。
どう見てもどっちも悪役でしかないビジュアル、ヴィランvsヴィランの二人が死闘を繰り広げる画は面白く、メインキャストの演技も良い。特にマイロ役のマット・スミスは、やや強引とも言えるキャラクターの闇落ちの過程を有無言わさず納得させるような、強烈な存在感を示している。彼でなければ「なんでマイロそんなめっちゃ悪くなったの?」という疑問が爆発していたに違いない。